今回訪れたのは、メスカルの名門「デル・マゲイ(Del Maguey)」の蒸留所。ペルノ・リカール傘下となってから、日本人として初めての訪問という特別な体験をすることができました。この訪問を通じて、デル・マゲイが守り続ける伝統、革新、フェアトレードの精神、そして徹底した管理体制を改めて実感しました。
フェアトレード精神が息づくメスカルづくり
デル・マゲイのメスカルは、オアハカ州のさまざまな地域で、フェアトレードの精神のもとに生産されています。各村では、昔ながらの製法を大切にしながらも、設備や衛生環境を整え、作り手たちが安心して働ける環境を提供しています。
作り手の村々とデル・マゲイは、パートナーとして対等な信頼関係を築いており、村の繁栄やメスカル作りに関わる人々の「楽しく、幸せに働き暮らす」ことを最優先しています。この理念は、ロン・クーパーがブランドを立ち上げた当初からの信念であり、ペルノ・リカールグループの一員となった現在も引き継がれています。
徹底した管理体制と品質の追求
デル・マゲイでは、伝統的な製法を大切にしながらも、現代的な技術を取り入れた徹底した管理体制が整っています。
ボトリング施設では約40人のスタッフが働いており、少数精鋭で効率的に作業が進められています。その作業には一切の無駄がなく、プロセス全体が見事に最適化されていることに驚かされました。
また、施設内にはラボが併設されており、クラマトグラフ(成分分析装置)やアルコール度数を測定する設備を活用して、製品の品質が厳密に管理されています。これにより、デル・マゲイのメスカルが世界的に高い評価を受け続ける品質を確保しているのだと実感しました。
今回の訪問では、デル・マゲイで10年以上勤務するGabrielさんがアテンドを担当してくださいました。普段はサステナビリティ担当として働いている彼が、特別に私たちの案内をしてくれました。
Gabrielさんは、フェアトレード精神やサステナブルな製造の背景、管理体制の徹底ぶりについて詳細に説明してくれました。その知識と情熱あふれる案内に感動し、デル・マゲイが環境と人々を大切にするブランドであることを強く実感しました。
ロン・クーパーとの思い出
デル・マゲイの創業者 ロン・クーパー とは、2012年の彼の初来日で出会いました。当時、彼がメスカルの魅力について熱く語る姿に強い感銘を受けたのを覚えています。その後、彼の計らいでデル・マゲイの蒸留所を訪れる機会をいただき、作り手たちと交流しながら、メスカルがどのように作られているのかを学びました。この体験が、私のメスカルへの思いを形づくる原点となっています。
以前と同じ場所でのテイスティング。思い出が蘇ります⬇️当時の写真
現在、ロン・クーパーはメスカルビジネスには直接携わっていませんが、アメリカで新たなライフスタイルを送りながら、彼が築いたフェアトレード精神やサステナビリティへの取り組みは、デル・マゲイの活動の中に息づいています。
伝統的な乾杯の儀式:Stigibeu
テイスティングでは、まず地面に少し垂らして大地の恵みに感謝を捧げ、その後、サポテコ語で「スティギベウ(Stigibeu)」と声を掛け合いながら乾杯。この言葉には「健康を祝して」という意味が込められており、メスカルが文化や自然への深い敬意を表す存在であることを改めて感じました。
見学後は、近くのホテルレストランでランチをいただきました。特に、モレ・アマリージョ(黄色いモレソース)ととうもろこしのスープが印象的で、どちらも地元の食材を活かした深い味わいに感動しました。オアハカの豊かな文化と自然を感じるひとときとなりました。
今回のデル・マゲイ訪問では、徹底した管理体制、フェアトレード精神、そしてサステナブルな取り組みがブランドの中核にあることを実感しました。また、ロン・クーパーとの思い出を振り返る貴重な時間にもなりました。彼が築いた哲学が、今もデル・マゲイの根底に流れていることに感動しました。
「Stigibeu(スティギベウ)」という乾杯の言葉に込められた感謝と祝福の思いを胸に、これからもメスカルの魅力を多くの人々に伝えていきたいと思います。そして、デル・マゲイの未来がさらに輝かしいものになることを心から願っています。
デル・マゲイのメスカル、そしてその背後にある豊かな文化を、ぜひ皆さんも体験してみてください!