オアハカの伝統が息づくバロネグロの街、コヨテペックへ!工房レポート | 目時裕美ブログ「Happy Drink Life」

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オアハカの特別な土から生まれる伝統的な黒陶器「バロネグロ」。今回は、オアハカ在住の友人ナユタさんにお供いただき、日本でお会いしたカルメンさんがプロモーション担当しているコヨテペック(Coyotepec)の家族で営む工房を訪れ、その製作工程や守り続ける伝統について学びました✨


①粘土の準備
工房近くの「女人禁制」の山から採取される特別な粘土を使用。この山は村の財産で、山の神が女性であるため、男性のみが立ち入ることが許されています。昔は足で踏んで混ぜていた粘土も、現在はモーターで混ぜ、根や小さな破片を取り除き、ろ過して細かくし、強度を高めています。

②成形と乾燥
石膏型に粘土を入れると、石膏が水分を吸収し、外側だけが固まります。内部の粘土は再利用し、3日間かけて乾燥。その後、手作業で形を整え、水だけで表面を滑らかにします。乾燥中も袋に入れてから湿気を保つ工夫がされていて、丁寧な作業に驚きました!


③デザインと装飾
不要になったくしやシャンプーの蓋などを使って模様を描くなど、再利用のアイデアが光ります。ロテリアのデザインをテーマにした作品も制作しており、特にメキシコシティ向けに展開しています。職人の手作業による細やかな模様に、オアハカの伝統と現代のセンスが融合しています。


④仕上げと焼成

焼成前に表面を磨き、独特の光沢を生み出す工程が行われます。炭を塗り込む伝統的な方法で色味を整えた後、焼成されます。さらに、焼成後にはもう一度磨くという手間のかかる作業があり、この2回目の磨きが輝きの秘密だそうです。職人さん曰く、この技法は10年前から導入され、伝統に深みを加えています。2回目の磨きは「秘密の技法」で、くすんだ黒から輝く黒へと変化します。




⑤安全性と認証

アルテサニア・ドーニャ・マリアナでは、鉛を含む釉薬(ゆうやく)を使用せず、メキシコ政府認可の「有害物質不使用(libre de plomo)」の証明ロゴを取得しています。このロゴは2022年に村で唯一認められました。


実際、アメリカでは過去にメキシコ製の陶器に含まれる鉛が健康被害を引き起こし、ニュースとなったことがあります。この問題を受け、現在では鉛フリーの製品づくりが推奨されています。 


こうした背景からも、ドーニャ・マリアナの工房が持つ認証は非常に貴重で、伝統と安全性の両立を実現していることが分かります。



⑥割れた器への考え方の違い
ちなみに、日本では金継ぎなどで割れたお皿や陶器を修復し、大切に使う文化がありますが、メキシコでは割れたら土に返して、また新しい作品と出会ってほしいと言われています。このメキシコらしい前向きな考え方に、私はとても感動しました。

私も、この工房で出会った作品を日本に持ち帰る予定です。職人のママが心を込めて作ったもので、顔が見えるものに特別な魅力を感じます。お酒も、食べ物も、作品も、やっぱりそういうものが好きです。

今回、アテンドしてくれたナユタさんのチョコラテやメスカルも、きっとバロデオロで飲んだら忘れられない一杯に。
オアハカの温かい人々と文化に触れ、心が満たされた旅でした。

メキシコ・オアハカ州を代表する伝統的な黒い陶器で、スペイン語で「黒い粘土」を意味します。特にサン・バルトロ・コヨテペック(San Bartolo Coyotepec)という村で生産され、地元で採れる特殊な粘土を使って手作業で作られます。その後、酸素を制限した焼成プロセスによって独特の黒い光沢が生まれます。

元々は水を保存する壺や日用品として作られていましたが、現在では装飾品や芸術品として世界中で高く評価されています。この技術と伝統は、職人たちが代々受け継ぎ、丁寧に守られてきました。
バロネグロは、オアハカの文化と歴史を象徴する工芸品であり、その希少性は時代を経るごとに増しています。

📍アルテサニア・ドーニャ・マリアナ(Artesanía Doña Mariana)
サン・バルトロ・コヨテペックに位置する家族経営の工房です。伝統的な技法を守りながら、現代的なデザインや技術も取り入れた独自の作品を制作しています。工房では製作過程の見学や作品の購入が可能で、オアハカの豊かな陶芸文化を体験することができます。
住所: San Bartolo Coyotepec, Oaxaca, Mexico
営業時間: 月曜日~土曜日 9:00~18:00

オアハカを訪れる際は、ぜひアルテサニア・ドーニャ・マリアナに立ち寄り、バロネグロの魅力を堪能してください。