アメリカのいくつかの州で起こっている、学校の先生によるストライキの問題について。
Arizona Teachers Will Go on Strike Next Week
See How Your State's Average Teacher Salary Compares
Why Teacher Pay Raises Can Prove so Tough to Win
Across the country, Teachers Are Sharing Lessons on How to Strike
先月から全米でガッツリ報道されていた学校の先生によるストライキ(特に凄いのがアリゾナ州のストライキ)のニュース。時間あればこのブログで・・・と思ってたので、紹介したいと思います。
<ストライキの目的>
先月から今月初旬にかけて、それはそれは教員のストライキ、とりわけアリゾナ州全土のストライキが報道されていました。FacebookやTwitterでも、教員のストライキをサポートする声明が発信されるなど、まーストライキ一色!!って感じでした。
で、このストライキ。一番話題になったアリゾナ州を筆頭に、オクラホマ州、ウェストバージニア州などで起こり、全てに共通してるのが
給料の値上げ要求
でした。アリゾナ州の場合、アリゾナ教員組合は20%の昇給を要求し、州全体の教員の78%にあたる5万7000人の署名を集めました。他方、アリゾナ州知事はその20%昇給案を受け入れると表明しましたが、教員組合は信用できない、としてストライキに踏み切りました。
オクラホマ州の場合、9日間のストライキを行い、結果として教員は6100ドル(約7万円弱)の昇給、学校へのさらなる金銭的サポートなどの案で折り合いを付けましたが、オクラホマ州議会が拒絶。壮絶なバトルの真っ最中です。既に解決したウェストバージニア州は7日間のストライキの末、全教員への5%昇給で折り合いが付きました。
というわけで、いずれのストライキも給料を上げろ!!というのが今回共通するストライキの目的でした。
<教員の給料>
今回のストライキに反応し、アメリカ全米2大教員組合の一つ、National Education Association(NEA)が全米の給料に関するデータ分析結果を発表しました。色々公表してるのですが、まずはそれを基に作ったEducation Weekのグラフ(2個目のリンク先の記事参照)をSnapshotで下記にお見せすると、
こーんな感じで、2017年度の教員の州別の平均給料のグラフです。今話題のアリゾナ州、このグラフでは下から8番目($47403)なんで給料安そうに見えます。NEAによると、全米平均給料は$60483(1ドル100円換算で計算すると約600万円)。そのため、全米平均より1万ドル以上も少ない計算です。
が・・・です。データ分析を専門とする教育政策のリサーチャーの端くれとして言わせてもらうと、
このグラフ、少々誤解を招く見せ方している
というのが本音です。まず
1)アメリカの各州の物価はかなり違うので、単純な州別の平均給料を計算しても実際どっちが高い、低いは判断できない
グラフでは一番がニューヨーク州、二番がカリフォルニア州ですが、これは至極当然です!!NYもCAもどちらも物価がかなり高い州で、教員の平均給料が高いのも当たり前。逆にアリゾナ州、全米でもかなり物価が低い州なんで下位にあるのも当然。一番下のミシシッピ−州も物価はかなり低い州です。
つまり、州別で平均給料を計算して比べても実際本当に給料が高いかどうかは判断できません。さらに、
2)アメリカは各州、総学校日数(つまり各州の先生が働く実質の総日数)も違う
働く日数が多ければ年収も上がるのは当たり前。例えば、かなり昔、ハワイ州の授業日数についてブログで書いたことありますが、全米で最も授業日数が少ないハワイ州は総授業時間が少なく、それが学力に影響を与えているのですが、これは言い換えれば、先生の勤務時間もまた少ないってことです。
つまり、各州の教員の総勤務時間が違うのだから、これまた州別の平均給料を単純比較しても本当に意味での給料が低いかどうかは分かりません。もし本当に実質高いか低いか比較できるようなデータ結果を出すなら、最低でも、物価の違いを考慮して計算し、公表する結果も、(平均年収でははく)Pay per hour(時給)で計算すべきだと思います。
