生徒の学力の伸び(Student Growth)を測定する際の問題点について。
A Practitioner's Guide to Growth Models
最近何度かアップした学力の伸び(Student Growth)の測定方法についての3回目。今日もまた別の測定方法について紹介します。前回同様、How much growth(Gain Score Modelと呼ばれるもので、学力が前回と比べ、どれだけ上がったか?という一番一般的なモデル)の一つを紹介します。
<Categorical Model>
今日お伝えするのは、Gain Score Modelの一つ、Categorical Model。カテゴリー(Category)の形容詞Categoricalで表現してますが、要は100点から120点に20点上がった、というスコアーの伸びを見る代わりに、
Performance Level Category(例:Basic、Proficient、Advancedなど)といって学力レベルで上がったか、下がったか、現状維持かを測定する
というモデルです。このレベルが、前年度Basicだったのが、翌年Proficientという上のレベルになったら、学力アップした、と認定される、まー簡単にいうとそういうモデルです。
上記に示した表は、参考程度に載せましたが、一番一般的Performance level(学力のレベル)で4段階(点数の分布もあくまで例です)。ただ、4段階・・・というのはあくまで一般的、というだけで、州レベルのテストでは、3段階にしている州もあれば、5段階までしている州もあります。
この学力レベル(つまりレベルとはカテゴリーのこと)を学力の伸びに用いたモデルが、Categorical Modelと呼ばれるモデルです。
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上記の表、リンク先の本から引用したもので、これを見ると、分かり易いと思います。
Gain Score Modelと呼ばれる数値を使ったモデルと違い、数値上のややこしい専門知識がいらない、解釈が簡単なので(BasicレベルからProficientレベルに上がったなど)、ある意味とっつきやすいモデルです。
<Categorical Modelの問題点>
このモデル、一見解釈が容易であるため、役立ちそう・・・と思いきや、結構困った問題もあります。例えば、
1.細かい学力の伸び(又は下がり具合)が分からない
上記の図の真ん中の薄緑色の線、Grade3(小学3年)からGrade4(小学4年)において、どちらもProficientレベルですが、少々学力は上がっています(小3のProficientの下位から小4でProficientの真ん中くらい)が、レベルで表示される限り、Proficientのままなので、レベル別で学力の伸びを表示している限り、上がったようには見えません。
2.学力の伸びた差の比較がしずらい
上記の図の赤の生徒と青の生徒の伸びですが、
赤の生徒ー小3時はBasicレベルで、小4に辛うじてProficientレベル
青の生徒ー小3時はBasicレベルの下位、小4時はProficientレベルの最高位
というわけで、学力レベル(つまりカテゴリーで)で学力の伸びを表示すると、この二人の生徒はともにBasicからProficientに上がった、と同じ表示になります・・・が、明らかに青の生徒の学力の伸びの方が上です。つまり、
学力レベル(カテゴリー)で学力の伸びを表示すると、上記2点のような細かい学力の動向が表せなくなります。
<総評>
このGrowth Model、解釈がとても簡単で、統計学、Psychometricのような専門的分析があまり必要ないっていうメリットがある反面、上記に説明したような細かい学力の伸びが反映されないので、どうかな?という感じです。
ただ、テスト会社からのテスト結果のデータファイルを見た経験から言うと、一応テストの会社の分析結果にこのCategorical Modelの結果も含まれているので、テスト会社の分析結果の一つには含まれています。
というわけで、次回はこれ以外のGrowth Modelについて紹介したいと思います。