69は読んだ?続けてUPしてるよ~!
「ブランの婚儀はこいつ……悪魔番号№0617……。」
帝王様が凪に視線を投げる。
「はい。悪魔番号№0617改めまして、和とお呼びくださいませ。
和とは、なごやか、おだやかと言う意味を持つ名でございます。
私のように……いえ、私以上に、天界ともおだやかに
地獄を発展させてくれることと思っております。」
№0617が謙虚に礼の形を取る。
「どこがおだやかだ?」
帝王様のヤジを無視して、凪が和を促す。
「和でございます。よろしくお願いいたします。」
和が短く挨拶し、帝王様が、ふんっと鼻を鳴らす。
「こいつが婚儀を執り仕切る。以上だ。」
帝王様は肘掛に肘を付き、その手に顎を乗せ、めんどくさそうに和を見る。
「で、では!」
ノアが大きく顔を上げる。
「ブランは……その日からアスタロト様の元へ……?」
「いえ……。」
答えたのは和だ。
「ブラン様もノア様も、徐々に慣れてもらう為、まずは来週3日間、
ノア様は天界へ、ブラン様はアスタロト様の元へ行って頂きます。」
「3日……。」
「はい。徐々に期間を長くし、継承後はすぐにそれぞれの生活が始められるよう、
準備を行っていきます。」
「悪魔君……。」
ノアの瞳が揺れる。
和も申し訳なさそうにノアとブランを見る。
それを見ていた帝王様が、呟く様な低い声で言う。
「凪はそれらを見守り……人間に転生する。
ノア、お前の手で転生させろ。お前の最初の再生だ。」
「凪様……。」
ノアが不安そうに凪を見つめる。
「それが凪の願いだ。」
帝王様の声が、いつになく憂いを帯びる。
凪が柔らかい顔で笑う。
「ノア様に転生させて頂けるなど、凪は幸せでございます。」
凪の銀の髪が揺れ、深い緑のピアスがキラッと耀く。
「僕が……。」
「そうだ、お前の最初の仕事だ。」
「失敗したら……。」
ノアの不安げな声をよそに、帝王様は楽しそうに笑う。
「失敗したら、凪はまた地獄で働くか?」
「ほっほっほ、ノア様は失敗などされません。
もし仮に失敗したとしても……本来あるべき姿に戻るだけでございます。」
「ドラゴンにか?」
「はい。私は人間界で、竜として暮らします。」
「そんなに……人間界に行きたいのか?」
凪は笑って帝王様を見上げる。
「それが……私の最初で最後の我が儘でございます。」
凪が深々と頭を下げると、帝王様もそれ以上、何も言わなかった。