全米共通学力テスト(Common core assessment)の契約されたテスト会社が決まったが、様々な問題が指摘されている記事について。

Common Core Testing Contracts Favor Big Vendors

久々の全米共通学力基準&テストのニュース。全米共通学力テストであるPARCCSmarter Balanced の2つが遂に始動しましたが、前途多難なこと限りなし。今日はその一つであるテスト会社の契約状況についてお伝えします。

<現在の全米共通学力テストと州政府>

いろいろあった全米共通学力テストと州政府のやりとり。すったもんだの挙句、

PARCC-12州政府(といっても、ルイジアナ州は微妙な状況)+ワシントンDC

Smarter Balanced-20州政府

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参考程度ですが、リンク先の記事ではPARCCは9州、Smarter Balancedは17州となっていて、これはGoverning States(政策を決定する祭の投票権を有している州政府)の数ではなく、実際に採用し、今年度(2014-15)にテストを用いることが決まっている州の数です。

例えば、PARCCの州政府であるマサチューセッツ州は、12州には含まれますが、リンク先の記事であるEducation Weekでは含んでおらず、その理由は、マサチューセッツ州が、各学区に採用するか、これまでのマサチューセッツ州のテスト(M-CAS)を使うかを委ねた結果、完全に採用とはなっていないためです。

他の州政府も似たようなことになっており、その州政府はEducation Weekの記事では含んでいません。上に私が書いた数はあくまで両テスト組織のホームページからです・
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に落ち着きました。合計32州政府ということは、残りの18州政府は独自にテスト会社と契約を結んだことになります。

私が直接仕事で関わっていたPARCCは当初、22(又は23)州政府(Governing States)がメンバーだったことを考慮すると、ルイジアナがほぼ抜けると仮定すると、半分の州政府が去っていったことになります。

Smarter Balancedもユタ州を筆頭に、サウスカロライナ州などいくつか抜けましたが、数の減り具合はPARCCの方が大きいと主ます。

で、今回は、この2つのテストをどこのテスト会社が契約を結び、テスト問題の作成、テストスコアーの分析、テストで必要なテクノロジーのセットアップ等を担当することになったのか?そして契約に伴う問題、今後どんなトラブルが待っているか?などについてのお話です。

<契約したテスト会社>


今回、この2つの全米共通学力テストの契約の総額は、

30億ドル(一ドル100円で計算して、なんと3000億円!!)

大金が交わされただけに、契約を勝ち取ったテスト会社はウハウハ、逆に取れなかったテスト会社には痛いものがあります。

ただ、連邦政府から提供された予算で始まったプロジェクトなだけに、連邦政府から「一つに会社だけに契約を結ばず、いくつかのSub-contractも含めること」という条件があり、契約は各テスト一社のみではなく、複数のSub-contractorがいるので、この3000億円も2社だけの独占にはなりません。

というわけで、具体的に契約を勝ち取ったテスト会社を見ると、

(Smarter Balanced)
McGrow-Hill Eduation CTB -7200万ドル(72億円)

***CTBはその内、5370万ドル(53.7億円)は幾つかのSub-contractにも振り分けています

ETS -1060億円(10.6億円)

(PARCC)
PEARSON -6300万ドル(約63億円)

ETS-4300万ドル(43億円)

見ての通りの破格の予算が契約に使われています。ただ、これはあくまでテストの設問作成、テストで必要な答案用紙や問題用紙の作成&印刷、テスト結果の分析が含まれますが、これに伴うリサーチはまた別の気がします(なぜ、気がするか?ということはまた別の機会に説明します。テストスコアーに関わるリサーチネタを最近読んで、ブログでアップする予定なので)。

興味深いことは、

ワシントンDCにある有名リサーチ期間であるAIR が、PARCC側の契約が違法であるとして、現在訴訟中 とのこと。大金がうごめいているだけに、契約のプロセスが違法なら問題ですが、こんなことでも訴訟が行われるのがアメリカらしい・・・・・・。

<2つの学力テストの違い>

記事を読んで気になったのが、このPARCCとSmarter Balancedの決定的な違い。

テスト問題の作成、そのテストの実施するテスト問題用紙等の作成&印刷、テストを実施するテクノロジーの管理、データ分析などテストで必要な仕事一式をテスト会社に依頼したPARCCとは違い、Smarter BalancedはTest Administration(テストの実施方法)は各州政府に決定権を委ね、統一をとりませんでした

これってどういうことか?というと、問題事態は契約した会社が行うが、その問題を提供されたら、どこがテスト実施のお手伝いをし、どこが分析を担当するかは、各州政府に任せる、というわけで、あくまでSmarter Balancedはテストを作るだけ、ということです。こんなことってあるんだ!!とテスト会社で昔働いた僕的には思いますが、PARCC側の方が良いかはやってみないと分かりません。

<他の州政府の動向>

今回紹介した記事、PARCCやSmarter Balancedに加盟しなかった州政府の動向もレポートしていて、

デラウェア州-AIRが4億3千万円で契約

フロリダ州-AIRが22.2億円で契約

メイン州-AIR2億4千万円で契約

カンザス州-地元カンザス大学にあるテスト会社と6億円で契約

ワイオミング州-ETSが18億6千万円で契約


というわけで、訴訟中のAIR、意外にも結構契約取ってるではないか!!という結果。

で、読んで、私がびっくりしたのが、

(なんとPARCC採用することになってる)ニューヨーク州がPARCCとは別で、Pearsonと32億円でテストの契約を結んだこと。個人的にニューヨーク州がまだPARCCにいること事態が予想外で、なんで脱退しないのかな・・・とニューヨーク州の状況を知っているだけにずーと注目してたんですが、ここにきて面白い行動にでました。

記事内容では、がっつり小学3-8年生、そして高校用のテストの契約を結んだ、とのことなので、これってPARCC脱退するのでは・・・・?????と今後に注目です(言わずもがな、ニューヨーク州は人口が他州とは比較にならない多さなので、ここが抜けると、PARCCテストを受ける人口が激減します)

<総評>

久々にがっつり掘り下げた全米共通学力テストの最新状況。

私個人としては、今働いている学区の州が、PARCCを完全採用している州なので、必然的にPARCCのテストを使わざるを得ないので、PARCCの情報はいろいろ入ってくるし、最近がっつりPARCCテストに関するリサーチを調べたんですが、正直、

こんな穴だらけのテストやって、テストスコアーの信頼性あるんかい???

という有り様です(笑)。個人的は、前年度までやってた州レベルのテストに戻してほしいなあって思いますが、そんなことはできるわけはなく(といってもScienceテストだけ、前年度と同じテスト会社のテスト使うんですが)、このブログでもPARCCの状況、またお伝えする予定です。あー、心配だ・・・。