テ・アゲロ  the movie ⑨ scene6 | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



二宮はガードレールに座って、ボーっとピンクと紫が交互に光るネオンを眺めていた。

「トーマ……。」

視界が滲んで行く。

明け方だと言うのに、遠くから聞こえる男女の派手な笑い声が頭に響く。

大野の元から戻った二宮に、心配そうな顔を、笑顔に変えて両手を広げてくれたトーマ。

思わず駆け寄り、その腕の中に入って行った。

相変わらず、柔らかく抱き締めてくれるトーマの腕に、ホッと息をつく。

別れ話をするつもりだったのに。

だが、先にトーマから釘を刺された。

「カズがこのままいなくなっちゃうんじゃないかって、生きた心地がしなかった。」

ギュッと抱きしめる腕に力を込める。

「帰ってきてくれてありがとう。」

「トーマ……。」

トーマの温もりに、決心した気持ちが揺らぐ。

「これほど……カズの存在が大きくなってるなんて……自分でもびっくりしてる。」

トーマがはにかんだ笑みを浮かべる。

店では経営者として、人も客も動かすトーマ。

そのトーマの恥ずかしそうに頬を染める顔を見て、二宮の胸がギュッと締め付けられる。

「たかが一日帰ってこなかっただけなのに……。」

トーマはゆっくり二宮を離す。

「まさか、この歳で連絡入れようか悩むと思わなかった。」

「どうして?」

トーマはわざと強気な子供みたいな顔を作る。

「だって、大人同士なのに……今どこにいる?何してる?何時に帰って来る?

 なんてメール……恥ずかしいじゃん。」

強気な子供が恥ずかしそうに俯く仕草が可愛くて、今度は二宮がトーマを抱き締める。

「恥ずかしくなんかないよ。したかったらすればいい。」

「……いいの?うざいでしょ?」

「トーマなら……うざくない。」

トーマも抱きしめ返す。

「カズ……カズだけだよ。こんな気持ちになるの……。」

こんな風に思ってくれるトーマと別れる……?

そんなこと自分にできる……?

二宮は腕の中の温もりを確かめるように力を込める。

「ごめん……連絡もしないで……。」

「いいよ。帰ってきてくれたから……。」

「トーマ……。」

見上げると、二宮を優しく包むトーマの笑顔。

「だから、決して一人でどこかに行ったりしないでね。」

ゆっくりと重なって行く唇。

この温もりを手放すことなんて、自分には……。

二宮の舌が、トーマの中で蠢く。

トーマの舌も二宮のを包むように絡めていく。

「俺を……一人にしないで……。」

ズクッと二宮の腹の奥が疼く。

強いトーマが弱気な所を見せられるのは自分しかいない……。

「しないよ……。一人になんて……させない。」

二宮はトーマを押し倒すように、ベッドにもつれ込む。

「だから、私のことも……一人にしないで。」

「カズ……。」

トーマの手が二宮のシャツのボタンにかかる。

「ありがとう。」

そう言って、嬉しそうに笑うトーマを思い出し、二宮の涙が頬を伝う。

一人にしないと約束したのに……。

まただ。

また起こった……。

また……。

二宮は涙で滲むネオンの向こうに、先ほどの光景を思い出す。

目の前にあったのは男女の死体。

重なるように倒れた二人の体は、もう二度と動くことがない。

転がった手帳に挟んであった写真が、フラッシュバックのように浮かび上がる。

目の前の男女と、七五三なのか、小さな女の子が着物を着ている写真。

仲の良さそうな家族写真。

二宮はそれを忘れようと、両手で顔を覆う。

そのまま髪を撫で上げ、顔を突っ張らせる。

もう、自分ではどうすることもできない。

トーマの元にも戻れない。

夢遊病の殺人鬼?

二重人格のもう一人が人殺しをしたがってる?

金も保険証もないから病院にも行けない。

このままズルズルと知らない内に人を殺し続けんだ。

自分で自分が恐ろしくなり、叫び出しそうになる。

いっそ、始発電車に飛び込むか?

それがいい、そうすればこれ以上人を殺さなくて済む。

立ち上がり、駅の方へ向かおうとする二宮の耳に、聞き覚えのある声が飛び込んでくる。

「だから、さっきから言ってんだろ?……話を聞けって!」

こんな時間にもめ事?

でも、どこかで聞いたことのある声……。

聞こえて来る声に顔をキョロキョロさせる。

すると、一区画向こうの角で何やら円になっているスーツ姿の男達。

その真ん中にいるのは……先日会った、大野?

「だから、違う……うっ。」

大野の腹に蹴りが入る。

それを合図に男達が背から腹から大野を蹴って行く。

体をくの字に曲げ、大野が倒れ込んでも続く。

「あ……。」

思わず、声が出た二宮は両手で自分の口を塞ぐ。

この距離で、二宮の声が聞こえるとは思えない。

案の定、二宮に気付く者はおらず、大野は蹴られ続ける。

大野がビクとも動かなくなると、

一人の男が何か言い、ペッと唾を吐きかける。

男達は顔を見合わせ、大野を置いてどこかに消えて行く。

二宮は男達がいなくなったのを確認し、大野に走り寄った。