アメリカ・ロードアイランド州プロビデンスの教員とプロビデンス学区内での教員条項に関する交渉が決裂した、というニュースについて。

Providence RI Teachers Reject Tentative Contract

Providence Teacher Union Rejects Contract Proposal

久々の更新から、今日は個人的には読んでて腹立つ、アメリカ教員組合の非現実的な要求を取り上げたニュースを紹介し、アメリカ教員組合の横暴ぶりをお伝えします。

アメリカで最も有名なK-12のニュースサイト、Education Weekから見つけた、ロードアイランド州・Providenceのプロビデンス教員組合とプロビデンス学区の間で契約更新が決裂しました。

<教員の雇用上の権限を持つ学区>

日本と全く異なる、この教員組合と学区間での交渉。アメリカは基本、先生の給料や給料、雇用関連は州政府ではなく、各学区がその権限を持っているため、教員組合と学区内で教員の給料体制や雇用状況などの合意を得る必要があります。

8月31日で以前の契約期限が切れた、プロビデンス学区と教員の契約更新をしようとしたのですが、なんと教員組合側が新たな契約内容を不服とし、学区側の提示した新規契約案を否決しました。

言わずもがな、教員組合側は満足いくような契約内容でないとし、学区&プロビデンス市長側は大変な憤りを示しています。

<契約更新内容>

で、今回この交渉決裂となった一番のポイントは、

財政上の理由で先生を解雇することを禁止するかどうか

という、いつもながらの理由。というのも、教員組合側は、プロビデンス市政がいかなる財政状況であれ、財政的に危機的状況で人員カットも避けられない状況でも、教員を一人も解雇してはいけない
、という条項が含まれていないといけない、という極めて身勝手&非現実的な要求を依然として変えていないのです。

いわずもがな、アメリカ財政はどこも厳しく、市政の財政状況が変化するのは当たり前で、先生を含む公務員の人員カットは時には必要です・・・・・・・・・が、なんとこれが教員にはできないような条項が前の契約内容には含まれていました。

こんな身勝手や要求を一蹴して新たな契約更新を・・・と学区&市長は求めていましたが、教員組合側が否決し、交渉がイチからやり直し・・・という話。

後、もう一つ重要な条項が、

教員に(通常業務である授業を行うことや保護者との対応以外に)また別の業務や職務をした人には残業代のような特別手当てを支給するかどうか?

という条項。それなりの責任ある業務を行って欲しい学区側と、そんな責務は負わないけど、給料は下げてほしくないという、これまた無理難題な要求をする組合側で、全く同意に至っていません。

<学区と組合の摩擦>

さらにいうと、教員側は、学区側が先生や他のスタッフの雇用の権限を持っているだけでなく、教員が決めているカリキュラムに学区側が一定の権限を持っていることに納得いっていません(記事には詳しい状況が書かれていないため、具体的にはどういうことか分かりませんが・・・)。

これ、私が今働いている学区での経験から推測すると、例えば、私の働く学区では、

(日本の中間、期末テストにあたる)学区内の学校共通の学期末テストが、学区主導で(つまり教員主導でなく)行われている

という現状があります・・・が、もちろん、これも教員側は好ましく思っていませ。妥協案で、

このコース別の学期末(もしくは中間)テストは、教員側の代表者が集まって作成する

ということになっていました。実は、このコース別学期末テスト(多くは、数学&英語、そして高校レベルの歴史や理科系の授業)の分析をしたのがこの私(笑)。

テスト会社で働いた経験からテストスコアー分析ができるので、テスト結果から、テストの質を判断する分析を行ったのですが、これで分かったのは、

ほぼどの学年の、どの科目の授業も問題だらけの質のテストを行い、成績をつけていた

という悪態ぶりが露呈しました(これについてはまた別の機会に詳細を書きます。)。その結果を見たボスがかなりご立腹だったので、もちろん、これは私の働く学区のトップ連中に報告され、教員側と話し合いになりました。

で、今年度、2014-15年度にこの学区内の共通学期末テストがどうなったか?というと、

教員側が(独自に!!!)また作るテストか、これまで使ってきたテストのどちらかを使って成績をつける

という妥協案になりました。正直、教員側が独自に作った、以前のものが問題だったのですが、また作るっていっても、また教員側が彼らだけで作るので、全く信用できません!!

こういう所から分かるのですが、教員側は是が非でも自分たちの権限は死守します・・・。あー、困った、困った・・・。

<今後の対応>

というわけで、ふりだしに戻った、学区と教員組合の交渉。

プロビデンス教育長は、まさか期限がきれた今の状況で、契約更新が否決されるとは夢にも思ってなかったみたいで、I am really disappointed!!と公的にコメントを発したくらい。

かといって、再交渉のスケジュールは全く決まっていません。さらに困ったのは、

まもなく、プロビデンス市長の選挙が行われる

ということ。つまり、教員側も辞めることが決まっている現市長と交渉する気があまりないのです(余談ですが、現市長はロードアイランド州の州知事選挙に立候補したので、辞めることは既に決まってます)。

何度もこのブログではお話した、教員のTenure(終身雇用)を是が非でも手放したくない教員側と、これを改革したい学区側の戦いはまだ始まったばかり。

指導年数に応じて(その質が悪かろうと良かろうと)自動的に給料があがる教員の給料体制。暫定案では、2年目は1.5%給料が上がり、3年目に2.5%上がり、その分、教員側は以前より保険等のお金を支払わないといけない(→これまではこの保険料も市側が負担してたんですが)、そして先生の責務は(給料を増やす代わりに)増える、というもの。で、これが否決されたので、今後どう折り合いをつけるのか?

典型的な学区と教員組合の対決状況が明らかになった、プロビデンスは大変です・・・。