カスカウィン蒸留所を訪問して、改めて学んだこととして、テキーラの製造には、「原材料(アガベ)」「人の手」「エリアの水」というシンプルな要素しか必要ありません。
その分、これらの要素に注がれる情熱と管理が、最終的なテキーラの品質に直結します。カスカウィン蒸留所では、アガベの選定から製造プロセス、保存方法まで徹底したこだわりを持ち、テキーラ本来の魅力を追求しています。
以下に、カスカウィンが実践する製造工程と保存のポイントを詳しく紹介します。
≪テキーラづくりの詳細なプロセス≫
1. アガベの糖度(ブリックス)の管理
アガベの糖度(ブリックス)は、テキーラの品質を左右する重要な要素です。
平均的な糖度は34~35度とされていますが、特に高品質なアガベでは42度に達することもあります。
一方で、糖度が20後半以下ではアルコール生成の効率が低く、品質も安定しません。
カスカウィンでは、アガベの糖度を細かく管理し、最適な熟成タイミングで収穫することで、最高の風味を持つテキーラづくりを実現しています。
2. 自然な成長と収穫のタイミング
農薬や化学薬品を使用せず、自然な環境で育てたアガベは、サイズや熟成度にばらつきがありますが、それこそが自然の本来の姿です。それでも品質が低い場合、混ぜ物を使用する調整が必要になることもありますが、カスカウィンではアガベの品質管理を徹底し、100%アガベテキーラとして純粋な製造を行っています。
熟成が進むとアガベの球形部(ピニャ)の一部がマンゴー色になるなど、熟成度を見極めて収穫することで、アガベ本来の風味を最大限に引き出します。
3. 加熱
カスカウィンでは、テキーラの純度を追求するため、以下の手順で加熱作業を行います
マンボステリアを3日加熱、その後3日熱を冷まします。
さらに12時間×2回(計24時間)冷却し、4日目に引き出して削除。
全工程で100%タワー削除を実施することで純度を保ちます。
4. ローラーミル
アガベの圧搾には2つのローラーミルを使用します:
最初は高めの凍度で圧搾を開始。
次に低めの凍度を設定し、繊維やジュースの質を調整します。
5. 発酵
発酵工程では、槽の材質や繊維の使用方法によって異なる風味を引き出しています:
70%ステンレス、30%コンクリートの発酵槽で繊維を含まない発酵。
また、繊維のみを使用し、セメント槽で4日間発酵させる方法も採用しています。
6. 蒸留
カスカウィンの蒸留は、以下の特徴を持っています:2回蒸留を行い、蒸留過程での切り分け量が多い。
アルコール度数は46%から42%に調整(4%を水で落とす)。
7. 冷却なしの製造
テキーラに含まれる天然油分を保つため、冷却工程を行わない製法を採用。
冷却なしで製造されたテキーラは、オイリーでシルキーな舌触りが特徴で、品質の高さを示す証となっています。
熟成による風味と個性
8.熟成期間
各製品は、熟成期間によって独自の風味を持ちます:
レポサド:6~8ヶ月。
アニェホ:14~16ヶ月。
エクストラアニェホ:1.5~4年。
個性の違い
色素やカラメルを一切使用せず、熟成期間やバッチごとに自然な色味や風味が異なります。
限定版や特別なレシピが採用され、製品ごとに際立つ個性を楽しめます。
保存環境と品質保持
保存環境
パラフィン処理を施さないテキーラはアルコールが抜けやすく、長期保存には適しません。
常温保存が推奨され、冷凍保存は避けるべきとされています。
冷凍保存の影響
テキーラを冷凍すると香りや風味が失われる可能性があります。
冷凍されたテキーラは、ピリピリした刺激が強くなる傾向があり、常温保存の方が香りやバランスが良く保たれます。
テキーラの特徴的な味わい
オイリーでシルキーな口当たり
冷却を行わない製造による天然油分が、テキーラに独特の質感を与えています。
バッチごとの違い
製造バッチにより色や味わいが異なり、一つ一つが唯一無二の体験を提供します。
日本市場向けの特別な製品
特に日本市場では、冷却を行わない製品が高く評価され、独自の地位を築いています。
カスカウィンのテキーラを味わう
カスカウィンのテキーラは、アガベ本来の香りや丸みのある味わいが特徴で、試飲を通してその奥深さを体験することができます。また、限定版の製品も控えており、特別な一杯を楽しむ機会が待ち遠しいものです。
テキーラの本質を追求するカスカウィンの哲学と緻密な製造プロセス、保存環境への配慮を知ることで、その一杯がさらに特別なものに感じられることでしょう。
ぜひ、カスカウィンのテキーラを体験してみてください。