お世話になった先人のお話を久しぶりにしたいと
思います。
そう、今日は私を見守って導いて下さった先人
『 石丸幹二さん 』
のお話をさせて下さい。
横浜秘密基地のトークショーにいらっしゃった方
には私が役に入る瞬間の空気感を少々味わって頂
きましたが、
フレンチミュージカル「壁抜け男」の精神科医
をするときに、私は長い時間をかけて役に入って
行きました。5時間位でしょうか。
自分が精神を病んでいる精神科医ですから、普通
では出来ないんです。
家を出てから電車に乗ってる間にどんどん精神が
病んで行くように仕向けていますので、劇場入り
する頃には圧倒的、破壊的にドンヨリした空気に
なります。
基本的にどんな人も私には話しかけられない空気
です。
ご自身も役作りに拘る尊敬する大先輩の丹さんが
「 寺田さん、大丈夫ですか? 」
っておっしゃった時には相当びっくりしましたが
(苦笑)
何の経験も無かった私が脱サラしてまで劇団四季
のオーディションを受けたのは
壁抜け男
に出会ったからです。
丸さんは(あ、石丸さんです)、主役、公演委員長、
音楽担当、演技担当をされていました。
それだけのことを一人でやるなんて通常有り得な
い事です。
壁抜け男と言う作品にとってどれだけ丸さんが大
切か、そして演出家からどれだけ信頼されている
か想像して頂けると思います。
宝塚程では有りませんが、勿論劇団四季も縦社会
です。
圧倒的負の空気で現れる男
×
ザ・壁抜け男
通常なら必ず衝突が生まれます。
丸さんが私に
「 こうして欲しいなあ~ 」
って思った時、丸さんは本番前に私にダメ出しを
したりしません。
と言うか丸さんには【ダメ出し】は有りません。
主役として、様々な事の担当者としてご自身が相
当忙しいのに、本番が終わって私の心が柔らかく
なった瞬間を見逃さず
「 まさみ、ワイン飲もう~ 」
って声をかけてきたりします。色々と話す中
「 まさみのあの芝居、面白いねえ 」
「 明日更にこうしてみたらどう思う? 」
ってアドバイスを下さりました。
本当はこうして欲しいってのが有っても、そんな
言い様はされません。
本番前に言いたくなっても、私の役作りを尊重し
て下さった。
役者だからこそ例えそれが名もない後輩だとして
も、役者の生きざまを見守ってくれる。
後輩にとってこんなに幸せな事は有りません。
『 こうしろ! 』
って言うのではなく
【 決めるのはあなた、だけどこうしてみるのも
有りかもしれないよ 】
って。
ミュージカル好きな方なら皆知っている実力者の
丸さんを支えるもの
それは圧倒的な【 人としての魅力 】です。
共演させて頂いた事、私の大切な宝物です。