イスラエルの読書療法② | 寺田真理子オフィシャルブログ

イスラエルの読書療法②

イスラエルの読書療法①のつづきです。

 

読書にあまり関心を示さない少年たちを対象とするときには、その子たちの好きな音楽(ヘビメタだったりするので、かなり騒々しい感じにはなるそうですが)をかけたり、歌詞を教材として使うこともあるそうです。関心のあるところから入っていくのですね。

 

サッカーが好きな男の子の事例があり、その子のお気に入りのサッカーチームの記事を教材として用いたそうです。その子は物語を読むことが嫌いでしたが、サッカーには関心があったため、記事も喜んで読みました。実は、彼のお気に入りのチームは家族が好きなチームとは違っていて、そのために家族の中で寂しい思いをすることがあったそうです。そんな彼にとって、読書療法のセッションの中で自分の好きなサッカーチームの記事を読めるのは、うれしいことでした。

 

読書療法では、読むだけではなく、書くこととセットになっている場合が多いそうです。子どもの場合は一緒に漫画を描いたりコラージュをしたりすることもあります。書くのが苦手な子の場合は、読書療法家が聞き取って代わりに書いてあげたり、新聞記事を持っていってその中から文字を切り取って切り貼りしたりする場合もあるそうです。

 

物語を途中まで読書療法家が読んで、「この続きをあなた自身で書いてください」という場合もあります。クライアントのひとりに、登場人物が全て死んでしまう物語を書く子がいたそうです。どんな物語でも必ずその流れになってしまうのですが、1年半ほどすると、そういう物語は全く書かなくなっていました。そして過去の自分の物語を読んで驚いていたそうです。そうやって自分自身で変化を把握することができるので、書くことを尊重しています。

 

このケースは3年間ほどの長期的なセッションでしたが、なかには事故での入院など1回しかセッションが行えない場合もあります。しかも周囲に人がいることも多く、そこでクライアントと関係性を築かなければならないので、緊張を強いられる場面でもあります。

 

肝移植を受けた男の子とのセッションでのことです。子どもが相手の場合にはハサミなどの文房具を持っていることも多いのですが、この子はその中からホッチキスに関心を示しました。自分の手術で医療用のホチキスを用いたからです。そしてセッションの間、ホチキスをずっと使っていたそうです。