“温故知新 『ALIEN』" | Handmade Movie Maker ( 『手づくり活動屋 本舗』 別館 )

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趣味も仕事も映像製作全般に携わっている男の小部屋です。
本家ブログの更新情報やクリエイター・アーティスト・俳優・タレントの方々との交流の場として使っています。





―――― 昨年の暮れ、外付けHDのひとつが故障して、マッサオになりました。

僕は「リスク分散」を考えて、複数のHDに「業務関係」「個人の創作活動関係」「資料映像・画像関係」・・・など、分類してデータを入れてあり、定期的にバックアップもとっていたのですが・・・いや~油断しました!

「個人の創作活動関係」の全データが入ったHDが壊れてしまったんです。
それも突然!

このHDには数年前から製作し続けている映画 『消滅戦街道』の全データと、次に撮りたいと思っている作品の書きかけの脚本、関連資料が入っていたので、物凄い喪失感に襲われました。

どうたしたものか・・・と思い、専門のショップに相談してみたら、内部データに異常はないので、
お金はかかるけどサルベージ(つまり「復元」)は可能ということなので、お財布には厳しかったですが、すべてのデータをサルベージして新しく買ったHDに入れ換えてもらいました。

なんせ今月は久しぶりに本格的な『消滅戦街道』のロケが予定されていまして・・・・。






しかも、次回作の脚本も近々に仕上げねばならないので、心底、ホッとしました。

自分でも呆れてしまうのですが、よほど「モノヅクリが好き」なんでしょうねえ。

『消滅戦街道』 の作業が残り1/3程度になったので、次の作品の脚本も書き始めています。


次回は・・・ミステリーもののポリス・ストーリーといったところでしょうか。

自分で組み上げたストーリーの骨子を見直しながら、そして参考になりそうな映画や本、過去に自分で撮った映像を見直しながら作業を進めて、
もう第3稿めに入りました。






本当によく見かけるネタ・・・といってはそれまでですが、料理というものは、古くからあるメニューであっても、シェフの腕前、アイデア次第で新鮮な味わいに仕上がります。

このネタを自分が料理したら、一体どんな仕上がりになるんだろう?と考えながら、書き進めています。
一種の「実力テスト」です(笑)



登場人物の感情表現、そして作品の世界観を構築する環境の表現にも出来るだけリアルな雰囲気を醸し出したい・・・と思っているのですが、リアルにすればするほど地味になってしまい、しかも説明っぽくなってしまう。
しかし、その説明がないとお客さんに真意やメッセージが伝わらない。

リアリティと「映画的なウソ」の狭間
で、けっこう悩んでます(^^;)

それに、なんせまたまた低予算のインディーズ映画・・・。
アイデア勝負で、陳腐に見えないようにしなければなりません。

毎度毎度、この繰り返しです(笑)

主人公は女性刑事なのですが、脚本を書き進めていくうちに、人物像としてはこれって最高のお手本だよなぁ!と気づいたのが、映画 『エイリアン』 の主人公、シガニー・ウィーバー演じる “ リプリー "です。

この作品を観るのは、もう何度めだろう?と思いながらも、あらためてじっくり見てみようと、DVDを引っ張り出して来ました。



『エイリアン』 “ALIEN” (1979)
リドリー・スコット監督作品。
シガニー・ウィーバー 初主演作。

『エイリアン』は1979年に製作された後、2,3・・・と続編が続き、スピンオフ作品もつくられて今に至りますが、僕はやはり第一作目のリドリー・スコット監督作品が好きです。

二作目も含む、以降の作品は、まったくの別物だと思っています。

公開当時、映画館まで観に行き、物凄いショックを受けて帰宅。
あまりにも恐ろしくて、様々な場面が思い出されて、幼児でもないのに夜中に何度も目を覚ましましたが(^^;)

