入って来たのは兄さん。
「あ、お疲れ。」
兄さんがキョロキョロと楽屋を見回す。
「あれ?松潤は?」
「まだ~。」
相葉君がニコニコしながら兄さんを見つめる。
……てか、ニヤニヤ?
バ、バレた?
相手が兄さんだって!
メンバー内に気になる人がいるってバレてんだから、確率は1/4。
バレてもおかしくない。
ないんだけど、バレるのはまずくないか!?
「リーダーも遅かったね。」
「あ~、ちょっとマネージャーに掴まった。」
「へぇ~、なんだって?」
チラッと俺を見て、変な顔してニノと相葉ちゃんを見る。
「大したことじゃない……。」
また俺をチラ見。
なんなんだ?
俺に関係ある話??
「この間のおまじない……やってみた?」
ニノが話を変えるように、食い気味で振る。
でも、ニヤニヤ。
俺と兄さんを交互に見て。
おまじない?
おまじないって何の?
それ、俺に関係ある?
「やってみたけど……。」
また兄さんがチラッと俺を見る。
あ、俺じゃま?
じゃまってこと?
「……ちょっとトイレ行ってくる。」
「え~、タイミング悪っ。」
相葉君がトンッと自分のおでこを叩く。
え?俺、行かない方がいいの?じゃまじゃないの?
ねぇ、どっち!?
みんなの表情から、どっちがいいのか探ってみるけど、誰の顔も教えてくれない。
ええ~、おまじないも気になるし、
何より俺の話をニノと相葉君がどう受け取ったのか気になる!
相手、兄さんだってバレてないよな?
「セットチェンジそろそろ終わるよ。」
松潤がみんなを呼びに来て、相葉君とニノが仕方なさそうに立ち上がる。
俺も仕方なく立ち上がって、兄さんを見たら……。
兄さんの顔が、ボッと赤くなった。
まるで夢の中ではにかむ兄さんみたいに!
『あ。翔君、すごっ!』
そう言いながら、自分の大胆な姿を恥ずかしそうにする兄さんに!
俺の顔にもボッと火が灯る。
あ~、マジでトイレ行きたくなってきた!
「ほら行くよ、翔ちゃん。」
相葉君に背中を叩かれ、兄さんがボソッと言う。
「トイレ……いいの?」
「だ、大丈夫。」
「俺も行きたいから……一緒に……行こ。」
夢の中でも何度か言われたセリフ……。
『一緒に……イコ?』
もう我慢できないギリギリの兄さんが、俺の腕を握って哀願する姿!
やばいっ!
俺のモッコリがもっこりと……。
ちょっと猫背になって前を隠し、
「行く、トイレ、行こ。」
外国人が習いたての日本語しゃべるみたいになりながら、兄さんと一緒に楽屋を出る。
「あ、ニノ、ちょっと遅れるって言っといて。」
大声で言って振り返ると、ニノが笑ってうなずいて。
「いいよ。」
「ゆっくりね~。」
言いながら手を振る相葉君にニノがクスクス笑う。
あ~、やっぱり二人は何か知ってる!
それ、おまじないに関係ある?
俺の気になる人、兄さんだって気づいた?
聞きたいことはいっぱいあるけど、今は聞けない!
まずはトイレに行って、モッコリを……。
並んで廊下を歩く兄さんが、変な顔して俺を見る。
ハッ。
トイレに誰もいなかったら……俺ら二人っきり?
二人っきりを心配したけど、その心配は無用だった。
俺も兄さんも個室に入ったから。
ま、俺は致し方ない。
個室じゃないと収まらないもんね。
ここのは座ると音が鳴るタイプ。
こういう時助かる。
こういう時の為にこの音はあるのね。
改めて確認。
手早く俺のをいなし、ペーパーを流して身なりを整える。
個室を出ると、同時に兄さんのドアも開いて。
「あ。」
「あ。」
お互いなんだか恥ずかしくなって視線を落とす。
「兄さんが言ってくれてよかったよ。」
ほんと助かった。
あのまま本番は……無理。
ずっと腰をかがめてなきゃならなかった!
「俺も。一人で行くの忍びなかったから。」
兄さんがふにゃんと笑う。
並んで手を洗うと、いつもの穏やかな空気が二人を包む。
そうだよ、俺らの空気はこういうの!
兄さんの綺麗な指を水がすべっていく。
ほんと、綺麗な手。
物を作る指。
指……指……指……。
『翔ちゃん、ほら、舐めて。』
そう言って口に押し込まれた指。
俺のを優しく……、時には荒々しく握る指……。
ま、まずい、またしてもモッコリが……!
これはやっぱり重症じゃないか?
現実と夢が混在しだした!
何か、違う話で気分を変えないと……。
「に、兄さん?」
「ん~?」
手を洗い終え、ペーパータオルで手を拭く兄さんが振り返る。
「おまじないって何?」
兄さんの顔がボッと赤くなる。
おまじない……そんな恥ずかしいこと!?