令和、天皇、帝(mikado)、ミカドアゲハと昆虫の名前 | 昆虫漂流記

昆虫漂流記

西日本を中心に昆虫を追いかけています。✌
東へ西へ、過去に未来に昆虫求めて漂流していますが、
近年は、昆虫だけにとらわれず、自然全体から、
観察する眼を持ちたいと思いますのでよろしくお願いします。

令和、天皇、帝、ミカドアゲハと

昆虫の名前

 

本年2019年は新しく天皇陛下が即位され「令和」が始まった年ですね。

では虫の世界での「天皇」って名前は?
そう昆虫マニアならこのワードに関わる昆虫が気になる話題です。

 

ちなみにブログでは読んで飽きが来ないように手短に記載しようと思いますが、
聞き慣れない昆虫の名前や難しい学名が並ぶ事で専門的なブログだと思わずに、
名前の一部に「天皇が意味するワードが列記されてるね!」との程度でご覧下さい。

 

更に「天皇」「みかど」と云うワードから単に昆虫の名前を考えてみまが、
「みかど」と云う言葉は「帝」「御門」と漢字で書くと深い意味合いを持ちますが、
単に「MIKADO」「MICADO」の綴りでとらえ、
海外では「IMPERATOR(インペラトール)(大帝)」など様々なワードもありますので、
話を掘り深めずに上辺だけで考えてみましょう。

 

昆虫の名前は幾つかの名前で呼ばれていますが
「学名」と呼ばれる
種の命名の際にラテン語で表示され、基準となる属名と種名(小種名)の2つで表示される2名法と、
亜種を表す際に亜種名を最後に列記させる3名法で表す方法が世界共通の名前とされています。

「和名」とは
日本国内で使われ、台湾の一部でも通用するカタカナで表示される名前で和名(標準和名)と呼ばれています。

さらに
地方で呼ばれる地方名や、時代によって呼び名

変化しているのが昆虫の名前になります。
「ギフチョウ」が「だんだらちょう」「錦蝶」
「アオスジアゲハ」が「クロタイマイ」
「ウスバシロチョウ」「ウスバアゲハ」が「ニツコウシロテフ」


「ジャコウアゲハ」が「ヤマジョロウ」「ヤマジヨラウ」
(ジャコウアゲハは本土亜種、本州以南は屋久島・奄美沖縄亜種、八重山亜種、宮古亜種と現在でも多亜種に分けられているので離島では他の呼び名も沢山ある可能性があります。)
他色々~!
と名前を紹介してみました。

 

さて今回は「MIKADO」「Micado」「みかど」のワードの名前を持つ昆虫は色々と沢山見つかりますが、
1例で「ミカドアゲハをとりあげましょう。

 

標準和名 ミカドアゲハ

種名 ミカドアゲハ Graphium doson (原名亜種はセイロン産)

中華民国(台湾)では 青斑鳳蝶、銀河鳳蝶、瑤鳳蝶、帝鳳蝶
中華人民共和国では 木蘭青鳳蝶、多斑青鳳蝶、鳳蝶、瑤鳳蝶,是青鳳蝶
インド、バングラデッシュでは ミンジ(মিঞ্জি (বৈজ্ঞানিক নাম)ベンガル語

と呼ばれています。

 

学名
2名法では Graphium doson(C&R.Felder,1864)
3名法では

日本本土亜種

Graphium doson albidum(Wileman,1903)
沖縄、八重山亜種

Graphium doson perillus(Fruhstorfer,1908)
もしくは
対馬産基準

Graphium doson tushimanum (Fujioka,1981)
で表示されています。
なお日本のWikiでは四国の一部に赤斑型と黄斑型においての本土亜種と八重山亜種につての区別が記載されていますが、四国だけでなく本州においても赤紋型と黄斑型が同所にて混生し累代を繰り返して発生していますので色彩だけでは亜種区別は難しいと考えます。

 

ミカドアゲハは
一番最初の命名に関わったイギリスのジョン・ヘンリー・リーチ(色々な昆虫に命名されてるリーチ氏です)と云う人物が、最初はミカドアゲハをパピリオ属に含めてPapilio mikadoとしましたが、すでにキアゲハがPapilio mikadoとされていた為に

国際命名規約に従ってPapilio dosonが使われました。
其の後ミカドアゲハはアオスジアゲハと同じGraphiumグラフューム属に分離され現在使われているGraphium dosonとなっています。

ミカドアゲハに外観がよく似たGraphiumグラフューム属

(左からミカドアゲハ、タイワンタイマイ、アオスジアゲハ、ヨシノタイマイ)

 