それでも、また観たくなる。
何度か映画館に足を運びました。

この作品で、リドリー・スコット監督は僕の中では、
「今までに見たコトがないものを見せてくれる監督」
という存在になりました。

過去のSF作品とはまったく違う世界観・・・。
スラッとした格好良いスペースシップではなく、まるで廃工場が宇宙空間に浮かんでいるような「ノストロモ号」。
その乗組員たちは、それまでのSF映画ではよくありがちだった、キッチリとしたカッコ良い未来的なスーツや宇宙服を身にまとって活躍するのとは正反対で、作業服にキャップ、スニーカー姿。つまり、労働者。
ノストロモ号船内も、まるで機械の迷路。
暗い照明、明るく無機質な照明、したたり落ちる水やオイル、けたたましい音を立てる機器類・・・。
とにかく、いちいち怖いんです。

それでいて、単なるホラーに終わらず、異様な風格がある。
謎めいたものを含んだメッセージ性がある。

一筋縄ではいかない作品です。

今では他にも名作と言われるSFホラー作品、SFシリーズがいっぱいありますが、その多くに 『エイリアン』 からの影響や引用が見られる・・・ということに気づいている方も多いでしょう。

映画の歴史上、非常に重要な作品だと思います。

その恐怖の象徴たるエイリアン・・・通称 “ ビッグチャップ " は、それが近くに存在する、接近している、ということだけはストーリーの流れや画面の雰囲気からわかるものの、ラスト近くまで姿を現さない。

いや、その全体像がようやく確認できるラストを観ても、映画館を出た後にエイリアンの絵が描けた人が、いったい何人いたでしょうか。

リドリー・スコット監督の演出・・・「見えない恐怖」は、完璧に成功しています。

当時有名になった宣伝コピー・・・
「宇宙では、あなたの悲鳴は誰にも聞こえない」
・・・は、宣伝に偽りなし、といった感じでした。
この文言、よく考えついたものです。

思うに・・・その後に続く続編もそれぞれ独立した映画としては面白かったと思いますが、エイリアンという存在と“彼”の持つ恐怖感、見る者に畏怖の念さえ抱かせる存在感は、その後の映画で「その全体の姿が見えてしまった」段階で終わっていたのかも知れません。

リドリー・スコットはCM界出身の監督です。
彼は、CMをつくる方法論を映画に持ち込み、映画会社、プロデューサーなどと衝突しながも、妥協を許さず凝れるだけ凝った絵づくりに徹しました。
ともすれば、絵柄優先で俳優の存在をないがしろにするほどでした。

良いか悪いかは別として、その方法論が功を奏して、かつてない映画が誕生しました。
その熱意。
尊敬します。

ただ・・・もしも、です。
この頃のリドリー・スコット監督と一緒に仕事をしてくれ、と頼まれても、今の僕はマッピラごめんです(笑)

純粋にビジネスとして考えた場合、あまりにも執着心が強すぎ、ワガママで、仕事にならない。

そんな監督が成功して、ビッグチャンスを掴み、売れっ子監督になっていく・・・本当に良い時代だったんだと思います。

この映画は、僕の「教科書」のひとつで、今もよくDVDを見返しています。

今ではブルーレイ版が発売されているかも知れませんが、ディレクターズカット版も含まれた「アルティメイト エディションDVD」には、非常に丁寧なつくりのメイキングビデオが入っています。
このメイキングビデオも勉強になります。
企画の出発点。
脚本を書いたダン・オバノンと作品の複雑な関係。
起用された監督リドリー・スコットとプロデューサーや俳優との関係、確執、信頼と不信感。
特殊効果の選択、使用方法。
H.R.ギーガーやロン・コッブといった優れたクリエイターたちの作業。

監督をはじめとした多数の人々がインタビューに応えていますが、非常に興味深く、映像製作を目指す人にとっても、俳優業を目指す人々にとっても「勉強になる」発言が多いです。
本編ともども、このメイキングビデオもお薦めします。




・・・映画っていうのは、意外な「カンフル剤」になりますね!

どうしようか?・・・と悩んでいた次回作の脚本執筆が、この 『エイリアン』 をあらためて見たことによって進み始めました。

しかし、この後も思わぬドンデン返しがあって、今は予想できない方向にストーリーや人物描写が進んでしまうかも知れません。

なんともスリリング。

これだから、いくつになっても映画づくりはやめられませんね(^^)