家へ帰ろうよ | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/4/12

 

「一人の人間として生きたいの!」
 
『人形の家』でノラは凛として言い放ち家を出ました。
抑圧され、家に縛られていた女性たちは喝さいを叫び、自立への
歩みを踏み出していきました。
 
ふるさとは遠きにありて想ふもの
そしてかなしく歌ふもの
かへるところにあるまじや
 
“望郷の歌をうたうことができるのは、故郷を捨てた者だけである。
 そして、母情をうたうこともまた、同じではないでしょうか。”
 
寺山修二は、母を捨て、故郷を捨てて家出せよと青年を煽り、多く
の若者が都会へと脱出しました。
 
魯迅は、家出をしたノラはそのあと売春婦になっただろう、と断じ、
ノラの場合、家出こそは転落の始まりだったとエッセイに書いた
そうです。

 

しかし、その後次々に家を飛び出した女性たちは、転落どころか自立
への道を着実に歩み、社会での活躍の場を拡大しています。もはや
家に閉じこもって子供を産み育てている暇すらありません。
 
既に故郷は疲弊していて、子どもを養う経済的余裕などありません。
青年は、嫌でも家を出ていくしかないのです。
 
都に雨の 降る夜は
涙に胸も しめりがち
遠く呼ぶのは 誰の声
幼馴染の あの夢この夢
ああ 誰か故郷を想わざる
 
都会の家からは女性が飛び出し、田舎の家からは若者が姿を消しま
した。
母親はいそいそと勤めに出掛け、父親は残業を重ねて夜遅く帰り、
子どもはコンビニの夜間バイトで昼夜が逆転。
親子はすれ違い、夫婦には隙間風が吹いて、家族は崩壊寸前です。
 
風に向かいながら 皮の靴をはいて
肩と肩をぶつけながら
遠い道を歩く
 
僕の地図はやぶれ くれる人もいない
だから僕ら 肩を抱いて
二人だけで歩く
 
君のこころ ふさぐ時には
粋な粋な歌をうたい
君をのせて 夜の海を
渡る舟になろう
 
前クールのドラマ『最高の離婚』最終回で、瑛太さんがカラオケ
で熱唱した歌です。
ドラマでは離婚した二人が、再び元の家に戻り、また一緒に暮ら
すことになります。婚姻届は出さず、離婚したままで。
 
「家に帰ろう。温かい味噌汁が待ってるよ。」

 

少子化が深刻化した日本では、家出した女性や、故郷を飛び出し
た青年を、再び家に呼び戻す必要があるのではないでしょうか。
3世代が同居する大家族には、子育てや家事を代行してくれる物
分りの良いお年寄りが何人もいますから、安心して外で活躍でき
るというものです。
 
ちなみに、瑛太さんが歌ったのは『君をのせて』(英題は「My 
BoatFor You」)という曲です。

沢田研二さんの実質的なソロデビュー曲です。
沢田さんはかつて、『君をのせて』は、『OH! ギャル』の次に嫌いな

曲だと言っていたそうです。

しかし、最近はむしろ好きな曲に挙げることが多いようです。


高校を中退したデビュー当時の沢田さんはスリムな体型で、家出

したやんちゃな不良、とでもいった雰囲気を漂わせていました。

 

それが今ではすっかり丸みを帯び、家庭人に収まって落ち着いて
いるようにお見受けします。
曲の好みの変化はそんなところにも関係があるのかもしれません。