使われなくなった「Papilio mikado」の学名についても述べておくと

この時代に記載されていたキアゲハ(Papilio mikado)は最初ルドルフ・フェルダーと云う人物がPapilio hippocratesと記載していましたが、後にバーゲンステッヘヤーと云う人物がキアゲハ夏型をPapilio mikadoとして別種として記載しました。
後日2つのキアゲハ同種であることから現在のPapilio machaon となっています。

日本国内の春型と夏型のキアゲハ

 

ちなみに肝心のミカドアゲハの名前の由来ですが
原色日本蝶類図鑑(江崎悌三校閲、横山光夫著1954年初版)(下に写真添付の図鑑)からは「1885年5月20日、鹿児島で初めてこの蝶を日本蝶類研究家Leech氏の功績による。」との記載のみがあります。

なお1885年は他の書物では1886年との訂正された記載もあります。
今では学名から消えてしまった「mikado」のワードですが和名はリーチが最初に提唱した此の学名の「」「御門」が由来の語源とされています。

但し、この名前の理由については、どの書物にも記載されている物はなく、天皇に献上された名前かどうかは不明です。
「ミカド」と名前が付いた色々な生き物が現在までに非常に沢山存在する事や、

当時も今も日本人の考え方においては「御門」「帝」は尊い物ですが、外国人にとっては「御門」「帝」は東洋を意味する代表的な言葉でしかなく、現在も海外の店舗名や商品名でも、気軽に使われる事例からも、名付けの理由の意味合いには難しい処があります。

 


このようなミカドアゲハの記載ように
和名や学名が分類上や命名上変更になり使われなくなった語源の場合や
地域的変異を亜種には分類せずに個別に名前を付けて呼ばれている場合もありますので整理してみましょう。

(昆虫の名前のみをとりあげます)

 

和名で使われている昆虫として

学名と和名のどちらにも「ミカド」が使われている昆虫では
ミカドテントウ Chilocorus mikado 

  (友人のミカドテントウのブログを紹介します)☜クリック

  (日本の国蝶オオムラサキ研究所)さん

ミカドトックリバチ Umenes micado

(種類の命名によってmikadomicadoが使い分けられています)(の違い

ミカドアリバチ Mutilla mikado
ミカドガガンボ Ctenacroscelis mikado
ミカド
ミンミン(黄緑変異型) Oncotympana maculaticollis mikado

(現在はミンミンゼミの変異型とされているので「mikado」のワードは学名に続かない)
  (友人のミカドミンミンのブログを紹介します。)☜クリック

  (salt-no-nikkiさんのブログ)さん

 

和名に「ミカド」が使われてるが学名には使われていない昆虫
ミカドジガバチ Hoplammophila aemulans
              (近年はHoplammophila deforme)
ミカドドロバチ Euodynerus notatus
              (以前はEuodynerus quadrifasciatus)
ミカドアゲハ Graphium doson
ミカドウスバシロチョウ Parnassius imperator
  (蝶屋さんの呼び名はインペラトールパルナシウス)
ミカドヒョウモン Speyeria idalia
  (近年はイダリアギンボシヒョウモン。別名イダリアヒョウモン)
ミカドフタオチョウ Polyura pyrrhus
ミカドホソアカクワガタ Cyclommatus imperator
(インペラトールホソアカクワガタ又は皇帝ホソアカクワガタの方が通称名)

(左から赤色系2002年、ブルー系2003年、緑色系2003年、全てニューギニア ワメナ産WILD個体)

 

和名には使われていないが学名に「mikado」が残っている昆虫
ウスバシロチョウ日本国内?亜種 Parnassius glacialis mikado
(現在は亜種には分けられていない。長年使われていない為に検索をかけても忘れられた学名なので検索Hitしないがロシア語のウイキペディアにはまだ日本産を亜種掲載されています)

 

今は学名や和名から使われなくなった昆虫
キアゲハ Papilio machaon
(以前はPapilio machaon mikado)
アカセセリ Hesperia florinda
(以前は「Padraona mikado)と云うそうです!調べて確認しようとしましたが私の力不足で未確認です。)

 

物はついでに

更に学名と和名の関係を国内だけを考えてみると
国内産の蝶には色彩や形状など外観からや生息地を名前に命名された蝶が多く存在しているのですが、
幾つかの種類は、日本独特の言葉の蝶の名前が存在している事に気付いた人もいる事と思います。

和名では
ユウレイセセリの「幽霊
(命名者が長い間名前が判らずに「正体不明な幽霊みたいなもの」から日本語で幽霊が使われている)

 

