最底辺の資金繰り | 店舗探し.comの過去コラム

店舗探し.comの過去コラム

会員様向けメルマガに掲載された過去のコラムを掲載しています。

2012/4/3

 

世界には収入が1日2ドル未満の人が25億人いて、もっとも貧しい
11億人は1日あたり1ドル未満で何とか暮らしています。

そういう人たちはいったいどんな暮らしをしているのでしょうか。


なんとなくその日暮らしの日雇い労働者をイメージしてしまいます
が・・・。

 

『最底辺のポートフォリオ』
   J・モーダック他著 みすず書房

 

ポートフォリオとは金融機関・機関投資家などが所有する各種の
金融資産の一覧表のことですが、本書では「安全性や収益性を考え
た、有利な分散投資の組み合わせ」という意味で使われています。

 

1日2ドルの収入しかない人にとっては無縁の言葉に思えます。
しかし、彼らの日々のお金に関するやり取りをまとめたファイナン
シャル・ダイアリーから浮き彫りにされるのは、その日の収入は
その日のうちに使い切ってしまうような生活ではありません。

 

1日2ドルの収入といっても、それは毎日2ドルずつ収入があるわけ
ではありません。2ドルを超える日もあれば、2ドルに満たない日も
あるし、まったく収入の無い日も珍しくありません。

 

子供の病気や冠婚葬祭など、不意の出費にも備えなければならない
ことは彼らとて同じです。

そこで少ない収入をやり繰りして収入の一部を、手数料を払って
まで知人に預かってもらったり、日本で言う「無尽」とか「頼母子
講」に似た「貯蓄クラブ」に加入して、いざという時に備えます。


逆に知人のお金を預かったり、アングラの高利貸しともつかず離れ
ずに付き合っておくこともやめません。

 

リスクヘッジのために、資金調達の手段をなるべく多く確保して
おくための日常の振る舞いは、むしろ経営者のそれと似ています。

来月も再来月も、1年後も10年後も、一定の収入を約束された中で
生活しているサラリーマンよりも、よほど資金繰り能力に長けて
いるといってもいいでしょう。

 

発展途上国が、いったん経済発展の流れに乗るや否や、その勢いに
拍車が掛かって止まらなくなるのは、次々に現れる新興企業の
経営者が、かつて最底辺で積んできた経験を、巨額の資金のポート
フォリオにも生かせるからなのかもしれません。