ハリスコ州エル・アレナルで誕生した テキーラ カスカウィン。
ブランド名の「カスカウィン」は、ナワトル語で「光の丘」や「丘の祭り」を意味し、地元文化や自然への深い敬意が込められています。
創業者のサルバドール・ロサレス・ブリセーニョ氏が1955年に蒸留所を引き継ぎ、「カスカウィン」の名でテキーラの製造を開始し、今も家族経営でその理念を受け継いでいます。地域の風土と結びついたこのテキーラは、歴史と職人技によって唯一無二の存在感を放っています。
今回は、そんなカスカウィン蒸留所を訪ね、テキーラづくりの奥深さとその背景にある産業の現状について学びました。
1. 地理的要因と原産地表示
テキーラが特定の地域でのみ生産可能な理由は、「原産地表示」という厳しい法的制約によるものです。ハリスコ州のアマティタンやテキーラなどの主要な生産地は、それぞれ独自の地理的特性を持ち、それがテキーラの味わいに直接影響を与えています。こうした地域特性が、世界中のどこでもテキーラが作れるわけではない理由につながっています。
2. テキーラの歴史的背景
スペイン人がメキシコに到来した1521年、エサトラン地域でテキーラの最古の記録が見つかっています。この記録は、テキーラの発祥地や時期についての従来の理解を刷新するものです。長い歴史の中で、産地や製法の解釈は時代とともに変化してきましたが、カスカウィンのような蒸留所はその伝統を今に伝えています。
3. アガベの品種と生産プロセス
テキーラの主な原料である「ブルーアガベ」。純粋なブルーアガベを維持することは法律で義務付けられていますが、実は自然交配の影響で他の品種が混ざることもあるそう。
カスカウィン蒸留所では、この自然と向き合いながら、最良のアガベを用いて高品質なテキーラを生産しています。
4. 市場価格と闇市場の影響
近年、アガベの市場価格は大きな変動を見せています。2022年末には1キロ31ペソという高値を記録しましたが、2023年には6~7ペソにまで下落しました。このような価格変動の背景には、闇市場(コヨーテ)の存在があると言われています。こうした市場動向にも影響されながらも、カスカウィンは安定した品質を保つ努力を続けています。
5. 製造技術と品質管理
カスカウィン蒸留所では、糖度測定やバッチごとの管理を徹底しています。その結果、バッチごとの微妙な味わいの違いを楽しむことができるテキーラが生まれています。この日は特別に複数のバッチをテイスティングする機会をいただき、自然環境や製造プロセスの違いが生む個性を体感しました。
6. 業界の課題と将来性
テキーラ産業には、法律の不備や抜け道を利用した製造といった課題が存在します。しかし、新たな歴史的資料の発見や技術の進歩により、さらなる成長の可能性も広がっています。
カスカウィン蒸留所のように、伝統を守りながら革新を受け入れる姿勢が、テキーラ文化の未来を支えているのです。
今回の見学では、ブランドアンバサダーであり、日本初のテキレロ景田哲夫さんの案内を受け、カスカウィンの歴史と情熱を深く知ることができました。
「テキーラは、人と自然がつくる芸術品」。この言葉が示すように、カスカウィンのテキーラは職人の手仕事と自然との調和が生んだアートそのものです。
次回は製造やブランドのこだわりへつづく
このレポートは 第1弾 として、テキーラの背景や産業構造についてご紹介しました。
次回のレポートでは、カスカウィン蒸留所の製造工程やブランドの細やかなこだわりについてさらに深く掘り下げていきます。どうぞお楽しみに!