2002年に施行されたNo Child Left Behind法によって州政府のAccountabilityシステムがどう変わったについて。(誤字が多かったので、訂正しました)。


All 50 States New Using Testing or Student Performance for School Accountability


State School Accouontability "Report Card" Database


今日はEducation Weekの記事で見つけたシンプルだけど、分かりやすいNo Child Left Bejhind法(日本では「落ちこぼれセロ法」なる訳語)の施行直後と現在の変化状況についての記事をお伝えします。


<No Child Left Behind法とは?>


このブログで何度もお伝えしていますが、NCLB法は「落ちこぼれをなくす」法ではありません


NCLB法では、Proficientレベルに達する生徒を100%にする、というのがその最大の目的で、例えば、仮に白人生徒の平均得点が80点、黒人生徒の平均が60点で、学力差が20点あったとしても、その州のProficientレベルの数値が50点なら、白人、黒人ともにProficientレベルに達した生徒は、100%近くとなり、NCLB法で規定された目標を達成したことになります。


No Child Left Behind法はあくまでこのProficientレベルに達した生徒の割合の差をなくすことが目的で、そのために、力テストでまずは州規模で学力を正確に把握することが必修となりました。


問題は、このProficientレベルを各州政府が自ら設定できる(連邦政府の許可申請等の必要はなし)、という、良い様に言うと柔軟性あり、悪い様に言うと、基準値を低くすれば、いくらでもProficientレベルに達する割合を上げることが可能、という法律の抜け穴が問題と指摘されています。


先ほどの例で言えば、ある年の白人の平均が仮に70点、黒人が50点として、Proficientレベルが45点なら基本、白人&黒人のProficientレベルに達した割合はどちらも100%近くになります。


仮にその翌年の結果が、白人80点、黒人55点だとしてもProficientレベルに達した割合自体は変わらないが、学力差は前年の20点から25点に上がっています・・・が、こんなことが現在のNCLB法ではあり得てしまう、ということになります。


ともかく、この法によって、全州政府は学力テストが必修になり、私が以前働いていたテスト会社はその恩恵を受け、仕事が増えて、テスト産業はかなり大きく成長しました。


ということで、これはまー大雑把ですが、NCLB法の概要です。



<No Child Left Behind法で変化したこと>


いろいろ説明する前に、下の表を見てみて下さい。
No
見ての通り、No Child Left Behind法(NCLB)が施行された2002年から10年以上が経過し、各州政府の教育製作状況がどう変わったか、大まかですが分かりやすく図になってます。


NCLB法で州規模の学力テストが必須となったため、2002年32州政府だけだった州規模学力テストが2013年で50州プラスDCの全米全てで行われるようになりました


学力テストが毎年行われるようになると、では「学力はどれほど変化、向上したのか?」というのが次の疑問となり、表にある「Growth or Imporvement」(学力向上)についての分析&公表も2002年の21州政府から37州政府プラスワシントンDCの数に増えています


Growth or Improvementはデータ分析の世界では、Student Growthモデル、Student Growth Percentile(SGP)なーんて感じで呼ばれてて、私の働くオフィスでもSGPは報告すべきデータ分析の一つです。


興味深いのは、NCLB法で、Graduation Rate(卒業率)の公表が8州政府から44州政府プラスDCに増えていること。逆に言うと、卒業率が2002年の段階でたった8州政府しかきっちり分析してなかったのか!!と驚きの数値です。


逆に、Dropout Rate(退学率)は13州政府から12州政府と減っているのも驚きです。退学率をきっりち分析&報告してないのか・・・と恐ろしくなります。


その他、表にある英語を日本語でお伝えすると、


Attendance(出席率)←逆にAbsenteeism Rate(欠席率)で分析&報告する時もあります。私の働く学区ではAbsenteeism Rateを報告してます。


Indicators of School Safety(学校の安全指標)←アメリカの学校内の安全を表す指標を数値化して把握しているか?ということです。私の働く学区では、次の項目も含めてアンケート調査(Culture and Climate Survey)として数値化して把握してます・・・が、これが州全体でやっているかは不明。


Climate & Culture←上の表にもあるように、生徒や保護者の学校満足度調査でこれはアンケート調査で行います。私が去年分析した一つがこれ。今年度は学区の全学校対象(小学3年生から12年生)で、11月に行い、5月に再度行う予定です。


先生の生徒への授業中、授業後での対応、学校内外の安全、学校関係者の生徒への対応など様々なアンケート質問があります。とはいえ、表には3州政府のみ。。。。アンケート調査はまだまだ州規模では行えていないのが良く分かります。


Growth of the lowest performing quartile(学力の低い生徒の学力向上度)←学力低い生徒への学力向上を測定&分析しているか?についてで、たった9州政府だけで、これもまだまだ。


ちなみに、この学力低い生徒・・・ですが、簡単に補足説明すると、


学力低い生徒とは、往々にして英語があまりよく出来ない生徒が多く、英語力が未熟なため、テストを行っても、学力がどれほど上がったか?ということを正確に測定できないので、こういった生徒専用のテストを(州規模の通常のテストとは別に)行い、より正確に測定する必要がある。または学力があまりにも低いため、例えば小学5年生でも学力は3年生レベルなら、かなり難易度を下げたテストを行う必要がある」


ということです・・・・が、そうなると予算が増え、大変になることは必至なので、まー州政府も頭の痛い所です。


Education or Employment after school(卒業後の進路状況)←これ、早い話、全米共通学力基準の一つである、College-and-Career Readinessについてのことです。


さすがに、NCLB法とは一切関係ない(つまり、法律には明記されていない)トピックで、NCLB法とは間接的にしか関係ないですが、3州政府はなんとかデータでレポートしてるんだ!!と同じ関係者の端くれとして少しビックリです。


Industry certificate at graduation(卒業後の職業上の免許)←これ、専門学校の高校卒業した後に取得される免許のことで、これまたNCLB法とは関係なし。


Letter grade rating(学業成績)←これまた、NCLB法とは関係なく、学校の先生が決める学校の成績についてはNCLB法とは直接関係ありません。


<総論>


今日のネタ、ただ単に紹介したかった、NCLB法の施行直後の状況と2013年の状況の変化。


こうしてみると、学力テストが実施され、やっと州政府が学力状況を州規模で把握できるようになった、という土台がしっかりしてきたような感じです。データ分析の専門家の端くれとして思うのは、やっと教育政策に役立つデータ分析を伴うリサーチにおいて、学力テストスコアーを用いて行うことが可能になった、と環境整備が整った感じです。


というわけで、今日はシンプルですが、興味深い情報をお届けしました。