「あ、なんか声掛けられてるよ?」
「声くらい掛けられるよ。人間だって、あのオーラ、感じないわけないじゃん。」
「そうだよね。……ちょっと目立ちすぎる人選んじゃった?」
「かも……。」
二人は顔を見合わせる。
「でも渡しちゃったんだからしょうがない!」
「うん、あの人って決めたんだから!」
二人はまた男に視線を戻す。
「ね?あの四角いの、何?」
ノアが視線を男に合わせたまま聞く。
男が小さな四角い物体を翳して何かしている。
「ああ、あれ?人間界で流行ってるらしいよ。
あれで写真を撮ったり話したりできるらしい。」
「写真?話?」
「うん、人間は僕達より記憶力がないから、僕達みたいに頭の中に残しておけないんだよ。
あれで写した写真を見て思い出すんだ。」
「ふ~ん。」
ノアが感心したようにうなずく。
「それに、頭の中で会話もできないから、
遠くにいる人と話をするのにあの機械が必要らしい。」
「それは便利だよね?僕達だって、すっごく遠くだと話せないじゃん。」
「そうだけど、あの機械には中継地点にアンテナが必要で、それを至るところに作らないと
繋がらないんだ。地獄と天界にそれを作るのは難しくない?
あんま必要ないし。」
ノアは地獄のみんなを思い出す。
№0830も№1224も全く必要なさそうだ。
№0617は何考えてるかわからないとこあるけど……。
でも、めんどくさそうなのは嫌がりそう。
ママンと帝王様が離れるなんて考えにくいし、
凪様とウリエル先生は……そんなにコストがかかるのに、できるのはそれだけ?
って呆れそう。
「うん、僕達には必要なさそう。お話する時は、やっぱり会って話したいしね?」
「うん。天界へもバベルの塔ができたからすぐだし。」
「うん。でも……人間ってめんどくさいね。」
「でも、工夫してるのがすごい。」
二人はまた男に視線を戻す。
「あ、なんか建物に入って行くよ。」
ノアが指さす。
「どうする?中に入る?」
「ここから見ててもいいけど……。」
ブランが面白がるように笑う。
「中、入りたいんでしょ?」
「うん!」
ノアが返事すると、ニコッと笑ったブランが飛び上がった。
「行こ。僕達も中に入って、何するか近くで覗こ。
でも、姿は消してね?」
「うん!」
ノアも飛び上がり、ブランの後に続いた。
建物の中には、ずらりと色鮮やかな着物が並んでいる。
豪華な赤い打掛や、忍者の衣装などが目を奪う。
「なんか、すごい楽しそう!」
「うん。ノア、あれ着てみる?」
「着たい~っ!」
ノアが叫ぶとパッとノアの恰好が変わる。
ノアが着たのは豪華な赤いお姫様の着物。
「うん、ノアには赤が似合うね。じゃ、僕も……。」
ブランの恰好もパッと変わる。
「うわぁ~ブランも似合う~。」
ノアが喜んでパチパチと手を叩く。
ブランは黒い花魁の衣装を身に纏い、クルッと回る。
金髪が映え、キラキラと光る。
「ブラン、超綺麗~っ!」
「ノアも可愛い~!」
「次、あれ着たい!ちょんまげのやつ!」
「僕は忍者っ!」
二人が次々に衣装を変えて遊んでいると、男も着替え、メイクをされて小部屋から出て来た。