このブログを休止する前、最後に書いたニュースは、2025年5月21日の記事でした。
富士フイルムの「超音波内視鏡で膵臓がんを見つけるAI」が承認された、というニュースです。膵臓を見守る技術に光が差した、と書きました。
それから1年4か月。あのあと、どうなったのか。休んでいたあいだのニュースを、調べ直してみました。以下はすべて、大学や研究機関が公表したものの紹介です。私は医療者ではないので、ここから「だから大丈夫」「だから危ない」という話はしません。
1. CTの画像から、AIが小さな膵臓がんを見つける
今年6月、神戸大学と富士フイルムなどのチームが、CT画像から膵臓がんを見つける深層学習モデルを開発したと発表しました(2026年6月23日発表、論文は『Radiology』に6月17日掲載)。
私が驚いたのは、20mm以下の小さながんについての数字です。造影CTで、医師の平均が82.6%のところAIは98%、造影剤を使わないCTでは、医師の平均41.1%に対してAIは86%が見つけられたと書かれています。
この研究のもうひとつのポイントは、AIが「腫瘍そのもの」だけでなく、膵臓の萎縮や膵管の拡張といった、間接的な手がかりも一緒に見ていることです。膵臓の検査でよく言われる「主膵管が太い」「尾側が萎縮している」というあの所見です。
ただし、発表には「実際の臨床現場への導入が次のステップ」とあります。いますぐ、どこの病院でも使えるわけではありません。
2. 超音波内視鏡(EUS)のAIは、承認を通った
私が最後に書いた富士フイルムのAIは、2025年5月に承認を取得しています。超音波内視鏡の検査中に、膵臓の「疑わしい部分」をリアルタイムで画面に示して、医師を支援するソフトウェアです。
EUSは、受けた方ならご存じのとおり、決して楽な検査ではありません。あのつらさが、より確かな結果につながるのなら意味がある。そう思いながら、当時の記事を書いていました。
3. 血液で見つける研究が、いくつも動いている
血液での早期発見の研究も進んでいます。どれもまだ研究段階で、明日から受けられる検査ではありません。 そのうえで、紹介します。
今年5月、東京大学・理化学研究所・日本医科大学などのグループが、血液の中の酵素の働きを1分子の単位で測る方法を開発したと発表しました。膵臓がんに特有のタンパク質の変化をとらえて、早期発見につなげることを目指すものです。
今年7月には、金沢大学のグループが、血液の遺伝子の出方のパターンから、早期の膵臓がんを10例中9例(90%)見つけられたと発表しました。同じ10例を、従来の腫瘍マーカーCA19-9で見ると、見つかったのは1例(10%)だったとのことです。
この対比は、経過観察をしている方にとって、大事なところだと思います。いま広く使われている腫瘍マーカーは、早期の段階では上がらないことがある。 主治医から「マーカーだけでは判断しない」と言われた方は多いと思いますが、その理由の一端が、この数字に表れています。
名古屋大学からも7月に、約5,400種類の血液中のタンパク質を調べて新しい目印の候補を見つけた、という発表がありました。
4. 変わっていないこと
一方で、この1年4か月で変わっていないこともあります。経過観察の枠組みそのものです。
IPMNの国際診療ガイドライン(いわゆる「京都ガイドライン」、2024年)については、以前このブログでも書きました。検査の間隔や、超音波内視鏡(EUS)の所見の位置づけ、そして変化のない小さな分枝型については、5年たったところで経過観察を終了するという選択肢が示されたこと。それが、いまも経過観察の基本になっています。
上に書いたAIや血液検査の研究は、この枠組みの「中で使う道具」が増えていく話です。「いつまで続けるのか」という問いへの答えは、まだガイドラインと主治医の判断の側にあります。自分が当てはまるかどうかは、主治医に聞いてみないと分かりません。 ただ、「そういう選択肢がある」と知っていれば、次の診察で聞きやすくなるかもしれません。
調べ終えて思ったこと
見つける技術は、確かに進んでいます。1年4か月前より、はっきりと。
でも、そのどれも、いま結果を待っている人の今日には、まだ届きません。 検査の予約は3か月先で、結果は2週間後で、その間の不安は変わらないままです。
私が作っているものは、その「あいだの時間」のためのものです。技術が追いつくまでのあいだ、同じ状況の人がどう過ごしてきたのかが分かるように。
明日は、またその画面の話に戻ります。
出典
・神戸大学「AI(人工知能)を用いて造影・非造影CT画像から膵癌を高精度に検出する深層学習モデルを開発」(2026年6月23日) https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260623-67915/
・富士フイルム「膵充実性病変が疑われる領域を検出するソフトウェアを新開発」 https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/12390
・理化学研究所「1分子計測リキッドバイオプシーによる膵臓がんの早期発見の実現に向けて」(2026年5月22日) https://www.riken.jp/press/2026/20260522_1/index.html
・金沢大学「早期膵がんの90%を血液検査で検出することに成功」(2026年7月15日) https://www.kanazawa-u.ac.jp/miraichi/186612
・名古屋大学「約5,400種類の血漿タンパク質解析で膵がんの新規血液バイオマーカー候補を発見」(2026年7月15日) https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/07/5400.html
・医学書院「エビデンスに基づく IPMN国際診療ガイドライン[日本語版](2024年版)」 https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/114711
※ この記事は、公表されている研究発表の紹介です。医療上の助言ではありません。ご自身の検査や治療については、主治医にご相談ください。