前回の続きで、生徒の出席率(アメリカでは欠席率:Absenteeism Rateと表示)とアメリカのAccountability政策について。

 

Chronic Absenteeism Could be Low-Hanging Fruit for ESSA Indicator

 

Lessons for Broadening School Accountability under the Every Student Succeeds Act

 

前回はAccountability政策であるEvery Student Succeeds Act(ESSA)とそのAccountabilityシステムで学校の評価、又はパフォーマンスの低い学校を特定するために使われる指標となりうるChronic Absenteeism(慢性的な欠席:学校日数の10%以上欠席)について説明しました。

 

今回は具体的に、Chronic Absenteeismがどのように機能して、AccountabilityシステムであるESSAの規定にフィットするかまた別の角度から説明していきたいと思います。

 

<ESSAの5番目の指標>

 

ESSAの5番目の指標、ということですが、アメリカ連邦政府は5番目の指標(Fifth Indicator)は何でも良い、と言っている訳ではなく、ある程度の規定を設けています。(Chronic Absenteeismを5番目の指標として適切云々に)まず、その規定を掘り下げていくと、

 

1.Allow for meaningful differentiation in performance on the indicator between schools

(学校どうしのパフォーマンスの違いをはっきりさせる指標)

 

前回のブログでお伝えした通り、この指標の目的は各学校のパフォーマンスを測定し、パフォーマンスの低い学校を発見・特定することです。指標に基いて分析したが、どの学校も同じだった・・・なることでは許されません(というか、どの学校もパフォーマンスが同じだった・・・なることはあり得ませんが・・・)。

 

2.Valid, reliable, comparable, and state-wide across all schools and by grade span

 

(敢えて日本語訳書きませんでしたが)この英文の意味する所は、この指標が州のどこでも同じように正当できっちり機能すること、そして全ての学年で同じように機能すること、ということです。

 

別の言い方をすると、State-wide・・・というのは、都市部の学校だろうが、郊外の学校だろうが、それこそ田舎の学校だろうが、州内全ての学校に公平に査定できる指標であること(間違っても、ある一定の地域の学校に有利になる指標ではなく)という意味です。

 

By grade spanというのは、その指標が小学校では達成しやすい(又は良い評価を受けやすい)が、学年が上がれば難しくなる・・・そのような学年の違いがなく、どの学年でも公平な指標であること(間違っても、小学校、中学校、又は高校など、特定の学年にだけ有利に働くことのないように、ということ)。

 

3.Must be likely to impact student learning and, for high schools, increase rates of graduation and postsecondary enrollment

 

5番目の指標は生徒の学習に影響を与えるものでないといけなくて、高校レベルでは卒業率を上げ、大学進学をアップさせるような指標でないといけない、ということを規定しています。

 

4.Must be calculated the same way in all schools or vary by grade span

 

これは5番目の指標の数値は(全ての学校に対して)同じ分析方法で行うこと(間違っても学年によって、ころころ分析・計算方法が変わることがあってはいけない)、という意味です。

 

5.Can be amended over time

(修正可能)

 

通常、決まった方法を(例えば翌年とかに)修正することは禁止されているものですが、意外にも修正可能、ということ。(修正されると、前年分析したスコアー(数値)と翌年の数値が異なる意味となり、比較不可能になる懸念があるのですが、今回はどうも違うみたいです)。

 

以上が、ESSAに規定された5番目の指標を設ける際のルールです。

 

<Chronic Absenteeismは指標となり得るか?>

 

では、Chronic Absenteeism(慢性的な欠席)がこの5番目の指標としてなり得るのか?について考えたいと思います。

 

まず、最初に、

 

学校に行き、授業を受ければ、基本学力は上がる

 

ということは、まー共通認識とされています(もっとも、授業を受けることでどれだけ生徒の学力は伸びるか?(学業にどれだけの影響を及ぼしているのか?)がデータ上はっきり証明されてはいませんが・・・)。

 

しかし・・・です。問題はやっぱりあって、

 

schools may falsify attendance logs

(学校が出席記録を改ざんすることがある)

 

これです。リンク先のレポートでは、シカゴの高校が出席日数を水増しした例を取り上げていて、その対策として州政府や学区がきっちりデータの管理運営することを述べています(もっとも、学区で働いていた経験から個人的見解を述べると、これでもまだまだ甘いですが・・・。)

 

さらにこのレポートでは、

 

Across the nation, 18 percent of schools have a chronic absence rate above 20 percent; i.e., one in five students in about one in five schools misses at least three weeks. 

