“3年半前、夫ががんで他界した。69歳だった。亡くなる前数カ月間の夫のもだえ苦しむ姿は、見ている方も大変つらかった。だから、息を引き取った時は正直ほっとした。だが、夫のおかげで人生を謳歌している今、夫へのある思いが募っている。
がんと診断されてからの10年、苦労の連続だった。特に闘病の後半では、疲弊した私は心ない言葉をぶつけたことも。なぜ、もっと優しくできなかったのかとの後悔がにじむ。
そして現在、夫に一番伝えたいこと。「あなたのおかげで世間知らずの私の世界が広がりました。今多くのことを楽しむことができています。いつかその時が来たら必ず迎えに来てください。それまでたくさんの新しい体験もして、お土産として持っていきます。心からありがとう」”(1月7日付け中日新聞)
愛知県半田市の吉田さん(女・64)の投稿文です。2月6日の第3954話「いるからこそ」に通じる話の部分もあるが、この話は次の段階の話のようである。「あなたのおかげで世間知らずの私の世界が広がりました」という文はどう理解すればいいのだろうか。生前のあなたがいろいろ教えてくれたのか、あなたが亡くなっていろいろ体験して世界が広がったのか。少し理解に苦しむが、後者と理解すると、ボクは知人の女性を思い出す。その女性は、お手伝いさんがいるようないいところの奥さんです。ところが60数歳でご主人を亡くされる。吉田さんと同じである。すると生活が一変したようです。商売は止める、世間にも出なければならない。やっているうちにどんどん世界は広がる。もともと能力はあるのですから、いろいろな役が回ってくる。趣味の世界も広がる。そして今まさに「多くのことを楽しむことができています」という状態になっている。早くご主人を亡くされた結果、と言ってもいいでしょう。彼女の話を聞いていると、人生全く分からない、ということをつくづく感じます。彼女はボクが勝てない、と思っている数少ない女性の1人です。