11月3日に、「キャベツの千切りを週2皿で、膵臓がんリスク4割減」という記事が出ていました。膵臓がんを専門にする外科医の方の連載「がんを遠ざける食べ物」の、第1回です。

一度「膵嚢胞の疑い」と言われた身には、「膵臓がん」と「4割減」が並ぶと、つい目が止まります。なので、元になった論文を読んでみました。

記事が言っていること

キャベツやブロッコリー、大根、小松菜などのアブラナ科の野菜には、スルフォラファンという成分が含まれていて、細胞や動物の実験では、がんの増殖を抑える働きが報告されている。そして2021年の米国の研究で、生のアブラナ科野菜を週1.5皿以上食べていた人は、0.5皿以下の人に比べて、膵臓がんのリスクが40%低かった。1皿は野菜で約70g、キャベツの千切り1皿が約50gなので、週2皿でその量になる。おおむね、そういう記事です。

筆者の方自身も、「これだけ食べていればがんにならない、という食べ物はない」と書いています。見出しは強いですが、本文はそこまで断定していません。膵臓がんの専門医が、スーパーで買える野菜の話を、研究を引きながら分かりやすく書いてくださっている。そのこと自体は、ありがたいと思いました。

元の論文は、こうでした

ニューヨーク州のロズウェルパークというがんセンターの研究で、医学誌Cancer Epidemiologyに2021年に載ったものです。

・同じ病院で膵臓がんと診断された183人と、がんのなかった732人に、昔の食事を質問票で答えてもらって比べた「症例対照研究」

・質問票のデータは、1982年から1998年に集められたもの

・年齢・体格・性別・喫煙・肉の量・家族歴の違いをならしたうえで、生のアブラナ科野菜を週1.5皿より多く食べていた人は、0.5皿未満の人に比べて、膵臓がんの「オッズ比」が0.60だった(統計の幅は0.39〜0.93)

・生でも加熱でも、週1皿増えるごとに7〜15%低く、いちばんはっきりしていたのは生だった

「4割減」は、このオッズ比0.60から来ています。

読むときに、押さえておきたいこと

「食べたから減った」とは言えない型の研究です。 症例対照研究は、「食べていた人に、がんが少なかった」という関連を見る方法で、原因と結果を示すものではありません。論文も「逆の関連がある可能性」という書き方です。

思い出して答えた食事です。 すでに膵臓がんと診断された人と、そうでない人が、昔の食事を質問票で答えています。病気になった人は、食事を振り返るときの答え方が変わりやすい。この型の研究には、そういう性質がつきものです。

30〜40年前のデータです。 1982〜1998年の記録を、2021年に解析しています。それ自体は悪いことではないのですが、当時の食生活や診断の精度は、いまとは違います。

膵嚢胞やIPMNを見た研究ではありません。 調べているのは「膵臓がんになったかどうか」で、嚢胞が大きくなるか、IPMNががんに進むか、は対象外です。キャベツで嚢胞の経過が変わる、とは、この論文からは言えません。

私の受け取り方

膵臓のことで検索すると、暗い話ばかりが並びます。そのなかで、「自分で今日からできること」を、こうして明るく示してもらえるのは、素直にうれしい。待つ時間の長い病気だからこそ、台所でできる小さなことがあるのは、支えになります。

生のキャベツや大根を食べることに、害はまずありません。好きなら、週2皿増やすのは気軽にできることです。私も、千切りを一皿、足してみようと思っています。

ただ、それは検査の代わりにはならない。嚢胞の経過は、主治医と決めた間隔の検査で見ていくものです。そして逆に、「食べてこなかったから嚢胞ができた」と自分を責める材料にもならない。この研究は、そういうことを示していません。

見出しの「4割減」だけを取り出すと大きく見えますが、元の論文は「関連があるかもしれない。生で食べることは、変えられる生活習慣のひとつ」という、控えめな結論でした。そのくらいの距離感で受け取るのが、ちょうどいいと思っています。

食べ物の記事は、これからも出続けます。見出しの数字を見たら、「どんな研究か」「原因なのか関連なのか」「嚢胞を見た研究か」の3つを確かめると、少し落ち着いて読めます。

出典

・日刊ゲンダイDIGITAL「(1)『キャベツの千切りを週2皿』で膵臓がんリスク4割減」(2026年11月3日)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/health/395106

・Morrison ら「Cruciferous vegetable consumption and pancreatic cancer: A case-control study」Cancer Epidemiology 2021(PubMed)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33714902/

・同じ内容を、サイトのニュースにも置いています

https://keikaroku.com/news/cruciferous-vegetables-pancreatic-cancer