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打ちのめされた気持ちのまま、次の日の夕方、院長先生のお話を聞くために病院に向かった。
看取りの話かと思うと足が重かった。
病院はもう診療時間が終わるというのに、まだ待合室には人が多かった。
それでも、いつも通り、予定時刻を遅れることなく院長先生が待つ診察室に呼ばれた。
院長先生からは、やはり特養からの話を受けて、退院についての変更の話だった。
院長先生のお話では、まずは、病院の方と特養とは、見解が違うということで、その説明をしてくれた。
院長先生はまず、特養からの摂取カロリーか全く足りていないという指摘について、高齢者で、しかも母はもともと体重も少ないので、必要摂取カロリーは普通の成人が必要とするカロリーより少なくても意外と大丈夫なのだという。
院長先生は
👨⚕️「口から召し上がれるようになったのですから、これから好みの物をお出ししたり、工夫すればもっと食べられるようになる可能性の方が大きいと思います。
私は看取りではなく、これからお元気になられるのではないかと思っています」
こう言われると家族は弱い。
やっぱり希望ある方に心動かされてしまう。(でも、だったらもっと早く病院で工夫して食べさせてくれれば良かったのに、とも思う)
そして、院長先生は
👨⚕️「特養は、最悪の場合を想定して厳しめにご家族に話したいのではないかと思いますよ。ご高齢ですし、何があってもおかしくない時期ですから、やはりいざという時のことを考えてしまうのではないでしょうか」
院長先生は優しくおっしゃった。
でも、さすがの私もここまで来て、あーそうなんですね、とはならないよね😞
食事のカロリーはともかく、水分量は私が聞いても少ないし、高齢者は脱水が起こりやすく、それが命とりになるから。
腕からの点滴も抜いて退院となると、やっぱり水分量は厳しいのではないかと思った。
そこのところを率直に院長先生に聞いてみた。
すると
👨⚕️「水分は、今、点滴のせいで喉が渇かない可能性があります。ですから、点滴を抜けば、喉が乾いて、もっと飲めるようになるかもしれません。
それに水を入れすぎるのも良くないですから、点滴も今日、抜いたところです。」
先生の話では、人間は枯れていくという言葉通り、高齢になり、だんだん食べる量も自然と少なくなり、水も自然と抜けていって、苦しまずに老衰を迎える形が一番だとのこと。
無理に点滴を入れ続けたりすると、亡くなる時に苦しむことになったり、水が体内にたまってしまい、浮腫がひどくなったり、悲惨な状態になるので、自分はそういうことはすすめない、とおっしゃった。
👨⚕️「お母様はこの状態で点滴を抜いて退院されれば、好きな物を召し上がって、ご家族とお話ししたり楽しく過ごされて、お元気のまま、きっと少しずつ食事量や水分量が減っていって、苦しまずに最期を上手に迎えられるのではないかと思います。」
最期. . . 当然、院長先生もそこは考えて話している。
そうだよね、母ももう93歳になった。
元気になると言っても、若い人とは違う。私は途中から、恥も外聞もなく泣いていた。これまでのいろいろなことも思い出されて、涙が止まらなかった。
院長先生は、そんな私を労り、励ますように、優しく話しをしてくれた。
もう、しているマスクが涙でグシャグシャになるほどだった。
院長先生も困っただろうが、嫌な顔一つせずにティシュの箱を渡してくれて😅、
あくまでも家族の気持ちに寄り添って丁寧に対応してくれた。
院長先生の話をまとめると
◯病院としては看取りの退院とは思わないが、特養からその状態であれば"看取り"での受け入れになるので、家族にしっかりとその旨話してほしいということだったので、今日、私に改めて来てもらって話しをしたということ
◯入院を延長したり、医療療養型の施設に中心静脈栄養をつけたまま移すことは、院長先生としてはすすめられないということ。
◯点滴を続けることは無理な延命となり、本人を苦しめることになるから、自然な形で過ごすことが本人にとっても良いのではないかということ。
◯病院にいるよりも、面会もできる特養にもどりご家族と会えたりすることが本人にとっても幸せなのではないかということ。
コロナ禍で病院は面会がどこもまだ禁止されている状況だった。
院長先生は、今の特養が看取り退院であれば毎日の面会も可能だと聞いていて、面会できた方が母にとっても私にとっても良いことだと思うと言い、それが刺激になって母もさらに元気をとりもどすのではないかとも言ってくれた。
院長先生の話は少し楽観的かなとも思ったが、でも、どちらにしても病院も特養も母の死期を頭に置いていることは確かだ。
辛くても目を背けることができない現実がそこにある。
それを私もしっかりと受け止めなきゃだめなんだよね。
(つづく)