というわけで、NEAの結果はあくまで参考程度にしかならないのでは?というのが個人的な意見で、これでアリゾナ州はかなり低い・・・ということにはなりません。
<ストライキの背景にあるもの>
そもそもストライキが起こっているのは給料の低さから起因してますが、これがどうして起こったのか?今回のブログでは(私の専門である統計学的な分析はさておき)Education Weekの記事から基本的な背景知識を整理してみたいと思います。
上記にお伝えした教員の給料の背景にあるのは(言うまでもなく)アメリカの経済状況です。給料云々以前に、公立学校で働く先生は公務員なので、給料は各州政府、言わずもがな州内の税金から支給されます。経済が悪くなると、必然的に税収は減り、それが公務員である教員の給料等に直接影響を及ぼすのは当たり前です。
Economic Policy Instituteという経済に関する研究機関が発表した給料の浮き沈みを示したグラフ(最初に紹介した三つ目のリンク先の記事より引用)が以下です。
青の線は大卒者の給料の推移、水色線がアメリカの全職種の平均給料、赤線がアメリカの公立学校で働く教員の給料の推移を示しています。大卒の給料を表す青線は、文系、理系関係ない全ての大卒者の平均給料の分布なので、教員より高いから教員の給料は低い!という単純に結論にはならず(アメリカの理科系の仕事の給料は概して高く、青線に比べて教員の給料が低いとはならず、どうせ比べるなら教員以外の教育学部出身者の給料と比べれば大なり小なり意味はありますが・・・)、水色の全職種(グラフで言うAll Workers)も教員は概して大卒、修士号&博士号取得者もいまずが、全職種になると、高卒者の給料もそのデータに含まれるので、これまた教員の給料と単純比較できません。
なら、なんでこんなグラフ紹介するんだ?となるのですが、ポイントは1997年以降です。96−97年頃から2015年にかけて全職種(水色)、大卒者(青色)共に上昇し、平均給料が上がっていますが、実は教員だけ逆に下がっています。上記のグラフの比べ方には問題ありますが、全職種、大卒者共に1995年くらいから平均給料が上がり、2010年の不景気からやややや下がり、今現在上向きがこの2つの結果から分かりますが、教員の給料が同じような推移をたどっていない、これが問題です。
経済に給料が左右される(つまり経済状況で給料が上がったり下がったりする)これ自体は仕方ありませんが、教員の給料が同じような推移をたどっていないのは何かおかしい・・・それはこのグラフの結果から分かります。
基本的な経済の流れで言うと、景気が悪くなると、政府は減税し、景気対策を行います。しかし、ここで一時的に少なかった税収は景気回復とともに上向きし、教員の給料もまた上がる・・・となるはずですが、そうなっていません。実はこれには、高騰する年金、そして保険関連のコストが影響しているという問題があります(年金問題と保険関連の問題はまた別にブログで掘り下げますが、今回はさらっと触れるだけにします)。
今回紹介したアリゾナ州もまた例外にあらず・・・です。実はアリゾナ、所得税を過去10年で減らした州で、これが教育関連に結構な影響(つまり教育予算が減った)を与えました。さらに、過去10年前と比べ、14%の教育予算カットを実施し、結果としてアリゾナ州の経済自体は良くなっていました(教員にとっては皮肉な話ですが・・・)。実際、失業率は下がり、2万以上の雇用を生み出した、とのこと。
ともあれ、景気が良くなると、税金を上げ、税収を増やすことによって教員を含む公務員にお金を回さないといけません。しかし・・・・です。税金を上げる、というのは一般市民が最も嫌がる政策。アリゾナ州のように20%もの給与アップを行うには経済が良好で税収が一定のめどが付いている、という絶対条件があります。アメリカの場合は、日本と違い、各州政府にその権限が与えられているので、税金を上げるのは州政府、州知事、そして州議会が協議して決めること・・・となりますが、はてはて・・・です。
<総評>
今回のストライキのお話。実は今回のブログは主に4月から5月上旬の記事を中心にまとめたので、その後ストライキの結果、新たな動きがありました・・・が、それを書くとかなり長くなるので(って既に結構長くなってますが・・・)、次回にその後のストライキの動き、その関連するお話等書きたいと思います。