(全米レベルにおいて、18%の学校がChronic Absenteeism(慢性的な欠席)の割合が20%を超えており、これは5校に1校の内、5人に一人が3週間かそれ以上学校を休んでいることになる)

 

と言っています。イマイチ分かりにくい言い方してるので、私が働いていた学区の経験を紹介すると、私の働いていた都市部学区は6つの高校がありました。その内、Chronic Absenteeismと呼ばれる割合、つまり学校全体の平均欠席率が10%を超える学校が2つありました。この二校の欠席率を計算したら、生徒一人の平均欠席が、週に一回学校を休む計算になる・・・とまー、よく休む生徒たちです(笑)。

 

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余談ですが、このESSAに基づいた各州政府のAccountabilityプラン&政策ですが、4月3日に第一次締め切りがあり、連邦政府に提出した州政府の内、5州政府(コネチカット、デラウェアー、イリノイ、マサチューセッツ、テネシー)&ワシントンDCがChronic Absenteeismを指標として採用しています。

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<データで見るChronic Absenteeism>

 

では、リンク先のレポートに紹介されている、最新のChronic Absenteeismの割合のデータ結果(2013−14年度)を見ると、

X軸が学校レベルのChronic Absenteeismの割合(右へ行く程割合が高く、良くないことを意味する)、Y軸が各学校の割合(上の結果は全米レベルなので、連邦政府が公表している全米全ての学校が含まれています)。

 

グラフにあるように、薄緑色の所(8.5%)のみChronic Absenteeismの割合がゼロ(つまり、慢性的な欠席をしている生徒が一人もいない)ことを表します(個人的には8.5%にビックリですが・・・)。

 

次にChronic Absenteeismの割合と学力テストの結果の関係性について。

データは2013−14年度、ニューヨーク市の小学4年生と中学二年生(8年生)のデータ。グラフ左側が小4、右が中2です。この分析、緑色が欠席率が低い(つまりChronic Absenteeismではない)グループで、薄緑がChronic Absenteeismのグループで、それぞれグループ内で何%が数学(Math)、英語(ELA)のテストで習熟レベルと見なされるProficiencyレベルに達しているか?を表しています。

 

結果は、言わずもがな、Chronic Absenteeismではないグループの方が、数学、英語ともにProficiencyレベルに達している割合が高く、敢えて興味深いのはChronicではないグループの小4での数学の割合が高く、中2では英語の方が高い、ということです。

 

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グラフにある、School Climateはおそらくアンケート調査で出したデータですが、どういったアンケート調査か、リンク先のレポートでは分からないので、言及しません、悪しからず。

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もう一つ紹介するのは、Chronic Absenteeismの割合と卒業率(On-time Graduationとグラフで表示されているので、これは12年間、つまり留年することなく卒業した割合)の関係性を表したグラフです。

データは、2014−15年度で、左側がオレゴン州のデータ、右はニューヨーク市のデータ分析結果です。

 

濃い青の棒グラフがChronicではないグループ、水色側がChronic Absenteeismのグループでは、オレゴン、ニューヨーク市どちらもChronicではないグループの方が卒業率が高く、ニューヨーク市の方がその差が大きいことが分かります。

 

<総論>

 

今日は5つ目の指標の詳細、そしてChronic Absenteeismについて前回より突っ込んだ説明を加えたブログでした。

 

上記のデータ分析結果、Chronicかどうか?である程度の学業成績の違いが示すことができる、ということを証明したかったために、リンク先のレポートはデータ結果を掲載したので、その辺りを掴んでもらえれば良いかな・・・と思います。

 

というわけで、次回をこの結果に基づき、Chronic AbsenteeismをESSAの指標の観点から政策レベルでどう扱うか?について紹介する予定です。