♥8
「わりぃ、今日は止めとくわ。まだ片付け終わってねぇし。」
「そっか。じゃ、また今度。」
「うん、いつでも飲めるしな。」
俺が手を上げると、翔君も軽く手を上げ、自分の部屋のドアを開ける。
「じゃ、また。」
「おう。」
翔君が部屋に入って行って、俺も自分のドアを開ける。
まだ雑然とした家の中。
少しずつでも片さないと。
そう思っても、なんとなく物足りない。
新しい部屋のせいなのか、それとも、そこまで翔君と一緒だったからなのか。
ま、いっか。
取りあえず、風呂はシャワーで済ませて、さっさとビール飲も。
温めのシャワーを浴び、汗を流してスッキリする。
パンツ一丁に首からバスタオルを下げ、冷蔵庫を開ける。
並んだ缶ビールに手を伸ばし、プシュッと開ける瞬間。
「はぁ~、いい音!」
ゴクゴクとビールを飲みバスタオルの端で頭を拭く。
水しぶきがちょっと飛んで、脇腹の辺りが寒い。
「さっさと着替えるべ。」
ハーフパンツを履いて、お腹のたるみに目が行く。
「そろそろ腹筋するかなぁ。」
自慢じゃないけど、筋肉はすぐつく。
昔はそれが嫌だった。
お腹はいいよ。
でも、足とか腕とか、見えるとこにつくのがね。
だってほら、Jr.ってみんな細いじゃん?
メンバーだって。
相葉ちゃんなんて、細いわ長いわ。
ニノはすっげぇ細かったし、松潤も翔君もちっさくてガリガリで。
なのに中身はしっかりしてて。
俺、無理だもん。
いろいろ考えてぇとか。
翔君もニノも、周りがちゃんと見えてるから回せるんだよなぁ。
頭いいし、機転も利くし。
しゃべんない俺にもちゃんと話、振ってくれて。
あ~、なんか、やっぱ、翔君と飲んどきゃよかったかなぁ。
バスタオルを洗濯機に放り込んで、リビングに戻る。
でも、今さら、やっぱ飲もうって言うのもなぁ。
ソファーに座り、ビールをグビッと流し込む。
「ぅんめ。」
自分の声がやけに響く。
みんなのこと考えたからかな?
誰かと……メンバーと飲みたくなってきた。
まだ、翔君のマンションに引っ越して来たことは言ってない。
すぐ決めちゃったからなぁ。
なんとなく……このまま内緒にしときたい気もする。
だって、ほら、翔君ちの隣なんて……翔君、追っかけてきたみたいじゃね?
いや、いいんだけど……恥ずかしいってか、なんてーか。
収録の日なんて、一日中一緒ってことで……。
…………。
やっぱ当分内緒にしとこ。
うん、その方がいいよな?
別に言わなきゃいけないわけじゃないし……。
ビールの缶の端を、ちょっと齧って顎を出す。
「ん~、やっぱちょっとホームシック?」
なに、いいおっさんが寂しくなってんだ?
でも……。
俺はスマホを取り出し、電話帳をスクロールする。
その内の一つに、よし、と決めてタップする。
「……あ~、もしもし?」
a 智が電話したのは松潤
b こちらは期間限定でした!あしからず!(笑)
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