アメリカの教育改革へつぎ込まれる公的資金の多くが、教育関連の非営利組織や民間企業へ流れている、という記事について。


Companies, Nonprofits Making Millions off Teacher Effectiveness Push


久々のテスト産業(というか、非営利組織も今回は含まれますが)ネタで、


アメリカのK-12への教育改革を行う際に用いる州政府や学区のお金の多くが、外部組織である非営利組織や民間企業へ使われ、彼らが教育改革のサービス・サポートを行っている


というのが今日の要旨。というわけで、今日はそれについて具体的に見ていきたいと思います


<アメリカ・教育産業の発展>


このブログでも何度かお伝えしたことがありますが、ここで改めてお伝えする、アメリカ・教育産業がどのようにして発展・拡大してきたのか?


元々、アメリカは(日本とは大違いで)教育政策やリサーチ・研究に特化した非営利組織が数多く存在し、さらにそこに民間企業が参入している


という社会的背景があります。そんな中で市場拡大に貢献したのが、


2001年に施行されたNo Child Left Behind Act


です。全州に学力テストの義務化、テストスコアーを用いたデータベースシステムの構築を各州政府は行うことになり、結果として


states paid millions of dollars annually to companies to develop and administer the standardized tests required under the law


各州政府は、毎年数百万ドルのお金を企業(これは非営利組織も含まれます)に支払い、No Child Left Behind法で求められた学力テストを実施・運営を行った


というわけで、教育産業(とりわけテスト産業)がこれら教育改革に伴う予算をもとに発展していきました。問題は現在、そして今後の教育産業です。今は、このNo Child Left Behind法の影響からさらに発展し、


Now, a movement to overhaul the teaching profession is creating a new source of revenue for those in the business of education


現在、先生に関わる職業を総点検しようという動きによって、教育産業に携わる人への新たなお金儲けの機会が生み出されている


学力テストの実施によって、テスト産業にお金(=公的資金)が流れ、産業が潤いましたが、今度は新たな教育改革にまた別のお金が流れようとしています。それは、(何度もこのブログでお伝えする)


Teacher Evaluation(教員評価)


教員評価によって、クラス状況の良い先生、悪い先生を見極め、悪い所にはサポートを提供したり、特に酷い場合は先生を解雇したり・・・など、こういった対応を法制化しようという流れはより一層加速しています。


ポイントは、この流れが


A booming new market services and products to help states and school districts scrambling to meet the new legal requirements


新たな法的義務を満たそうと苦心している州政府や学区を助けるためのサービスや商品を提供する新たな市場が成長している


というわけで、教育産業がまた増大する、新たな予算がつぎ込まれる分野が現れました。


<教育産業のサポート・サービス>


上記の教育改革の流れを理解した上で、教育関連の民間企業、非営利組織の行っている主な仕事は、


-Design evaluations

評価システムのデザイン


-Train teachers and principals in how to use them

評価システムの使い方に関する教員、校長先生への指導


-Set up online platforms to help sort all of the new data that schools will be collecting
各学校が収集することになる新たなデータを取捨選択するお手伝いをする、オンラインプラットフォームの構築

などです。ちなみにアメリカの場合、州政府・学区の予算以外にも、民間の財団などが金銭的サポートを行っているので、上記の仕事にはかなりのプロフェッショナルな人材が関わります。


<教育産業の契約状況>


具体的な州政府の契約状況を見ると、


(フロリダ州)


-民間の教材出版会社・Houghton Mifflin Harcourt にClassroom Observation(授業参観)を通した教員評価方法の開発に480万ドル(約3億8千万円


非営利の教育研究機関・the American Institute for Research にテストスコアーを用いたデータ分析に基づく評価方法の開発に400万ドル(約3億円)


をそれぞれ支払っています。


(ニューヨーク州)


-The American Institute for Researchに270万ドル(約2億円)を払い、フロリダ州と同様な評価システムの開発を依頼。


Classroom Observation(授業参観)による評価方法に関しては、ニューヨーク州政府は各学区に対し、州政府は許可した民間、非営利組織、又は教員組合からの人材を雇用し、評価方法のデザインをするよう指示しています。


ちなみに、これらの評価システムの使い方に関するトレーニングに、各学校は一日あたり最高4500ドルを支払っています。


逆に、非営利組織&民間企業の状況にフォーカスすると、


The The New Teacher Project (TNTP))


生徒の学力テスト結果を用いた教員の評価システムに賛同する立場をとるこの非営利組織。2009年にこの評価システムに関するレポートを出版して以来、オバマ政権もこの内容を大いに参考にしたと言われています。この組織の主なクライエントは、


1.テキサス州政府と契約を結び、州内の教員評価システムの開発に携わる


2.テネシー州などいくつかの州政府に対して、コンサルタント的なサービスを提供している


3.ロードアイランド州と約40万ドル(約3000万円)の契約を結び、教員の評価システムで働く評価方法のトレーニングを提供


Mathematica


2010年度にデータ分析を用いた教員評価システムに関する研究レポートを行い、エラーが多い現在の評価システムに対して警告を発していた非営利の教育研究組織。50万ドル(約4000万円弱)以上の契約をワシントンDCと結び、評価システムのデザインを依頼される。


Peason


イギリスに本社を置く(といっても、アメリカでもかなり大規模に展開し、アメリカの企業のようなイメージもあります)この民間企業。出版、データ分析、コンピューターによる学力テストの実施などで年間10億ドル以上(約800億円)の売り上げを誇る会社。


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余談ですが、私が以前働いていたテスト会社はこのPeasonのライバル会社の1つでした・・・。

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ジョンズ・ホプキンス大学の研究者と共同開発した教員評価に関するソフトウェアーを開発し、それを販売し始めています。


<教育産業の課題・問題点>

このような教育産業の市場拡大の中、問題点をいくつか述べると、


1.教員の評価システムに予算が流れているところに目を付けた、質の低いサービスしか提供しない金儲け主義に走る懸念、逆に予算に厳しい州政府や学区が質の悪いサービスしか得られない懸念


→評価システムを外部機関に委託するのは良いですが、お金儲けに走り、質の低い評価システムしか提供されなかったり、予算の厳しい地域はどうするのか?という課題が残ります。


2.教員評価システムにまつわる、現場の先生、教員組合、教育委員会の関与


→テスト会社などが一切全てを任される学力テストの実施・運営・分析と異なり、教員システムは現場の人たちの協力なしでは実施できず、評価システムをうまく活用できるトレーニング・指導が必要となります(つまり、デザイン、分析など専門家がちゃちゃっと行えば終わり・・・という話ではない

というわけで、今日のブログ、結構長くなってしまいましたが、アメリカが教育という分野において、民間企業はもちろん、非営利組織がかなりの影響力を持ち、教育産業が発展していっているという現状を理解してもらえば幸いです。