カンパイ・ソング 11/1 後編 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



「お、お兄ちゃん子にもほどがあるだろ。」

私が無理やり笑って見せると、翔も苦笑いする。

「ほんと、そうだね。」

翔の手が玉ねぎの皮を剥く。

茶色の皮を剥かれた玉ねぎが、白く瑞々しい姿に変わっていく。

聞くか?

あのキスのことを。

本人に直接?

私に聞けるのか!?

キャベツを刻みながら、何気ない風を装って声を掛ける。

「翔は……。」

翔が、まな板の端の方に玉ねぎを乗せて私を見る。

そのつぶらな瞳を見ていると……やはり聞けない。

「い、いつから智と呼ぶようになったんだ?」

話を変える為、どうでもいいことが口を突く。

翔は気づいた時には智を智と呼んでいた。

お兄ちゃんと呼んだことはあったのだろうか?

保育園の頃は智ちゃんと呼んでいたはずだ。

キャベツを切り終え、翔の言葉を待っていると、

翔は玉ねぎに包丁を当て、じっとそれを見つめている。

「智はさ、あんな感じだから、一つ上でもあんまり気にしないじゃん?」

そりゃ、保育園児はあんまり気にしないんじゃないか?

でも小さい頃の一つの違いは大きい。

体も心も。

「だから、小学校……三年生の頃かな?智って呼んでみたんだ。」

翔が三年生ってことは智は四年生。

ギャング期と呼ばれる頃だ。

人との繋がりが見え始め、グループで行動し始める頃。

翔が玉ねぎの真ん中に包丁を入れる。

ストンと良い音をさせて玉ねぎが半分に分かれる。

「智が、ん?っていつもよりちょっと嬉しそうに笑ったんだ。

 だからそれから……智って呼ぶようになった。」

嬉しそう?

智を智と呼ぶのは私しかいない。

呼び捨てにされることで家族を感じたのだろうか。

「智は呼ばないだろ?翔のこと呼び捨てで。」

「あんまないかなぁ。でも、たまにある。」

「たまに?」

翔が玉ねぎを自分の前に並べ、私の顔を見る。

私は切ったキャベツをボウルに入れ、玉ねぎを指さす。

「そのまま繊維に沿って細めに切ればいいよ。」

翔は恐る恐る包丁を下す。

ストンと、太めに玉ねぎが切れる。

「もうちょっと細い方がいいかな。」

「これくらい?」

翔が包丁を翳したのは、5ミリ幅くらい。

「それくらい。」

また包丁を下すと、ストンと玉ねぎが切れる。

今度は斜めに入ったか。

5ミリだった幅が、下になるにつれ、どんどん太くなっていく。

「代わるか?」

聞くと、翔がうなずく。

「じゃ、翔はタレを作って。みりんと醤油。」

言われた翔が、みりんと醤油を取り出す。

「たまにって、いつ言われたんだ?」

さっきの続きが気になる。

私が知る限り、智が翔を呼び捨てにしたことはない。

「……寝てる時。」

寝てる時?

寝ている翔を起こす為に?

それは呼び捨てになってもしょうがない。

なんせ翔はなかなか起きない。

最初は笑って翔ちゃん起きてと起こしていた和美も、しまいには大声で怒鳴っていた。

「起きろ翔!すぐに起きないと智ちゃん一人で行かせるからね!」

それでやっとフラフラしながら起きていた。

一人で学校に行くのはそんなにイヤなのかと笑ったものだが……。

「起こすのに呼び捨てはしょうがない。」

「……起こさないように、小さな声で。」

翔がボウルを出して、醤油を持ち上げる。

「どのくらい?」

「二周くらい。」

答えて、智が翔に声を掛けているところを想像する。

寝ている翔がなかなか起きないのは智もよく知っている。

その翔を起こさないよう小さな声で?

何のために?

「この間……ケンカみたいになった時、智は俺が一番大事だと言ってくれた。」

そうだろう。

私も翔と智が一番大事だ。

「一瞬、有頂天になったけど……それは家族だからなんだよね。」

そうだよ、家族は何より大事だ。

「翔だってそうだろう?」

「そうだけど……。そうじゃない。」

そうじゃない?

翔は家族が一番大事じゃないのか?

もしかして、今、この間のキスの核心をついている!?

「翔は智を……。」

翔が私を見て、苦しそうに笑う。

「智を、家族だと……、お兄ちゃんだと思ったことはない。」

それはつまり……。

「初めて智を呼び捨てにした頃から、ずっと……。

 もっと前からかな?

 智を一人の人間として……好きだ。」

一人の人間として……それはまさかの……。

「オヤジは気付いてたんでしょ?俺の気持ち。

 俺が……智をそういう目で見てるって。」

翔はみりんを持ち上げ、同じように二周させる。

「一緒に暮らしてたらわかっちゃうよな。

 気持ち悪い?」

自嘲気味に笑う翔が、菜箸でみりんと醤油をまぜる。

グルグル回る黒い液体を見ていたら、勝手に言葉が口をつく。

「いいんじゃないか。」

翔が私の方を向く。

「今は多様性の時代だ。いろんな愛の形がある。」

そうだ、いろんな愛があっていい。

いいはずだ。

ただ……まさか自分の息子がとは思わなかったが。

しかも兄弟相手に!

「気持ち悪いなんて思うものか。自分の気持ちに自信を持て。」

何を言っているんだ私は!

煽ってないか?

煽っていいのか!?

「オヤジ……。」

翔が、潤んだ瞳で私を見る。

「ありがとう。」

翔は大事な息子だ。

翔が望むなら望む方向に進ませてあげたい。

だが、本当にこれでいいのか!?

これが、未来ある若者の進むべき道なのか!?

私は砂糖を取り出し、パッと入れる。

「え、そんなに入れていいの!?」

白い塊が、黒い液体の中で茶色に変わっていく。

まずい、動揺して入れすぎた。

今日の生姜焼きは、甘い。