今日は、全米の教員組合が悪い意味で保持する、アメリカの教育を歪める元凶となっている、困った特権をご紹介。

お伝えする特権は、アメリカの教員組合の多くが保持している、

Voluntary Transfer(自主的な転勤・移動)

日本語に訳すと、Voluntary(自主的)となっていますが、もちろんこれにはからくりがあって、良い意味でありません。

アメリカの公立学校は、予算削減によって、学校閉鎖や人員削減が当たり前のように行われます。学区の予算は、地元の税金によって収められたお金であり、景気が悪くなると、税金として入ってくる予算も減り、必然的に学校に下りる予算が少なくなるので、予算削減による人員削減などは仕方ないといえば仕方ありません。

教員の学区側としては、その結果として、教員の解雇(Lay-off)も行わざるを得ないのですが、ここで教員が保身のために学区側と結んだ契約の一つがこの、Voluntary Transferです。

<Voluntary Transferとは?>

自主的な移動・転勤としか訳せないこのVoluntary Transferですが、一応書類上では、

予算削減によって、解雇となった先生は、(悪い意味で)解雇となったわけでなく(英語で言うと、Not fired from the system)、(予算削減なる不可避な理由で)解雇となった(英語で言うと、Exceeded)

それ故、そういった先生は、ポジションの空いている他の学校に転勤する

又は、

その教員が担当する学年以外の学年の方が指導上能力を発揮できると認識し、他の学校で自分が希望する学年を担当するポジションが空いている場合、その学校に転勤する

というのが、一応Voluntary Transferの意味です。

しかーーーーーーーし、これは建前であって実質には別の理由でこのVoluntary Transferは機能しています。実際は、

能力のない先生、学校側から不必要とされた先生が、教員組合の保護の元、解雇はできないので、
ポジションの空いている他の学校に優先的に転勤できる

又は、

経験年数の多い先生方(つまり、教員組合によってかなり保護され、特権を有している人達)が、(経験年数うの若い先生や、新任の先生より)優先的にポジションの空いた学校に転勤できる


といういわゆる、特権として利用されています。

本来、このVoluntary Transferは、その先生が最も能力を発揮するポジションで指導をしてもらうために自主的に違うポジションに転勤するという理由で作られたシステムであるはずが、結果として教員が解雇されてもポジションを確保されるという、過保護な特権にしかなっていません。

<教員を解雇するには?>

各学区によって少々異なりますが、基本的に教員を解雇するとなると、それはそれはかなりのプロセスを踏む必要があります。

一般的に、数週間にもわたる(教員評価を含む)報告書の提出、そして校長、その他学校関係者によるミーティングによる議論を重ねてやっと書類上のプロセスに入りますが、実質は、なんとかして他の学校に移ってもらって解雇を避けるプロセスをふみます。

本来、生徒にとって適切でない先生、能力のない先生にはいなくなってもらって、将来有望な新任の先生にかわってもらうのが理想ですが、そうさせないのが教員組合。

実際は、学校側は、Exceeded(余剰となった・・・というか、ポジションを失った)先生方を、ポジションが空いているという理由で、優先的に受け入れざるを得ず、能力があるなしに関わらず否応なくその先生にポジションを与えないといけないことがほとんど。

また、Voluntary Transferという名の特権は、、教員経験数の多い先生ほど保護してくれるので、逆を言うと、若い教員は解雇される可能性が増します。間違っても、指導能力によって解雇ではなく、単なる年数によって判断されるので、このVoluntary Transferは全く機能しません。

というわけで、Voluntary(自主的)なる意味は全くなく、学校側も困っている事例も沢山あります。

<総論>


この特権。データ分析の専門では私のできる範囲外以外の何物でもありませんが、かなり困った特権であることは確か。実際、私が働く学区にもあるのかな?って調べたら、やっぱりありました(笑)。

キレイ事のような文面をのっていましたが、まーこれも特権をうまく包み隠す手に過ぎず、困ったもんです。

去年、選挙が行われ、新しい市長が誕生し、現教育長が再任され、最低でもさらに1年半は任期を延長される、と報告があっただけに、この教育長に個人的には期待してますが、どうなることやら・・・です。

というわけで、今後も学区内のネタなど、頻繁に更新できるよう頑張ります・・・。