アメリカの公立学校で働く教員の離職・補充率について。

Teacher Turnover in DCPS

Evaluation of the DC Public Education Reform American Act (PERAA)

久々のブログで少々堅い内容ですが、テーマはTeacher Turnover(教員の離職・補充)。簡単に言うと、アメリカの教員は年度ごとに結構の数の先生が他校へ転勤したり、離職したりなどの動きが激しく、それにはどんな傾向があるのか?というのをデータで見てみよう、というのが今日のお話です。

紹介したブログは、その中で、全米でトップレベルの貧困層が多い学区・ワシントンDCを例にとり、データ分析して、先生の離職・補充率を掘り下げています。

<教員の離職・補充とは?>

まず最初に、Teacher Turnover(教員の離職・補充)についてですが、教員が学校を去るのは大きく分けて次の3パターンで、

1.Leave the profession

いわゆる、教員を辞め、完全に転職するパターン。

2.Switch School(転校)

これは働く学校を変えるパターンで、公立学校から別の公立学校もあれば、私立学校へ、又はチャータースクールというパターン。

3.Dismissed or Layoff

これは、最近流行りの教員評価などにある、教員の解雇、というパターン。

これら3つのパターンがありますが、いずれにせよ(学区や州政府からの財政カットという場合がない限り)学校側としてはいなくなった分のポジションを補充する必要となり、まー手間暇がかかることは言うまでもありません。

全米平均では、このTeacher Turnoverは16%と言われ、教員経験が1-3年の人に限ると、この割合が23%であることがデータ結果から分かっています。

で、ポイントはデータ分析からさらに明らかになっている、

貧困層が多い生徒の通う学校になると、この先生のTurnoverの割合が増す

という事実。では、貧困層がとりわけ高いワシントンDCのデータ結果を見ることによって、この問題を検証してみましょう。

<ワシントンDCの教員離職・補充率>

リンク先の記事にも掲載されていますが、一応ここでもデータ結果を見てみると、





データ結果には、Low-poverty、Medium-poverty、High-povertyの貧困層を3つのレベルに分けて、教員の離職者数を%で表しています。

データ結果にある、左側はそれぞれ

Stayer(転職・離職などせず在籍し続けた教員)

Movers(DC地区にある他の公立学校へ転勤した教員)

Leavers(定年退職、解雇、辞職、教員以外の職に転職、又は私立学校やチャータースクールへ転勤した教員)


を意味します。

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Leaversに関しては、残念ながら定年退職なのか、チャータースクールや私立学校の他の教職に就いたのかが分からないのがいまいち納得いきませんが、まー同じ学区で働くものとしては分からなくもない話。

というのも、生徒に関するデータはいつでもアクセスできてデータ分析できるのですが、学区で働いて気がついた意外なことは、教員に関するデータが意外にアクセスできないこと。別の部署が管理していることは間違いないですが、教員に関するデータがリサーチオフィスではアクセスできないってのは、困る話しです・・・。
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分析結果を見ての通り、(最初の上段部分の数値)貧困レベルが低い、又は普通の学校の教員のTurnover率は16-17%ですが、貧困層が高いと、38%に跳ね上がっているので、これは明らかに貧困レベルの高い生徒が多い学校が、教員の離職・補充率を挙げる原因といえると思います。

下の段のAverage 2009-2010 IMPACTというのは、その教員の担当した生徒のDC地区の学力テスト結果。見て分かる通り、貧困レベルの高い学校のLeaversのテストスコアー最も低く、このような低い結果から、教員評価では低く評価され、これもおそらく教員が離職する原因と考えられます。

とはいえ、Turnoverの割合が上がるから、テストスコアーを用いた教員評価は廃止すべき、とうことにはならないと思いますが・・・・(が、紹介したリンク先のブログはそのようなことを暗示する内容です・・・)。

<総評>

今回のTeacher Turnoverに関する簡単なデータ分析を通した傾向を見たリサーチ結果。貧困レベルがとりわけ高いワシントンDC地区の結果なので、全米の全ての貧困レベルの高い都市部学区に当てはまるわけではないですが、大変参考になる結果であると思います。

Turnoverの割合を通して離職・転勤した先生がなぜそうするに至ったのかをさらに掘り下げて見ていくようなリサーチが行われれば、さらに興味深く、政策立案に活かせるのでは?と専門家的には思います。

ちなみに私の働く学区で同じようなリサーチができるか?と言われれば、答えはNOで言わずもがな、教員に関するデータがありません。なぜそうなったのやら・・・。