いつか秒針のあう頃 ③ | TRIP 嵐 妄想小説

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嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。


「よ……よろしくお願いします……。」


顔を見ていられず、頭を下げる。
 

「こ、こちらこそ……。」
 

懐かしい翔君の声……。


やばい。


頭がグルグルする。


苦しい。


顔も熱くなってくる。


翔君……。


「ちょ、ちょっといつまで頭下げてんの!」


潤が抱きかかえるように俺の上半身を起こす。


「今回はウチのエースデザイナーに頑張ってもらったんですよ。」


ごまかすように、潤が笑って俺を紹介する。


翔君は……顔引きつってんじゃん。


でもさすが、すぐに顔を切り替える。


「松本さんのお墨付きなら確かですね。楽しみにしてます。」


翔君はにっこり会釈して同僚の元へ戻って行く。


歩く後ろ姿に別れた時の翔君がオーバーラップする。


泣きそうなほど……カッコいい。


「ほら、頭下げ過ぎるから顔真っ赤。」


潤が俺の頬をプニプニしながら、席へと連れて行ってくれる。


「イケメンでしょ?櫻井さん。」


なぜか松本が自慢げで、ムッとする。


「…………。」


「取引先の中でもピカイチ。」


「へぇ~。」


そりゃそうだろ。


翔君は俺が出会った中でもピカイチだったよ。


素知らぬ顔を決め込んで、さほど広くない会議室を見渡す。


俺ら以外に2組の椅子が用意されている。


俺と翔君が知り合いだと気付かない潤は、さらに翔君の話を続ける。


「社内でも社外でもモテモテらしいよ?


 あの見た目で頭もいいし切れるのに、当たりが柔らかいから。」


知ってる。


俺とは違って有名大学出なのに気取ってなくて。


そんな所に惹かれて……意を決してぶつかっていったのは俺。


それをあの柔らかさで受け止めてくれた翔君……。


「でも、いい人いないらしいんだよな。もったいない。」


「……いない…の?」


あれから一年も経ってるのに?


潤がちょっと変な顔をする。


「いないみたい。この間、良い人いたら紹介してくださいって言ってたから。」


本当に……いないんだ。


ホッとする自分に、心の中でパンチする。


別れたんだろ?


あのままでいられなかったのは自分じゃなかったのか!?


翔君だって!


「何一人で百面相してんの。」


また潤が頬をプニプニする。


「やめれ。」


「だったらそんな変な顔しないの。


 大野さんのほっぺた柔らか~。」


潤がニコニコしながら頬を摘まむ。


ほっぺたとか言うな!


大人の男だろ!?


「これからプレゼンだろ?準備はいいのか。」


「大丈夫。準備万端!」


やっと手を離した潤が、テーブルの上にファイルを並べて前を向く。


釣られて俺も前を向くと……一瞬、翔君と目が合って、サッと逸らされた。


やっぱり……翔君からしても、昔の恋人に会うのは気が重い?



偶然入った居酒屋。


その店に、俺の連れの友達がいて。


その友達と一緒にいたのが翔君で。


俺の鞄に付けてたストラップに興味を示してくれて。


自分が作った物だったから嬉しくて、


ここが大変だったんだ、ここをこう工夫してって話してたら、


ニコニコ話を聞いてくれる翔君にドキッとして。
 

それがたぶん始まり。


男同士だってことに悩んで傷ついて。


それでも諦めきれなくて告白したのが3年前。


驚きながら受け入れてくれた翔君。


やっぱり男同士に戸惑いながらも……二人の関係も深まって。


キスから先に進んだのは……付き合い始めて半年が過ぎた頃?


ウブだよな。


お互い相手を大事にしすぎて先に進めなかったなんてさ。


それでも晴れて体も繋いで本当の恋人同士になって。


なのに……翔君が俺に触れなくなったのは別れる半年前。


それまでは……なんとか時間を見つけて会っては体を重ねてた。


俺は……それが嬉しかったし幸せだった。


それなのに、そんな時間を作らなくなった翔君。


もちろん……会ってはいた。


会っていても……そういう雰囲気になるとフッと雰囲気を変えられて……。


翔君は……俺の、男の体に……飽きたんだと思わざるを得なかった。


だから別れを切り出した。


あのままの関係を続けていくのは……俺には無理だったから。


最後の賭けだったのかもしれない。


翔君が、身も心も俺に戻ってくることに賭けて……。


みごとに玉砕しちゃったけど。



「そろそろ始めます。」


翔君がモニターの前に立つ。

 

潤が背筋を伸ばし、上着の襟を正す。

 

俺も、懐かしい翔君の……横顔に視線を合わせた。