エラドゥーラ蒸留所訪問記:アガベや畑のこだわりと環境保全への取り組み | 目時裕美ブログ「Happy Drink Life」

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アマティタンのエラドゥーラ蒸留所を再訪問!
エラドゥーラ蒸留所は、1870年創業。150年以上もの間、伝統を守り続けている特別な場所です。
コロナ以降、一般公開ツアーが中止されている中、今回特別に訪問の機会をいただきました。

アシエンダ(大農園)と歴史
1700年代、この場所は森だったそうです。「アマティタン」という地名も、アマテという木の名前に由来しているとか。現在でも、5~6世代にわたる家族が住み込みで働き続けています。


今回、ツアーのアテンドをしてくださったのは、テキーラトレーニング担当のサウールさん。 
お父様の代から16年間この蒸留所で働き続け、お父様が交通事故で亡くなった後はシニアホストとして活躍されています。

彼の魅力は、深く正確なテキーラの知識とそれをわかりやすく伝える力。どんな質問にも的確に、丁寧に答えてくださる姿に感動しました。
情熱を持って語る姿から、エラドゥーラの伝統と品質への誇りが伝わってきます。

サウールさんを通して、エラドゥーラの伝統、情熱、そして家族の絆を深く感じることができた貴重な体験。この特別な機会を心から感謝します!

エラドゥーラ蒸留所は、テキーラの品質向上と環境保全に力を注いでいます。自社農園で育てられるアガベは、火山性のミネラル豊富な土壌と海抜1,000メートル以上の標高という厳選された条件で栽培されています。収穫時には糖度計を使用し、糖度が最低31%に達しているか確認。この高い糖度が、100%アガベテキーラの品質を支えています。

収穫は「ヒマドール」と呼ばれる熟練の職人が担当します。彼らは専用の刃物「コア」を巧みに操り、アガベの葉を丁寧に削ぎ落とし、休憩部(ピニャ)を収穫します。この作業は経験と技術が求められ、テキーラの風味に直接影響を与える重要な工程です。


削ぎ落とされたアガベの葉は廃棄されるのではなく、堆肥として再利用されます。この堆肥を土壌に混ぜることで、土壌の多孔性が向上し、水の浸透性が高まり、アガベの成長を助けます。このように、アガベの葉は循環型農業の一環として活用されています。

また、2008年から環境に優しい製造方針を実施し、2015年にはメキシコ政府から最優秀環境施策として表彰されました。廃水処理施設を設立し、施設で発生する廃水の100%を処理。
バクテリアによる有機物の分解で生成されたメタンガスをエネルギー源として活用し、化石燃料の使用量を約19%削減しています。処理後の水は敷地内の美しい庭園の灌漑に再利用され、周辺地域の約200万人の住民のために水資源を節約しています。


エラドゥーラ蒸留所の取り組みは、テキーラの伝統と革新が見事に融合していると感じます。
土壌の多孔性を向上させる循環型農業の実践は、環境への深い配慮が伺えます。
さらに、廃水処理施設の設立やメタンガスのエネルギー活用など、持続可能な生産への取り組みは、他の蒸留所の模範となるべき先進的な試みです。

エラドゥーラ蒸留所のこうした努力が、テキーラの品質向上と環境保全の両立を実現していることに、深い感銘を受けました。

今後も、メキシコで学んだことを伝えていきたいと思います。