WONDER-LOVE Ever -76- | TRIP 嵐 妄想小説

TRIP 嵐 妄想小説

嵐さん大好き♡
智君担当♪山好き♡で
皆様のブログを見ているうちに書きたくなってしまいました。
妄想小説です。腐っているので注意してください!
タイトルに愛を込めて、嵐さんの曲名を使わせていただいてます。
ご理解いただけると嬉しいです。



ドシン。

顔が何かに埋まる。

グッと深く埋まって、次の瞬間、跳ね返される。

小さな尻もちをつき、チカチカする頭を振る。

「痛……。」

何にぶつかったのかわからない。

視界のピントが徐々に合ってくる。

大きな茶色い物体……?

「え……何?」

少し顔を引くと、全体が見えて来る。

茶色い物体は大きな縞々になっていて、その中央から長い何かがゆっさと揺れる。

「尻尾?」

ノアは手でその揺れるものを突いてみる。

「ぶつかっといて、謝りもなしか?」

物体の向こうから低い声がする。

そっと、回り込んでみると、大きな細い目と視線がぶつかる。

細い目の端がキラッと光る。

「うわっ。」

ノアの10倍はあろうかという大きな猫。

顔だけでも3倍以上ありそうだ。

「あなたは……誰?」

大きな顔がさらに湾曲する。

「俺の名前はいっぱいあってな……。」

「イッパイアッテナ……?」

大きな口が、三日月のようになる。

「黒い猫はみんな同じことを言うんだな?」

大きな口が、ガハハと笑う。

「みんな……?」

ノアが首を傾げる。

「まぁいい。俺の名前はたくさんあるんだ。

 だから、どれが名前かわからない。」

「わからないの?」

「ああ。」

大きな顔が、少し柔らかくなる。

「で、お前は何と言うんだ?」

あ、と思ったノアは、キチンと前足を揃える。

「僕はノア。」

ノアが笑顔を浮かべると、首の鈴がチャリンと鳴る。

「ねぇ、おじさん、この辺で白い猫見なかった?」

「白い猫?」

「うん、毛が長くって、青い瞳で綺麗で可愛いの。」

大きな顔は、ん~と首を傾げる。

「知らねぇな。」

「そっか……。」

しょぼくれるノアに、大きな顔がクイッと顎を振る。

「着いて来な。猫仲間に聞いてやるよ。」

「ありがとう!おじさん!」

「おじさんはやめてくれ。」

「え……。」

ノアは、失礼なことを言ったのかと、ビクッとする。

「そうだな……最近気に入ってる名前がある。

 俺のことは虎次郎と呼んでくれ。」

「トラジロウ?」

「そうだ。虎次郎だ。良い名だろ?」

「う、うん!」

どの辺が良い名前なのかわからなかったが、とりあえずうなずく。

地獄で虎次郎なんて名前、聞いたこともない。

「虎次郎さん……よろしくお願いします。」

ノアが頭を下げると、虎次郎が立ち上がる。

その足に、その体が乗ってるのが不思議なくらいアンバランスな体が、

ゆっさゆっさと揺れ、ノアの前を歩く。

慌ててノアも後に続く。

「どこ行くの?」

「まぁ、いいから着いて来な。あそこなら、昼間でも誰かいるだろ。」

虎次郎は角の道を右に曲がる。

「あそこ……?」

ノアは小走りで虎次郎の隣に並ぶ。

「ああ、この時期、昼寝にはうってつけだ。」

虎次郎が大きな体をゆっさゆっさと揺すって歩く。

ノアは遅れないよう、できるだけ早く足を動かす。

「ねぇ、おじ……虎次郎さん?」

「ん~?」

通りすがりの人間が、二匹の猫を不思議そうに目で追う。

「僕……喉乾いた。」

虎次郎が立ち止まる。

「水が飲みたいのか?」

「うん。」

ジュースでもいいけど。

ノアは思っただけで口にはしない。

「じゃ、先にこっちだな?」

虎次郎はクイッと体を曲げ、家と家の間の細い路地に入って行く。

「え、虎次郎さん?」

路地には太陽の光も届かず、薄暗く湿っぽい。

そんなところを、空き缶やレジ袋を避けることもなく、歩いていく虎次郎。

ノアは空き缶らを、ピョンピョン飛びながら避ける。

ヌルッとした土の感触が気持ち悪い。

ガサッと目の前を何かが横切る。

「虎次郎さんっ!」

ノアの体が跳ねる。

「ははは。ネズミだよ。猫がネズミに怯えてどうする。」

「ネ…ズミ……。」

虎次郎は振り返りもせず、路地の終りに向かって歩いて行く。

ノアも仕方なく、ビクビクしながら虎次郎を追った。