行くツモリですよ。Jリーグ!俺たちはそのためだけに勝ち進んできたんだ。
「俺たちのフィールド ナビスコカップ編(9~17巻)」
さて、俺たちのフィールド。サッカー漫画の中でも1、2を争う傑作といって差し支えない作品だが、知名度はイマイチパッとしない。まあサッカー漫画でメジャーなのって未だに「キャプテン翼」くらいというのが現状だが。
この作品、「全34巻+外伝1巻」という構成で、小学生編→高校編→アルゼンチン留学・・・と続いて最終的には1998年フランスワールドカップまで行ってしまうという一大大河ドラマになっており、「キャプ翼」が必殺技連発という意味で「サッカー版巨人の星」なら、「俺フィー」は「サッカー版メジャーMajor」である。
連載が1992年~1998年ということで、劇中の時間軸は高校時代以降現実の時間の流れとほぼ一致し、Jリーグ開幕やドーハの悲劇、ワールドカップ・フランス大会出場など、日本サッカー界に起こった出来事をリアルタイムで取り入れていることも興味深い。(ドーハの悲劇は15巻!!)
この長編のストーリーをあらすじ的に長々と説明しても作品の魅力は伝えられないので、今回はこの作品の「俺的ハイライト」、作品のターニングポイントでもある「ナビスコカップ編(Jリーグにいくんだぁぁ編)」について語ろうと思う。
「ナビスコカップ編(9巻~17巻)」は、主人公「高杉和也」がアルゼンチン留学から帰ってくるところから始まる。帰国した和也は、かつて父の所属したJ1チーム(今のJFL)「ヤマキ自工」へと入団する。Jリーグ開幕によりサッカー界は盛り上がりを見せる一方、Jリーグ入りを逃し、J1リーグでも低迷するヤマキの選手たちはすっかりやる気を無くしていた。そしてその中にはかつてのチームメイト騎馬の姿もあった。ヤマキの選手のやる気の無さに和也は憤慨し、選手たちと対立し孤立を余儀なくされる。
Jリーグ入りを果たすためにはナビスコカップで優勝するしかない・・・
しかし和也のプレーに触発され、徐々にやる気を取り戻したヤマキの選手たちはナビスコカップで快進撃を続ける。
アントラーズの「ジーダ」にお墨付をもらう。
そんな中Jリーグ昇格に難色を示す「ヤマキ自工」の社長からJ昇格の意思が無いことを告げられてしまう。
勝っても勝っても報われない勝利。例え優勝したとしても親会社にその意思が無い限りJリーグに昇格できないという事実。しかし彼らの快進撃はやがて世論を動かし、局面は徐々に変化することとなる。
ここにはドラマがある。
当時Jリーグに入れず、そのために主力が移籍してしまったチームも多くあったわけだし、Jリーグに入れるかどうかは親会社の意思が大きくかかわってくる。その見込みが無いチームの選手たちがくさってしまうのは想像に難くない。
開幕当時のJリーグの華やかさの影に隠れたこういう部分にスポットをあてるのもセンスがいい。
「プロジェクトX」に採用されてもおかしくないよ。
いやー、好きなんだよ、この「Jリーグにいくんだぁぁ編」
何がいいかって色々あるけど、まず「Jリーグに行きたい」という思いがチームをまとめ、それが快進撃につながる展開。最初のチーム状態はホントにグチャグチャなんだけど、それが徐々にまとまってきて、個々の実力はそれほど変わってないのにチーム力はあがってくることが実感できるところ。サッカーってチームワークなんだなあってことがわかる。
博多デルフィネスのテクニシャン「コルテス」をチーム力で封じ込める
それと主人公和也の存在感。サッカーは一人じゃできないけど、一人の選手がチーム全体を変えることができるんだなあということも実感する。この相反する二つの様子のバランスが絶妙。
それとともに作者のサッカー描写の技術もどんどんと上がってくる。高校編では「これってサッカー?」って感じだったのが、ヤマキの快進撃とともに試合の描写もどんどんとかっこよくなり、J1編後半では円熟の域に達してくる。
やたらとカッコいい試合シーン!!ひとつひとつのプレーにキレがある。
そして一番好きなところは「勝っても勝ってもJリーグに入れるかどうかは、自分たちの意思ではどうしようもない」というところ。
何でそこがいいかっていうと、それは生きていく上での真実の一面を捉えていると思えるから。
「努力すれば願いはかなう」という言葉が俺は嫌いで、何で嫌いかというと、単純に「努力してもダメな時はダメ」じゃんと思うから。別に努力を否定しているわけではない。
真実はこうだ「努力すれば願いがかなう、というわけではない。しかし願いをかなえるためには頑張らないとどうしようもない」。
親会社の決定は絶対であり、選手は無力だ。そんな時選手たちは何ができるか。「プレーで語るしかない」。
現実というのは、その場の状況もあるし、時の運もある。頑張ったってダメな時はダメ。
でも、やれることをやって駄目ならあきらめもつくが、自分から折れちまうのはゴメンだよな。
興味がある人は是非読んでみてね。ちなみにこの後の展開もアツい!