借景 | 進展の消化試合

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つれづれなるままに、一人日暮らし、スマホに心もとなく向かいて、記憶にうかぶ、アホな失敗話しなどを、記したるブログなりけり。

とある本で、同じ比叡山を借景とする洛北の二つの禅寺が紹介されてあり、見比べてみたくなって出かけました。

最初の寺は、正伝寺。
それほど知られていないので、駐車場に着くと私以外居なかった。
市内にあるにもかかわらず、
山門を入ると、杉木立が迎えてくれて
静寂そのもの。

さらに、上へと登っていくと、
ようやく石段の彼方に禅宗らしい庫裏が見えてくる。
拝観料をお支払いして方丈に入って
待ち受けていた景色がこれ。


方丈は伏見城の建物を移築してきたとかで、
関ヶ原の前哨戦で戦った将兵の血天井もあります。そうした主だったものや、襖絵を見てから床に座って比叡山を眺めていると、
麓でしている工事の重機の音が響いてくる。
ふと、時計を見ると、もうすぐ昼時。
昼休みを待つと音がやみ、
鳥の鳴き声が耳に入るようになり、
自分もその景観の一部になったかのように
思いを巡らしてみた。
遥か彼方まで続くかのような眺めを、
ほぼ独り占めでした。
やや肌寒いものの、その張り詰めた雰囲気が心地よかった。

京都が好きだったデビットボウイが、
CMを京都で撮る時、
この寺でと指名したとか。
すみません、
あまりデビットボウイのことは知りません。
けど、彼はこの景観を眺めながら涙を浮かべていたというから、感性の鋭い人だったのでしょうね。
気がつけば、工事の音が再開したので寺を辞しました。

ちなみに、借景の舞台裏がこれ。


たくさんの建物があるものの、高さ制限をしているから、この景観が守られているとか。

だいぶ、贅沢な時間の使い方をしたので、
急いで、次の円通寺へ。

この寺は、住宅街の緩い斜面の上にあります。
駐車場から、少し行くと、近代的な長屋門のような入り口があり、そこから入っていきます。
昔、国語の何かの評論文に円通寺のことがあり、京都に来た時、一度来たことがあります。
けど、景観をうっすらと記憶していただけで、他のものは何も記憶に残っていませんでした。

ただ、改めて見てみると、
巨大な杉の間から覗き見る比叡山に
度肝を抜かれた。
奥深い山寺から、
雄大な比叡山をのぞむという感じでしょうか?

修学院離宮をつくった後水尾上皇は、ここからの比叡山の眺めが正面であるとして、何度も来られ、地名をとって幡枝御殿といったそうです。ただ、水を得るのが難しいので、結局、修学院離宮をつくったとか。
その後、いろいろあって禅寺となったとか。


後水尾から愛されたこともあり、書院は仙洞御所の建物の移築だとか。
このため、床下が高く離宮のようです。忍者の侵入などをあまり想定していないのかも。
それはともかく、このため、正面の生垣は160㎝を越えるとかで、書院からの視点と同じ高さになるようにしてあるとか。

また、庭の石は愛媛?あたりから運んだ海石で、石の3分の2は地中にあり、見えている部分は僅かとか。

この眺めを守るために、高さ制限の運動が起こったとか。
鳥越俊太郎氏も、この眺めが気に入って、よく来たとか。




さて、
またまた、借景の舞台裏を覗いてみると、寺の裏から見た杉林がこれ。



その向こうに広がる眺めがこれ。



遠くの山々の眺めに、
ここまで趣きを与える日本人の工夫には恐れ入る。しかも、今も守られているのだから。
1日のうちに、主に2つの寺しか見ないという、
贅沢な時間の使い方をしましたが、
正解だと思いました。


それはともかく、
舞台裏を探るのは、悪趣味だったかも。

反省m(__)m