“真夏の尾瀬は小さな生きものや草花にあふれ、春とは全く違う姿だった。日光は熱いが、風は涼しい。山々に囲まれた広大な湿原には、木道が果てしなく続く。体全体で雄大な自然を感じ、家族で感動を共有した。
8年前、夫と水芭蕉を目当てに初めて尾瀬に赴き、いつか再び訪れようと誓った。あれから3人の子を授かった。1歳の次女には生まれつき筋力が弱い疾患があり、尾瀬の夢は潰えたと思った。しかし、夫が次女を背負子に乗せて荷物と一緒に運ぶ、ことを決意。小―の長女の夏休みに、不安と期待を抱えて家族全員で尾瀬の地に立った。
初日は山小屋に宿泊。翌日は早朝から尾瀬ケ原を回った。背負子の心地よい揺れで、すやすやと眠る次女。そんな次女の体重も含め、夫の荷物の総重量は20キロを超え、私も10キロ以上のザックを担いだ。すれ違うたくさんの人たちから労いの言葉をもらった。帰路は険しい山道を登るが、4歳の長男も最後まで自力で歩きぬいた。家族で深い達成感を味わい、夢を叶えることができた。
障害児と生きる家族の歩む道は、決して平坦ではない。しかし、汗をかきながら大地を踏みしめ、進み続けるからこそ、その先で見られる景色は格別に美しいのだ。私たち家族は、これからも前を向いて歩み続ける。”(8月16日付け中日新聞)
愛知県みよし市の公認心理師・有働さん(女・36)の投稿文です。「障害児と生きる家族の歩む道は、決して平坦ではない」、これは確かであろう。でも障害者も持つ家族の頑張りの話はよく聞く。ボクの身内に幼い頃から障害を持つ人はいない。だから本当の苦労は分からない。それだけにこうした話には感動を持つ。
家族で尾瀬に行く夢を持った夫婦が、障害の子を持ったことで一度はあきらめた。が、夢を果たそうと、ご主人が背負子に子を載せて夢を果たされた。何という熱意であろうか。家族の絆が薄れていく時代である。でも障害などの問題を抱える家族は、家族が一致団結しないと進んでいけない。そこに家族の本当の良さを見いだす。ボクらがみるものはそうしたものの一部である。豊かであっても家族がバラバラでよりどころも分からない人達と、どちらがいいかと問われても、一言では答えられない。誰もが置かれた環境の中で最善を尽くしたい。