アメリカ・K-12教育で推し進められるAccountability政策によってもたらされる影響・又はもたらされた主な成果について

 

School Accountability

 

今日は以前書いたAccountabilityシステムについての続きで、テーマはAccountabilityシステムによって生じる教育現場への影響・成果について。

 

<Reward OR Sanction?>

 

まず、Accountabilityシステムから生じる一般的な影響として、Reward型(報酬・恩恵)とSanction型(処罰・制裁)の2つがあります。Accountabilityシステムを学校レベルに特化して考えた時(つまり、生徒の学力向上を学校レベルで上がったか、下がったか?を考え、成績の上がり下がりを学校レベルで責任を取らせる、というSchool Accountability)、そのRewardやSanctionもまた学校レベルで請け負います。

 

Reward型の場合、学力向上にうまくいっている学校関係者・教員に対してMerit Pay(能力給)のような形でボーナスを支給する、というもの。

 

他方、Sanction型の場合、学校が達成すべき目標(例:Proficiencyレベルに達する生徒の割合)に到達しなかった際に、その学校地域にSchool Choice(学校選択制:生徒が自分の行きたい学校を選択&通学する)を与える、チャータースクール型の経営方針への変更、最悪の場合学校閉鎖・・・なる制裁が行われる、というもの。

 

どちらも教員・学校・学区へ、生徒の学力向上を目的とした起爆剤として活用していますが、どちらも効果があったのか?というと、(リンク先の論文はある・・・みたいな感じですが)私の知る限り、あったりなかったり・・・という感じです。

 

ただ、この学校への制裁&報酬型の考え、紹介している論文では、必ずしもこの影響は学校とは限らない、と指摘していて、それは

 

Parents and community members

(保護者、地域住民・・・←多少意訳しました)

 

具体的な例を言うと、Housing Price(住宅費)、その地域の家賃などのHousing Market(住宅市場)に影響を及ぼす、と指摘しています。

 

これ、極めて簡単な話で、先程述べたようにAccountabilityで各学校・地域の学力状況が公開された結果、お金の余裕のある人ほど優秀な生徒が集まる学校地域へ移住する、とまー分かり易い現象が起こり、それに応じて住宅市場も変化する、ということです。

 

<カリキュラムへの影響>

 

次にお伝えするのは、テストスコアーに基づくAccountabilityシステムの、現場レベルでの影響について。具体的には、授業を行っている教員・先生方、その他現場に携わっている方々への影響です。一言で言うと、

 

the narrowing of the curriculum 

(カリキュラム内容が狭まる)

 

ということ。よく言われるのが、nontested to tested subjects、つまりテストがなされる教科ばかりにフォーカスされ、それ以外の教科がないがしろにされる、という批判(影響)です。とりわけ、teachers focus more on tested content areas within specific subjects、つまり、先生方が特定の教科でテストで聞かれる内容のことにフォーカスしてしまう影響がでる!!という批判です。

 

アメリカの学校現場では、この現象を、”Teaching to the test”(テストのために授業を行っている)と呼ばれ、最近では、理科系の科目でもテスト導入、又は既にテストが行われていて、理科系のような(何か一定のトピックに関する)研究・追求するようなスキルをどうやって測定するのか?という批判が常にあります。

 

<テストスコアー以外のAccountabilityシステム>

 

では、現在のAccountabilityシステムは、上記のような批判・状況を踏まえてどう移行していっているのか?英語で言うと、

 

incorporate other measures of school performance besides student performance on standardized tests 

(学力テストに基づく学業成績以外で、学校のパフォーマンスを測る別のものを取り入れる)

 

これです。学力テストは確かに生徒の学力状況をある程度測定することに成功はしたものの、それだけではまだ不十分で、(生徒の学業状況を正確に把握する)別の何かが必要となっています

 

停学率、落第率、卒業率、APコース(成績優秀な生徒のみが取れるクラス)を取得している生徒の割合、などなど学校レベルでのパフォーマンスを測定する(学力テスト以外の)別の指標を取り入れる傾向があります。

 

州レベル、学区レベルでそれぞれどの指標をAccountabilityで取り入れるか?は地元の判断に委ねられているにせよ、様々な指標を取り入れることによって、より信頼できるAccountabilityシステムを構築しようとしていることは確かです。

 

<総評>

 

今日の話し、ある意味Accountabilityシステムによって、現場はどういう影響を受けてきたか?になりましたが、アメリカのAccountabilityシステムの流れがまた別の角度から理解してもらえれば幸いです。