学名と和名も関連して名前を考えると
大名
ダイミョウセセり Daimio tethys
ベニシジミ日本産亜種 Lycaena phlaeas daimio

芸者
クジャクチョウ日本東アジア亜種 Inachis io geisha STICHEL


(ネット検索すると「記載をした外国人がクジャクチョウの美を日本の芸者さんに例え、geishaを亜種名とした」と書かれていますが、これら「geisha]というワードを使用した命名昆虫家4人のスティチェルやブリーク、アイスナー、ヘミングなど1800~1900年代初頭では誰も来日はしていないとの事なので、遠い国から芸者の美しさを噂を夢見て命名したのでしょう)


(ちなみに此処で記載したブリークはヒメギフチョウの異常型を腹切りharakiri」と命名した人とされています。)
Luehdorfia puziloi inexpecta harakiri

 

ウスバシロチョウ(日本国内兵庫県播磨産亜種) Parnassius glacialis geisha

 (上記添付ロシア版ウイキペディアを参照。現在は亜種には分けられていない。長年使われていない為に検索をかけてもヒットしませんがロシア語のウイキペディアには、日本産を亜種分類されて掲載されたままです)

右、兵庫県宍粟市産、左兵庫県姫路市夢前町産 (どちらも西播磨)

尚左の個体は鱗粉が非常に少ない個体。


ミドリヒョウモン Argynnis paphia geisha
(学者の見解でA. p.tsushimana Fruhstorfer,1906とされる場合も)

 

 


エルタテハ(日本亜種) Nymphalis vaualbum samurai

 

調べているときりがなく楽しむ事が出来そうですね!
少し話題の「天皇」から外れて来たようにも思えてきました。


そろそろ

この辺りで終わりにしましょう!

 

今回のブログは出典と云う点では

長野県須坂市で昆虫館を開館されている今井彰先生の「帝揚羽蝶命名譚」と云う本を主軸として参考に書いています。

書籍は201ページにわたって御書きになられていますが、このブログでは一部分しか取り上げていません。

今井先生にも読者にも誠に申し訳なく思います。

詳しくお読みされたい方は、本を購入してお願い致します。

尚、書物を、そのまま書き写す訳にはいかないので、下記に紹介する図鑑等で記載内容も再度確認し、幾つかの参照事例を付け加えさせて頂きながら私自身が勉強させて頂きました

詳しくお知りになりたい方は是非とも読まれて下さいね。

 

順に

日本原色蝶類図鑑(保育社)、原色日本蝶類図鑑全改訂新版(保育者)、日本産蝶類標準図鑑(学研)、原色蝶類検索図鑑(北隆社)、ハチハンドブック(文一総合出版)、テントウムシハンドブック(文一総合出版)、蝴蝶生態簡介(台湾墾丁公園教育解説叢書)、ジャコウアゲハ(お菊虫)と播州皿屋敷の民俗文化誌(赤松の郷昆虫文化館、播磨昆虫民俗資料館)、原色千種昆蟲圖譜(三省堂)、

   

 

    

 

 

原色千種昆蟲圖譜(三省堂)については以前に下記題目で紹介をしています。

東京産 オオクワガタ 平山修次郎コレクションと原色千種昆虫図譜、手塚治虫氏」

(東京産 オオクワガタを 平山修次郎コレクションと原色千種昆虫図譜から 戦前の記録と標本と書籍を参考に「信頼性の高い現存する東京産オオクワガタ標本」と「手塚治虫」氏を確認する。)

こちらをクリックでリンクをしておきます。

 

このような話題をとりあげたブログにはあまり出会えないのでネット検索に頼る事が出来なく難儀しましたので、
もしかすると文中に書籍からの読み込み間違い、スペルの入力間違いがあるかもしれません。

またパソコンを使用してブログを記載していますので、スマホ表示での対応が出来ていないかもしれません。

ご理解の程よろしくお願いします。
 

間違いは見て見ぬふりで~!
イエイエ!コメントにてお願いします。
長文ブログにお付き合いありがとうございました。


今年は、まだ少し早いですがこれにてブログ年納めと致します。
本職の方が年末商戦にて休日返上しなければいけません。

貧乏暇なしとは、この私の事です。
以前から年末用に準備していた書きかけのブログ記事を書き上げました。

 

 

皆さん、今年も1年間お付き合いして頂きましてありがとうございました。
コメント、メッセージ、イイネを頂いた全ての皆様にありがとうございます。
もちろんアメーバーブログ以外で見て頂いている皆様方にもありがとうございます。
来年もどうぞお付き合いの程よろしくお願い致します。
皆様と皆様の家族が、良い年越し、良い新年になりますように!


                   2019年 令和元年12月 

昆虫漂流記(てんとうむし)