「翔君、ほら、起きろ?」
ん、んん~~~っ。
「飯!朝!仕事!」
智君の……声……。
もっと……聞いてたい……。
「起きねぇと、遅刻すんぞ?」
蒲団が剥がされ、縮こまる俺。
でもまだ目は開けない。
もうちょっと……智君の声聞きながら寝かせて……。
「起きねぇの?翔君!」
起きない……起きたら智君の声……聞けなくなっちゃう……。
智君が帰って来たの、全部夢でしたって言われそうで……。
そう思うと、目が開けられない。
突然、耳の穴に息が当たって、背筋がゾワッとする。
「うわぁ~っ!」
思わず飛び起き、布団を引き寄せる。
「んははっ。起きた?」
蒲団を抱きしめる俺を見て、智君がゲラゲラ笑う。
「智君……。」
「ほら、飯食お。」
智君の手が俺の蒲団を剥ぎ取る。
「ああ~っ。」
追いかける俺の手はゆっくりで。
「来ないと一人で食っちゃうぞ?」
俺の部屋を出てく智君の背中をぼぉーっと見つめる。
智君……帰って来てくれたんだ……。
智君がいる朝……。
俺と智君……。
ぼぉーっと考えてた頭が徐々に覚醒してく。
「はっ!待って、智君っ!」
急いでベッドから下り、智君を追いかける。
一人で食べられちゃったら……楽しみ半減!
智君の迎え舌見逃しちゃう!
写真に撮れないんだから、目に焼き付けないと!
「待って~っ!!」
向かい合ってご飯を食べて。
温かいご飯と美味しい味噌汁、智君の迎え舌を堪能して……。
今はソファーでコーヒーブレイク中。
智君が起こしてくれたから、そんな時間も味わえる。
「智君さ……。」
「ん~?」
「俺のインスタ見つけた時……何検索してたの?」
「え?」
ビクッと肩が揺れる智君。
あれ?聞いちゃいけないこと?
「別に……。」
智君の視線がマグカップに落ちる。
「俺には言えない……?」
「……言えない。」
そう言ってそっぽを向く智君。
え?俺には言えない?
どゆこと?
俺ら、付き合ってるんだよね?
なのに、隠し事?
それはないでしょ~っ!
「智君……。」
俺には教えてくれないの?
ってことは松潤関係?
それとも……。
じとーーーっと、横目で智君を見る。
「そんな目で見んなよ。」
智君の手が俺の頬を押して、視線を逸らそうとする。
「だって……。」
「だってじゃない。」
智君は少し頬を膨らませ、俺から顔を背けると溜め息をつく。
「はぁ……、翔君の写真を探してたんだよ。」
写真?……俺の?
「ちょっと前に出た雑誌の翔君が……ご……きで……。」
え?なんて?
俺が耳を傾けると、頬を染めた智君が、ぎゅっと目を閉じて言う。
「雑誌買いそびれたから!画像、探してたの!」
雑誌……?
……画像?
俺の……?
俺が自分を指さして智君を見ると、顔を赤くしたままの智君が、口を尖らせてうなずく。
「櫻井翔、写真って検索したら……あれが出て来て……。」
あれってインスタだよね?
って、今はそこじゃない。
智君がなんで俺の画像探してたのか?
「画像……どうして?」
観念したのか、赤い顔の智君が俺を見て言う。
「すっごい好きな写真だったから!」
すっごい……?
「でも、恥ずかしくて買えないじゃん?
女性誌だし、メンバーの載ってる雑誌なんてさ……。
松潤に欲しかった雑誌が買えなかったって言ったら、画像検索すれば?って。」
すっごい……好き?
「スマホに入れとけば、いつでも見れるし、
メンバーの写真持っててもおかしくないじゃん?」
口を尖らせたままの智君。
智君も……。
「俺と一緒?」
「違う!俺は一人で楽しみたかっただけ!」
顔を赤くしながら怒って、そっぽを向く智君。
……可愛い~っ!
「智君っ!」
「わっ、ばか!よせっ!」
こっちに向かせようと肩を掴む俺を智君が振り払う。
その手を掴んで、智君の顔を覗き込もうとしたら、
逆にソファーに抑え込まれた。
俺の上に乗っかって、じっと俺を見る智君。
まだ顔は赤いのに、俺を見てクスッと笑う。
「もう……我慢しないからな?」
俺の上に落ちてくる智君の顔……。
唇が重なって、ドキッと心臓が鳴る。
柔らかい唇が離れ、智君の前髪がパサッと落ちる。
男前な智君の男臭い顔。
俺は智君の肩を掴んで、クルッと回り込む。
今度は俺が上で智君が下。
「俺も……。」
智君の唇目がけて落ちていく。
いつの間にか、自然にキスができるようになってる。
あんなに悩んだのに。
これで富士山は越えられる?
それとももっと高い壁が?
そういえば、どっちがどっちって……。
智君と舌を絡ませると、ムズムズしてくる俺の……。
智君のも固くなってる……?
あれ?男同士ってこの後……?
唇を離し智君を見ると、智君がふんわり笑う。
「翔君、もう俺から離れんなよ?」
「それは俺の台詞!
そろそろ……荷物まとめて持って来れば?」
「んふふ。そんなことしたら、本当に我慢できなくなるよ?」
智君が俺の首に手を掛け、引き寄せる。
重なる唇。
柔らかい感触……。
この感覚はインスタでは味わえない……、
伝えることもできない。
伝える気はさらさらないけど。
チラッとスマホを見ると、智君の目が一瞬細くなる。
「翔君、まさかまだ……。」
「捨てた捨てた。」
スマホを開いて見せる。
今までインスタのアイコンのあった右端には、クマのマークのアイコン。
「どんな智君も……俺の心に焼き付けるから。」
「翔君……。」
智君が微笑む。
それだけで幸せを感じる俺。
男同士に拘ってたなんて、今までの俺はなんてバカだったんだ!
おっさん同士だろうが、こんなに幸せで、こんなに気持ちいい……。
「やばっ、翔君時間っ!」
智君が俺を跳ね除ける。
「やべっ。」
俺も時計を見て慌てて起き上がる。
「俺、先に洗面所使うから。」
「俺も準備~!」
二人、一緒にソファーから下りる。
着替えて、持ち物チェックして……。
準備のことを考えながら、頭半分は違うことを考える。
やっぱり、もっかい検索してみなくちゃね。
“どっち”と“男同士が付き合ってから”の2つ!
ま、クリフより高い壁を乗り越えた俺達だから、
調べなくてもなんとかなるとは思うけどね!
END
さて、翔君、どっち問題克服できるのか?(笑)
思っより長くかかっちゃった(笑)r