全米共通学力テスト・基準(Common Core State Standard & assessment)を採用する州政府を表すEducation Weekの記事について。

National Landscape Fragments as States Plan Common Core Testing

久々の全米共通学力基準・テストネタ。ブログ更新してませんでしたが、チェックはしっかりしてました。今回、全米共通学力テストを採用する州、採用しないと決めた州など、数年前に比べて状況がかなり様変わりしてるので、今回の記事を紹介して、全米共通学力テストの最新状況を確認したいと思います。

<数年前と2014年現在の違い>

数年前(私が実際に関わってた2012年度くらい)の時は、採用すると決めていた州政府が、46州政府+ワシントンDCでしたが、今は確実に採用すると決めている州が、26州政府(Smarter Balancedが17州、PARCCのテストが9州)まで減少・・・。つまり、約2年で20州政府が軌道修正しました。

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各州政府の採用・不採用状況はリンク先の記事を見て下さい。
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Education Weekの記事では完全に採用する州政府のみをカウントに入れているので、実際に共通テストを使用する州政府は少し増えるかも・・・です。

とはいえ、その理由は様々ですが、この各州政府の事情、そして全米共通学力テストであるSmarter Balance&PARCCの状況を掘り起こすことで、アメリカの教育政策・問題点が良く分かったりします。

<誤算となった全米共通学力テスト>

まずは(各州政府別ではなく)大まかな誤算、又は問題となっているのが、

1.予算

PARCC、Smarter Balancedともに州レベルから全米レベルにテストが移行することで、1州政府でテスト会社にお金を払ってたのが、(早い話複数の州政府による)割り勘になって節約できる・・・・と言われていたけれど、蓋開けば、(州政府によっては)倍以上になった・・・という全米共通にする予算上のメリットがありません。

以前、このブログでもお金&予算について報告しましたが、紹介している記事でもSmarter Balancedを採用予定だったノースカロライナ州は、今使用している州レベルのテストの2倍お金がかかかることが分かり、採用を見合わせている理由の一つがこの予算です。

2.学力基準

学力基準とは、各学年で定められたProficiencyと言われる学力習熟レベルに達していると言われるレベルのこと。No Child Left Behind法でこのProficiencyレベルに全生徒達しないといけない・・・なるあり得ない目標を設定されたため、各州政府が行ったのは、

Proficiencyレベルに達する学力テストスコアー(通称Cut Score)を下げる

という手段。つじつまを合わせることが目的であると言わざるをえないこのやり方ですが、問題は、

全米共通テストになるため、このProficiencyレベルを各州政府の事情で上げたり下げたりできない!!

これです。しかも、(今アメリカの研究テーマでは流行りの流行りである)College-readinessなる、大学1年目の授業で一定の成績を収めるだけの学力を有していることまで判断しようっていうオマケの意味合いまで含めようとしているから、現場の先生にはたまったものではありません・・・。

つまり、各州政府の意向で融通が全く効かない基準であるため、教員組合は反対、そして州政府も採用を見合わせる、又は不採用にした・・・こんな事情が背景にあります。

<各州政府の状況>

リンク先のサイトの全米地図の表では、Education Week独自の基準で決めているため、PARCCやSmarter Balanced採用予定だけれど、Undecided(未決定)と判断されている州政府もあります。この中で特に興味深い状況の州政府を取り上げると、

1.マサチューセッツ州


PARCCの州政府の議長役を司っているマサチューセッツ州は、来年度は、各地元の学区にPARCCを採用するか、今現在使われているMCAS(マサチューセッツ州の州規模テスト)を継続するか判断させるとのこと。そのため、リンク先ではUndecidedになっています。

ちなみに、マサチューセッツ州の下にあるロードアイランド州はPARCC採用になってますが、数週間前に来年度はPARCCにするか現在使用しているNECAP(ロードアイランド、ニューハンプシャー、メイン、ヴァーモント州の4州政府で扱っているテスト)にするかは学区に任せる趣旨の法案が議会で可決されたため、Undecidedになるかもしれません。

2.オクラホマ州

リンク先の記事では、Others(その他)になり、テスト会社の一つ・Measured Progressを採用すると決まったが、高校は未定・・・ということになっていましたが、先週、オクラホマ州知事が署名し、正式にCommon Core State Standardを不採用にすることになったので、完全に不採用の州です。

3.ニューヨーク州


個人的にはやっぱり・・・という結果で、Undecidedになっているニューヨーク州。私がPARCCに携わっていた2011~2012年度でも大変PARCCには積極的だった州ですが、教員組合の反対など怒涛の抵抗にあい、今どうするか丁度見ものの状況です。

ニューヨーク州教育省はまだ正式に結論を出していない状況ですが、私が働いていた時に着いたい&知っている限りでは、

1)コンピューター式テスト

ニューヨーク州、とりわけニューヨーク市は貧しい生徒ばかりで、パソコンの使い方など知らない生徒が大多数います(ちなみいうと、全米で一番大きい学区はこの学区で、生徒数なんと100万人の馬鹿でかい学区。ちなみに私が働いている都市部の学区の生徒数は約2万3千人なので、その差は歴然です)。

他方、郊外の金持ち層が住む学区は、パソコンで既にテストは行われているので、パソコンで行う地域とペーパー式で行うテストの2パターンで行うと、正確なテストスコアーが得られません(理由は、パソコンでテストを受けると、パソコンの使い方で苦戦して、テストスコアーにエラーが発生するから)。

PARCCのニューヨーク州の代表であり、かつPARCCのリサーチ部門のチーフの人(当時働いていた時、大変お世話になったので、その時良く話したのですが)ニューヨーク州の一番の懸念はこのパソコンでも大丈夫か?でした。

2)学力低い生徒の対処

ニューヨーク市の生徒のような学区では、学力が低く、既に述べた学力の基準値が大幅に変更されると、もろに影響を受けます。これを指くわえて見ているほどニューヨーク市の教員組合がおとなしいわけはなく、怒涛の反対を起こしています。

というわけで、ニューヨーク州がもし不採用にすると、PARCCの受験者数が大幅に減少するので、PARCC側はなんとしても残ってほしいですが、どうなることやら・・・。

4.ルイジアナ州

最後はこのルイジアナ州。リンク先で取り上げられている州が偶然にもPARCC採用州政府ばかりですが、この州も大いに揉めています。

ルイジアナ州教育省、教育省トップはPARCC採用の方向で動いていますが、ルイジアナ州議会が真逆で、上院議会ではPARCC廃止で可決され、下院では、(多少の条件はありますが)PARCCテストに予算を充てることを禁止する予算案が可決してしまった状況。そうなると最終判断である州知事は?ということになりますが、共和党の知事であるBoddy JindalはPARCC廃止派の知事。

最終決定はまだされていませんが、かなり危うい状況のルイジアナ州です。

というわけで、2013-14年度の学校年度も終わりを迎える今月、各州政府の来年度の動向に注目です。