今回のツアーでは、初めてパトロンの畑を見学してきました。
パトロンは現在8箇所の契約農家から、アガベを仕入れています。
畑のエリアは蒸留所のあるハイランド地区アトトニルコ近郊のみに限定されています。
この地域は、バジェス地方(ローランド)と比べて高いエリアにあるので気温が低くアガベ育つのが平均的に1年くらい遅いそうで、6〜7年かけてゆっくり育てています。
ミネラルを多く含んだ赤土が特徴。
アガベは基本的に株分けで育てられ、1株から10株の子株(イフエロス)が収穫されます。
その中から良質のイフエロスを選んで購入し、雨季の前に植えると根が伸びるのが早いため、その時期に植えられる事が多いそうです。
この際に、CRT(テキーラ規制委員会)から、何株購入し、どこの畑に何株植えられたかも厳しく管理されていて、「テキーラ」になるまで、しっかりとCRT監視下にあります。
ちなみに、パトロンの場合は購入したイフエロスの何割かは育ってから基準に満たない場合もあり、使用しないことも多いそうです。
最近話題になっていますが、アガベの金額が年々高騰しており、残念ながら質の低いアガベや、栽培年数の少ないアガベを使用してテキーラを作っている…という話も耳に入ってきています

実際に蒸留所に行ってみたら、あれ??
と思うような小さくて皮がいっぱい残ったものを使っているところもあったり…
もちろん、サイズや皮の量だけで良し悪しを決めるわけではないのですが

パトロンはこういった動きを踏まえて、早期に農家ときちんと契約し、基準を満たした良質なアガベを変わらずに使用できているためブランドの質が下がったり、商品の価格が上がってしまうという事なく、消費者へ提供できています。
ちなみに、なぜ自社畑ではなく、契約農家からアガベを購入するかというと、厳しくアガベの商品管理が出来るからという理由でした。
パトロンの基準に満たないアガベは絶対に使用しないという、強いこだわりがあるからです。
自社畑の場合は、もちろん生産者によって違いますが、どうしてもセカンドラインや国内向けの安いブランドにアガベを回して使うなど、蒸留所内での消費が必要となりますが、契約農家であれば、そういった必要が一切なく、もし基準に満たないアガベを作るようになってしまえば、畑を変えるまで。
以前、アガベの葉を切り落とすバルベオと言われる作業を過剰にしていて、なるべくアガベを植える距離を狭くし、生産量を増やしている畑を見て驚きました。
パトロンは、厳しい契約内容にそってアガベを栽培、収穫している信頼できる農家としか契約していません。
実際に、ヒマドール歴25年のマヌエルさんが、パトロンで使用しているアガベと、一般的にテキーラで使われているアガベを収穫して比べて見せてくれました。
ヒマドールの仕事は、1日に決められた収穫量のアガベを収穫したら終わりです。
パトロンの場合は1日に22トン。
2つのアガベを比べると、同じように収穫しても、手前のパトロン基準とされているものは皮が薄くて、葉を落としてピニャの部分を削ると真っ白になります。
バナナが熟すと黒い斑点が出来るように、アガベの表面にはマチュアサインと言われる熟成からくる茶色い斑点があります。
この数は多過ぎてもいけなく、もし多い場合は、その部分を削り落とさなければいけません。
一方、一般的なテキーラで使われていアガベは、後方のように同じように削っても緑の皮の部分が多くのこり、この部分はテキーラにした際に、メタノールや、辛味や苦味のもとになります。
もし、この皮が厚いアガベをパトロン基準にする場合には、より深く削り、白くなるまで皮を剥くのですが、非常に手がかかるため作業も遅れ、また重さも減るので収穫量も増やさなければいけません。
1日のヒマドールのノルマを達成するためには、作業はより効率よくすべきです。
よって、パトロンで働くヒマドールには、きちんと成熟したアガベを見極めて、無駄なく収穫できる経験と知識が必要とされます。
そのほかの基準として、一般的にテキーラに使われているアガベの糖度は平均21度ですが、
パトロンの場合は平均25度。
ピエドラやプラチナなどの高級ラインには平均28度と、非常に糖度が高いアガベが使われています

この日収穫したアガベの糖度はなんと36度
糖度計を使うために穴を開けたら、ジワっと蜜が溢れ出るほどの完熟度にびっくりしました。

最後に、パトロンの畑はオーガニックではありませんが、良質なアガベを長い期間育てるためには、害虫被害からも守る必要があり、駆除のためには最低限の農薬は使用すべきとされています。
野菜のように、1年の間ですぐ収穫できるものとは違い、何年間も同じ土地で育てるアガベには様々な要素が影響するため、オーガニックだから良い・悪いとか、オーガニック栽培がブーム?ブームでない?とかではなく、ブランドごとに栽培方法にもこだわりがあるという事。
何が正しいかは、生産量の違いもありますし、それぞれのブランド・生産者が決める事で定義化はできません。
一見華やかでラグジュアリーなイメージが先行するブランドですが、実際に畑を見て話を聞いてみると、原材料への深いこだわりと厳しく管理された非常に高いレベルの基準から、ブランドへの自信を感じ、また信頼度も高まりました。
人と同じで、パッケージやイメージがどれだけ良くても、中身が伴わないブランドは、やっぱり長く愛することは出来ません。
初めて畑を訪問し、よりパトロン愛も深くなり、この素晴らしさを伝えたいなぁと強く感じました

自分の目できちんと見極める経験の大切さを忘れずに、これからも現地を訪れて勉強をしていきたいと思います。