アメリカの学力テストを用いた教育政策について述べられた記事について。

 

Does Using High-stakes Tests to Fire Teachers Improve Student Outcomes?

 

今日は学力テストを用いたアメリカ昨今の教育政策についてお話したいと思います。今日の話をしないと、次に書く予定のブログ(学術的な研究論文について紹介する予定)の内容を理解し難くなるので。

 

今日紹介している記事、学力テストを用いた教育政策へやや批判的な意見を紹介していて、それらのポイントを整理することによって、アメリカの学力テストを用いた教育政策への認識を深める、多角的に分析できれば・・・と思っています。

 

<学力テストへの誤解(その1)>

 

学力テストを用いた政策でよく聞かれるのが、

 

some teachers react by dumping creative lessons and teaching only topics that are on the standardized test.

(先生によっては、クリエイティブな授業をやめ、学力テストで範囲となっているトピックしか教えない)

 

というもの。最初のCreative Lessonですが、州都市の学区で働いた経験から言うと、そーCreativeな授業をやってる先生っていないような・・・(つまり先生のパフォーマンスを過大評価しているような)という気がします。

 

Teaching only topics that are on the standardized testですが、これも実は無茶苦茶な話で、学力テストは、州で規定された、学校の先生が教えるべきだと規定された範囲から作られたテストです。

 

つまり、学力テストで測定される学力は州から(法的に)規定された学習範囲内の内容であり、言い換えると、学校の先生も教えていないといけない範囲内からしか学力テストは作られません(もし州法で規定された学習範囲外の問題や問い方をした学力テストなら、テスト会社は州との契約違反をしたことになります)

 

逆に言うと、いくら先生の授業がCreativeでも、州法で規定された学習範囲外なら、逆にその先生は教職員の定める規定違反で、問題は学力テストではなく、そんな授業をした教員になります

 

というわけで、最初の学力テスト批判はやや行き過ぎかな・・・というのが個人的な印象です。

 

<学力テストへの誤解(その2)>

 

そして次の理由が、学力テストを用いた教員評価制度によって先生の解雇・雇用を行うと現場は混乱するという意見。

 

紹介したリンク先の記事では、

 

All the firings and new hirings devour principals’ energy and take time away from curriculum improvement and teacher training. And it can take months, even years, for new teachers to adjust to a new school.

(教員解雇・新入教員の雇用によって、校長先生のエネルギーは吸い上げられ、カリキュラム向上に割く時間がなくなる。さらに、新教員は新しい学校に慣れるのに数ヶ月、又は数年を要する)

 

これ、一見もっともらしいように聞こえます・・・が、よーく考えてみて下さい。新たな教員が加わることは学校運営では当たり前です!!!新しい教員を雇うと、慣れるのに時間がかかるから、今いる教員を保持し、トレーニングすべきだ・・・そんな無茶苦茶な論理はありません。良くない先生が居続け、質の悪い授業が行われることの方が問題であり、先生が新しい学校に慣れるのに時間がかかるのが問題なら、一生新しい教員を雇用することができなくなります・・・。

 

というわけで、上記の指摘、もっともらしいですが、無茶苦茶な言い分で、受け入れることができない話です。

 

<学力テストへの誤解(その3)>

 

三つ目の誤解は、先生の雇用・解雇が伴う教員評価システムによって起こりうる問題。

 

A system that ranks teachers by test scores can stoke fear and resentment in the heart of any teacher. The stress might cause a school’s very best teachers to leave. 

(テストスコアーによって先生のランク付けをするシステムによって、先生に精神的苦痛を引き起こしうる。そのストレスによって学校で最も優秀な先生が辞めることになるかもしれない)。

 

私の知る限り、これら精神的苦痛、そしてこのせいで先生のパフォーマンスが下がってしまった・・・ということを立証したリサーチは聞いたことがありません・・・(笑)。

 

学力テストのみによって教員評価を行い、本来学校にいるべき先生が去り、去るべき先生が居続ける状況になれば問題ですが、上記の指摘、少々極論です。

 

ただ、テストスコアーのみで教員評価を行うのは私も専門家の端くれとして反対ですが・・・。

 

<総論>

 

今日の話、アメリカの雇用・解雇、そしてカリキュラム作成や校長先生の仕事など、School Districtの仕事に関わることが多い話しですが、そんな学区で働いていた立場の人間からすると、

 

外部の人はどうしてこうも偏った、極論な意見を言うのだろうか?

 

というのが本音です。一見もっともらしいようで、実は現場には当てはまらず、きっちりとした研究で検証したのか?というとそうでもない・・・。

 

というわけで、今日は次回紹介する、きっちりとした学術論文で今日話した内容を実際に検証した研究をお伝えし、さらに突っ込んだ話をしたいと思います。