今日は、少し先の話です。

経過観察をしていると、頭のどこかに「もし、がんになったら」という問いがあります。私も、精密検査の結果を待つあいだ、夜中まで検索し続けていました。

その「もし」の先にある治療の側で、8月に大きなニュースがありました。

膵臓がんの9割以上に共通する目印

膵臓がんの9割以上では、KRASという遺伝子に、がんを進める変化が起きているとされています(RASと呼ばれる遺伝子の仲間のひとつです)。

ここを狙えれば治療が変わる、と長く考えられてきました。けれど、薬で止めるのがとても難しい場所でした。

アメリカで、初めて承認されました

8月26日、アメリカの食品医薬品局(FDA)が、このRASの働きを止める飲み薬「ダラクソンラシブ」(製品名ラソンク)を承認しました。膵臓がんで、RASを狙う薬が承認されたのは初めてです。

対象は、転移のある膵臓がんで、すでに一度治療を受けた人、または複数の抗がん剤を組み合わせる治療が難しい人です。北米・欧州・アジアの500人が参加した試験で、これまでの抗がん剤と比べて、生存期間がおよそ2倍に延びたと報告されています。

日本で使えるようになる時期は、まだ分かりません。

アメリカの患者さんたちは、どう受け止めたか

アメリカで最も大きな膵臓がんの患者団体(PanCAN)は、承認の日に声明を出し、膵臓がんの治療でもっとも大きな前進のひとつだ、と受け止めました。試験では、生存期間が延びただけでなく、抗がん剤よりも暮らしの質がよかったことにも触れています。

試験に参加した患者さんの話も、アメリカでいくつも報じられています。点滴に通う抗がん剤とちがい、毎日、家で錠剤を飲む治療です。手の発疹や口内炎などの副作用はあるものの、毎日、気分よく過ごせていると話す患者さんもいました。

もちろん、効き方は一人ひとり違います。それでも、治療を受けながら暮らしを続けられることを、患者さんたちが喜んでいる。私には、生存期間の数字と同じくらい、そこが大事に思えました。

経過観察中の私たちにとって

この薬は、いま経過観察をしている人が使うものではありません。直接の関係は、ほとんどないと思います。

それでも、私はこのニュースを読んで、少し肩の力が抜けました。

9月に書いたように、「見つける力」は上がってきています。そこに、「見つかったあとの治療」も、少しずつ前に進んでいる。次の検査までの時間に考える「もし」の先が、2年前の私が検索していたころより、少しだけ明るくなっています。

その「次の検査までの時間」のために、「けいかろく」という場所を作りました。同じパターンの人の「その後」を見ながら、自分の記録を置いていけます。名前もメールアドレスも要りません。

記録が集まると、たとえばこんな形で、同じパターンの人の大きさが何年目にどう変わったかが見られます(画像の数字は架空のサンプルです)。

https://keikaroku.com/ameblo/news

※ 治療についての判断は、かならず主治医とご相談ください。この記事は、ニュースの紹介です。

出典

・米国食品医薬品局(FDA)「FDA Approves First-in-Class Targeted Therapy for Metastatic Pancreatic Cancer」(2026年8月26日) https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-class-targeted-therapy-metastatic-pancreatic-cancer

・ダナ・ファーバーがん研究所(試験を率いた施設)の発表(2026年) https://www.dana-farber.org/newsroom/news-releases/2026/fda-approves-daraxonrasib-for-metastatic-pancreatic-cancer-following-landmark-clinical-trial-led-by-dana-farber

・米国の膵臓がん患者団体 PanCAN の声明(2026年8月26日) https://pancan.org/press-releases/statement-from-the-pancreatic-cancer-action-network-on-the-u-s-food-and-drug-administrations-approval-of-rasonque-daraxonrasib/

・NBC News(試験に参加した患者さんの話、2026年5月31日) https://www.nbcnews.com/health/rcna346818