出版記念トークショーレポート③ | 寺田真理子オフィシャルブログ

出版記念トークショーレポート③

出版記念トークショーレポートのつづきです。

 

出版記念トークショーレポート①はこちらからどうぞ。

出版記念トークショーレポート②はこちらからどうぞ。

 

続いて、本書の中から、「認知症のせい」にしないというお話をさせていただきました。12ページにあるように、「環境」「性格と生活史」「感覚と健康の問題」「他者」という要因で、認知症がある人の生活が難しくなっていることがあるのです。

 

たとえば、新しい環境は、見当識障害を悪化させてしまう可能性が高いです。認知症でなくても、入院していると見当識障害が悪化することがありますし、健康な人でも、出張先のベッドで目覚めて「ここはどこだっけ……?」となることはありますよね。他にも、照明が薄暗かったり、テレビの音が邪魔になっていたりしてコミュニケーションがとりづらくなることがあります。

 

また、ずっとひとり暮らしをしてきて、ひとりでいるのが好きな人には、介護を受け容れることはつらいですよね。個人の性格や生活史も影響します。

 

どこか痛いところがあったりしても、落ち着きがなくなったり、痛みをうまく表現できずに暴力的になったりします。

 

こういうことを「認知症のせい」で片づけずに、きちんと理由を探っていくことが大切です。

 

そして、「他者」の関わりも影響します。たとえば、食べるのに時間がかかるからといって毎回本人の代わりに食べさせていたら、次第に自分で食べることができなくなっていってしまいます。相手のためによかれと思ってやっているつもりでも、相手の力を奪うことになってしまうのです。

 

それでは、代わりにどうすればいいかというと、「本人ができることを増やす」のです。15ページにあるように、たとえば、二つの選択肢から選ぶことができるなら、「赤いセーターと青いセーターとどちらがいい?」という具合に両方見せて自分が着たいほうを選んでもらうとか。自分で服を着られるけれど順番に混乱するなら、着る順番に並べておいて口頭でうながすとか。ストッキングをはくのが好きだけどはき方がわからないなら、ストッキングを丸めて、はき口を広げて渡すとか。

 

自分でできることが限られていってしまう状況だからこそ、その中で「自分で選べる」「自分で決めることができる」「自分でできる」ということがいっそう大切になるのだと思います。