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私が「兄貴」と呼ぶ、10歳年上の友人がいました。
元々は親の知り合いだったのですが、私が小学生高学年の頃から、時折自宅に顔を出すようになり、まだ小学生だった私の勉強を見てくれたりもしていました。
私が前妻と結婚してからは、よく三人で遊びに行きました。
兄貴は運転が好きな人でしたから、兄貴が運転、我々夫婦が同乗して出掛ける事が多かったです。東京、横浜などによく出かけました。
ラーメン屋を巡ったり、中華街で飲み食いしたり、築地にお寿司を食べに行きました。
お互いの自宅で一緒に飲んだりする事も度々あり、前妻と結婚してからのはじめの数年間は、休みの日の半分以上は一緒に遊んでいた気がします。
元々兄貴は、優しくて世話焼きな人でしたから、前妻との相性も良く、三人で会っている時にはトラブルというトラブルはほとんどありませんでした。
しかし兄貴には、三つ年上のお兄さんがおり、この方がやたらとウンチクを語るのが好きな理屈っぽい人でした。
前妻も当初は兄貴の兄弟という事で、仲良くしようとしていましたし、それなりに仲も良かったのですが、癖の強い者同士ですから、嫌な予感はしていました。
ある時、兄貴と兄貴のお兄さんと我々夫婦の四人で出かけた事がありました。
兄貴が運転する車中にて。
お兄さんがふと、私の仕事関係の事で意見を言い出しました。
ちょっと嫌な意見でしたし、相変わらずウンチクを披露したりして、ちょっとウザいなとは思いましたが、それでも私は普通に対応して、これこれこうしているので安全ですよ。問題無いです。という説明をしました。
しかし、横で聞いていた前妻は、この発言を、中傷されている、攻撃されていると感じたようです。
それで突然怒り始めました。
「うちの主人は仕事をきちんとしています!あなたは何も知らないで、そうやって主人の仕事をけなして!それを他の人にも言いふらすんでしょ!」
「いや、お兄さんは、ただ疑問に思ったから聞いただけで、別に難癖付けてるわけじゃ無いと思うよ」
と私はフォローしました。ですが前妻の怒りは収まりません。
「絶対この人、他の人にも言いふらすよ!良いの?〇〇君も、○○君もこの人のせいで来なくなるよ!あんたが困るだけだよ。私は別に良いけど」
シーン……。
車中は水を打ったように、静まり返りました。
兄貴もさすがにこの状況は庇いきれなかったらしく、ただ黙っていました。
数十分後。
全員無言のまま、私が当時住んでいたアパートに到着しました。
「良かったらお茶でもどうですか?」
いつも送ってもらったら、必ずあがってもらって、お茶を出していたので、通常通り私はそう勧めました。
「……いや、今日はやめておくよ」
兄貴はぼそっとそう呟いて、そのまま帰宅してしまいました。
兄貴とは、その後関係が気まずくなり、三人で出かける事もありませんでした。
実は前妻と離婚してから、兄貴には久しぶりにメールをしてみました。
兄貴は結婚し、お子さんもいらっしゃるようでした。
「もう一度仲良くしたいんですけど、良かったら会えませんか?」
と最後にメールしましたが、その返事はいくら待っても来ませんでした。
残念ですが、あの晩のトラブルがあってから15年以上経っているので、もう二人の溝は埋まる事は無いのかも知れません。
せめて最初のメールに、離婚した事だけは伝えておけば、兄貴も歩み寄ったかも知れませんが、あのヒステリック女がいるとちょっと……と思って、躊躇したのかも知れません。
前妻の言動のおかげで、私は多くの友人を失いました。
もしも前妻と結婚していなかったのならば、兄貴とも今頃仲良く酒を酌み交わしていたのかと思うと、ちょっぴり切ない気持ちになります。