アメリカの教職員養成プログラムについて、連邦政府が法改正案を提出し、各州政府が各州内の教員養成についてデータ分析&レポートすることになる、という記事について。

Improving Teacher Preparation: Building on Innovation

Proposed Teacher Prep Accountability: Pros, Cons, and Challenges

今日はTeacher Preparation Program(日本語に訳すと、教育実習、又は教員養成課程)に関する法改正案がアメリカ連邦政府から提出され、これが受理されると、各州政府が新たな法的義務を負うことになり、今日はその内容について紹介したいと思います。

<各州政府の負うべき義務>

今回の法案で、各州政府が新たに負うことになるであろう主な項目が、

1.(大学で提供される)各教員養成プログラム(又は教員養成課程)の卒業生の内、何割(又は何人が)教職の職についたか?

2.各教員養成プログラムの卒業生の内、何人(何割)が1年、2年、そして3年間続けて教職を続けていたか?

3.新人の先生たちが受けた各教員養成プログラムに対して、同僚の教員、校長先生、各区はどのように感じているか?

4.各教員養成プログラムを受けた新人の先生に教わった生徒の学習状況はどうか?


の4点。これら四点に関して、データ分析して数値上の分析結果を連邦政府に報告する義務を各州政府が負うことになるのが主な内容です。

それ以外にも、州政府は、各大学が提供する教員養成課程がきっちり認可されたものなのか?、プログラムに入る生徒の審査方法はきっちりしているか、教員養成の内容、教員免許を取得する前に必要な項目(授業や実習など)がきっちりしたものであるか、などなどを報告することなります。

(日本はどうか知りませんが)アメリカは教員免許取得が、必ずしも大学で取れるわけではなく、それ以外の機関でも可能で、一応データによると、教員免許取得者の94%は大学を通して取得しています。

<法改正の目的>

今回の新たな法改正案。目的はずばり、

Differentiate among and rate states' teacher training programs
(各州政府が、どこの教員養成プログラムが良いか評価&判断する)


という、教員評価と同じ考えで、優れたプログラムとそうでないものをはっきりさせる、これです。今回の法案で、この評価された結果のデータを一般に公表することも盛り込まれ、こうなると今後先生になりたい学生が選ぶ判断基準になることは間違いありません。

後、これ以外にも改正案が提出される背景が重要で、

New teachers feel underprepared to enter the classrooms
(多くの新米の先生が、授業を行うにはまだ準備不足と感じている)


ということ。この事実、(珍しく、あの何でも法改正に反対する)アメリカ教員組合側からのレポートで明らかになっている事実で、雇う学校側からの意見でもあるため、教員としての実習・スキルが満足いくレベルかどうか調べる意味もあります。

<法改正の問題点>

この教員養成プログラムに関するデータ公表の改正案。もちろん、懸念される問題点もあり、例えば、

1.Disqualify low-rated teaching programs(低評価のプログラムへの認可取り下げ)


もし、低い評価結果を受けた大学が、認可取り下げを受けると、必然的に連邦政府から支給される予算を受けられないことになります。さらに、

2.School districts could be unlikely to hire a new teacher from those low-rated programs
(低評価を受けたプログラムで実習を受けた新任の教員を、学区が雇わなくなる)


教員の雇用・解雇の決定権をもつ学区は、言うまでもなく優秀な教員を雇いたいので、低評価のプログラム出身の教員を雇わなくなる可能性が出てきます。

<総評>

この法案、現在一般からのフィードバックを受け付けている最中で、多少の修正をされて法律となるのは、来年中頃の予定とのこと。

データ分析の専門家として、個人的な見解を言わせてもらうと、

この法律によって得られるデータの解釈にはかなりの注意が必要

これです。具体的に言うと、データからどの大学の教員養成課程が優れているのか?と判断するデータの一つが、

それぞれのプログラム出身の教員が指導した生徒のテストスコアー

これが問題となります。テストスコアーは先生に指導したスキルや経験だけに左右されず、言わずもがな裕福な家庭出身の生徒の方が学力が良いに決まっているわけで、どの大学の教員養成課程が良いか以前に、どれだけ裕福な家庭の生徒を教えるか?の方が大事になってくるので、単純に教員養成課程の評価ができるほど楽な話しではありません。

となると、それらのデータを分析する専門家の腕次第・・・となり、各州政府にそれがきっちりできるのかな・・・と心配になりますが、まー心配してもまだまだ先の話しなので、データがアクセスできるようになってから考えましょう。