前回の話の続き、剣道の稽古。
踏み込みのことです。
打突のタイミングで、右足で床を踏み込みますが。
これに関して、「強く踏み込めっ」という話をよく聞きます。
右足で床を「どんっ」と大きな音を立てて踏み込めば打突も強くなる、と。
でも、それって違うんじゃないかな~、と思ってます。
強く踏み込むことを目的にしたらダメなんだと思います。
結果として「強い踏み込みになる」「強く踏み込んでいた」となったほうが良い、と考えます。
剣道も競技性が高められているので、筋力が強いほうが良い、筋力が強く働いているのが良い、とされがちです。
でも、筋力に頼って、強く蹴ろう、強く振ろうとして突っ込んでいくことになる。
そうじゃなくて、重いものを手に持って、それを前に差し出していくかのように、体の重心をスッと前に運ぶ。
そんなイメージ。
左足の拇指丘で体を支える、結果として踵がやや上がる。
「ひかがみ」が張ることで、体重が足の骨で支える。
股関節がなめらかに動くことで体が前に進む。
右足も股関節をなめらかにして前に「振り出す」。
右足の着地と同時にするイメージで打突する・・・
これだと、床を蹴らなくていい。
右足で床を強く踏む必要はない。
「踏み込む」って、右足の力で床を「どんっ」と踏みならすことではなく、前進する体重を右足で受け止めるんですが、目的は重心移動を竹刀に伝えるため。
強い踏み込みっていう言葉、筋力の解釈になりがちなように思えます。
「強く踏み込む」のではなく、重心操作で体重を前に運ぶ。
「強く蹴る」のではなく、体重を左足(理想的には筋肉でなく骨に)乗せる。
関節の柔軟な回転で体が進んで、右足の着地する・・・
言葉にすると、舌足らずで言い尽くせていないんですが、こんなイメージを持ってます。
ちょっとつまずいた、
この瞬間は誰でも、自然にこの動作をしてるんです。
だから、誰でもできるはずなんです。
つまずいた瞬間って、「倒れまい」としているように感じられますが、体がやっていることは「倒れる、倒れそうな方向に動き」、足を前に出そうとするんですね。
いってみれば、つまずいた瞬間に「積極的に倒れようと重心移動をしている」。
柔道や合気道では、その出そうになる足や体の動きをさらに制してしまう。
すると技をかけられた人は飛ぶしかなくなっちゃうんですね。
それが「投げ技」。
筋力で投げ飛ばす技じゃないんだと思います。
剣道の踏み込みも、本来は、こういった重心移動の結果できることだと思います。
「強い踏み込み」というお話を聞いて、それをやってみようとする人の様子を見ると、その人の体重が床をとらえるよりももっと大きな力を出そうと無理している場合をよく見ます。
「強い踏み込み」を目的にしちゃうからですね。
無理な動きになる。
一番顕著になるのは右膝を高く上げてしまう。
結果、体が起きてしまい前に出られない。
それを前に出ようとするから左足で蹴ることになる。
強い打突は、スムーズで素早い体重移動で実現できるはず。
これを目標にするべきで、「強い踏み込み」を打突の要素にすべきじゃない、ってことでしょうね。
と、まぁ、理屈を述べる私も
「打ってやろう」「打たれる前に打ってやる」と欲や邪念が出てくると、床を蹴って前に出ちゃったりする。
あっ?今の良かったかも
と感じるときは、床を蹴った実感はないし、強く振った感覚も無いし、その一方で打突も決まって、竹刀の物打ちに体重が伝わっている。
「出た」のではなく「うまく出られた」、結果として「出ていた」と。
参考動画
剣道じゃありませんが、7:35付近から