特に目につくのが「義理の父親が子供を虐待する」というもの。
もちろん世の中には血の繋がりのないお子さんを愛し育てている男性もたくさんいらっしゃるので、全員が全員「連れ子を虐待する」だなんて思ってはいません。
そして、再婚を否定するつもりもありません。
ここでは、あくまでも「連れ子を虐待した義理の父親」という存在にだけ照準を合わせた話をします。
最近も関東のとある県で、連れ子が義理の父親に命を取られるという事件がありました。
この家庭内で何があったのか詳しくは分かりませんが、こういった事件、いつだって被害に遭うのは子供です。
ちなみに、わたしには父親はいません。
母はわたしがお腹の中にいるときに父と別れ、未婚のままひとりで出産したからです。
母は若い頃 かなり目を惹く華やかさを持っていたため、子供(つまりわたし)がいても男性から言い寄られ、よく縁談の話もありました。
しかし母は「親の勝手な争いでこの子から父親という存在を無くしてしまったのだから、私は一生この子の為だけに生きる」と答え、すべての誘いを断っていました。
また「もし結婚したとして、新しく子供ができたら、この子(わたし)の居場所がなくなるかもしれないからイヤ」とも。
母と父は、別れるときは裁判に行き着くほど激しく争い、挙げ句の果てに父は「父親もいない奴なんかどうせまともな人生になんかならない」とわたしに言い捨てたそうです。
なので、普通に考えたら母は「父親のほうが何もかも悪い」と考えたっておかしくないはずなのに、あくまでも「私にだって悪いところはあった」と、きちんと自己反省をしているんですよね。
しかも「私はこの子の為だけに生きる」「この子の居場所を守る」という強い覚悟を持っていた。
母は色々とおかしなところがありますし、人としては若干バランスの悪い人ですが、唯一「誰のせいにもせず覚悟を持ってわたしを生み育てた」というところは尊敬できる部分です。
未婚でわたしを産んだあと、結婚どころか一度も男性と食事にすら行かず、文字通り命を削ってひたすら働いてましたね。
そして29で家を建て、わたしに「父親がいないからって惨めな人生にはさせない」と言って子供部屋を与えてくれ、お小遣いも同級生の何倍もくれました。
働きすぎた母は30代半ばから自律神経がボロボロになってしまったので、普通の人はあまり真似しないほうがいい生き方ではありますが。
とはいえ、わたしはこんな母の生き様を目の前で見てきたので、親が再婚したおかげで虐待されてしまう子供の話を聞くと大変複雑な心境になります。
虐待のニュースを観るたび「もっと母親しっかりしろや!」と思ってしまうわけです。
母親以外に誰が子供を守るんだよ、と。
最初のほうにも書きましたが、決して再婚そのものが悪いとは思いません。
ですが、時々「子供には父親がいたほうがいいから再婚しなきゃ」みたいなことを言う人がいて、それは考え方が何か違う気がするんですよね。
子供に必要なのは「両親が揃ってるだけ」の形などではなく、本気の愛情と潤沢なお金。
もし再婚するとして、血の繋がりのない子供でも本気で愛してくれ、なおかつお金もしっかり稼いできてくれる男性なら話は別ですが、ただ単に「父親(という存在)がいたほうがいいから」といった安易な考えで再婚しようと思っているなら、そんなの正直やめてほしいと思いますね。
連れ子がいて再婚する場合、女としての幸せより、自分の子供が幸せになれるのかどうかで考えてほしいです。
子供がいたって、べつに男性に恋をするのは勝手です。
でも、そこに「子供のためなの」などとワケのわからない言い訳をつけるな、と言いたい。
自分が寂しいから再婚したいだけなのか、あるいは本当に子供が幸せになれる再婚なのか、真剣に自分の心と向き合ってほしいものです。
自分が幸せになりたいだけでロクでもない男と再婚しようとしたり、子供をないがしろにしようとするなら、いっそのこと施設にでも預けてくれたがよほどいい。
子供は親を選べないし、幼い頃はどうひっくり返っても親に従って生きるしかないのだから、母親がしっかり地に足つけて考えてくれないと、誰ひとり幸せになれないのです。
わたしは運良く「母親としてはまっすぐな人」のもとに産まれることができましたが、それはただの運。
親ひとつで人生が閉ざされたり開かれたりするって、運命ってなんなんだろうと考えてしまいますね。
天晶