幼少の頃の父親の記憶はほとんどない

大理石の灰皿が顔面を目掛けて飛んできたり

血を流して倒れる兄と親父の拳


それくらいしか思い出せない。







ある日、家に帰ると母親と親しく会話する

知らない男がいた

母親はどこか浮かれているように見えて

子供ながらに何かイケナイ雰囲気を感じた




おれは挨拶をしなくちゃいけないと思って

こんにちわ、とどこかよそよそしく挨拶すると

母「アホやな、お父さんやないの」つって。



ああ、そうかおれにも親父がいるのか

これが親父?か

どうやら失踪から戻ってきたらしかった




当時はまだ小学生だったと思う

成長の早い子供からすると

数年失踪していた父親というのは

もうほとんど完全に他人に近かった



おれはどう接していいのかわからなくて

結局親父が亡くなった今でもわからないままだ





貧乏で小さな家に暮らしていたので

自分の部屋なんてものはなくて

おれはリビングと呼ぶには雑すぎる部屋で

毛布をかぶって寝たフリをしていた



幼少からの不眠症で母親を心配させまいとする

決死の努力だった

この頃にはもう演技性人格障害も

解離性人格障害も始まっていたと思う





リビングとキッチンはカーテンで仕切られていて

父親と母親がキッチンにある小さなテーブルで

何かを話しているのが聞こえた。



どうやら父親が失踪中の心中を母親へ語っている



練炭自殺、首をつろうかなー、

いっそみんな一緒に

○○の好物に毒を盛って、、


とか。




自殺しようとしていただけじゃなく

一家心中するつもりで帰ってきたらしかった








という記憶を親父が植物人間になった時に

突然、思い出したんだ