アウグスティヌスの時間 | 店舗探し.comの過去コラム

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2014/3/11

「私はそれについて尋ねられない時、時間が何かを知っている。
 尋ねられる時、知らない。」

この名言を残した哲学者アウグスティヌスは考えました。

“過去とは「すでにないもの」であり、未来とは「いまだない
 もの」である。
 ならば在ると言えるのは現在だけなのだろうか。

 過去や未来が在るとすれば、それは「過去についての現在」
 と「未来についての現在」が在るのである。

 過去についての現在とは【記憶】であり、未来についての
 現在とは【期待】、そして現在についての現在は【直観】
 である。”

現在「秒」は、以下のように定義されています。
“セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間
 の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間”

そして、「メートル」は、
“光が真空中で1/299792458に進む距離”
と定義されています。

鹿爪らしく定義された「時間」や「長さ」よりも、5世紀に
アウグスティヌスが示した解釈の方がどうもしっくりきます。

古代、時間とは円環的な構造をもち、無限に反復すると信じら
れていました。

朝、日が昇り、夕方には日が沈む。そしてまた翌朝には日が昇
ります。
1日はこうして円環状に反復します。
月の満ち欠けもまた円環状に反復し、1ヶ月を刻みます。
太陽の見かけの高度が変化する周期を観察すると、1年単位で
反復していることが見て取れます。

人知を超えた大きな力が刻む時間は、常に円環状で反復してい
るのですから、古代人がこう考えるのはもっともなことです。

日、月、年。
同心円状に外側へと拡大していく円環的時間の認識が、古代人
の宗教観も規定していきます。
すなわち、世界と人は周期的に創造-存続-終末的破滅-創造
を繰り返すのだという信仰です。

ニュートンやアインシュタインの登場で、時間というものが科
学的に解剖された現在、私たちは主観的な時間感を喪失しつつ
あるのではないでしょうか。

【セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間
の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間】(秒)
×60×60×24×365×3

がいかなる数字になるかは計算する気にもなりません。
そこにいかなる数字が表れようと、なんの感慨も呼び起こすは
ずがないからです。

しかし、3年前の今日の【記憶】は1年前の今日の【記憶】より
もむしろ鮮明です。
過去がデジタルな数字ではなく、アウグスティヌスが喝破した
【記憶】であることの何よりの証拠ではないでしょうか。
そして、

「破滅の後には新たな世界が創造される!」

と、自分の現在の【直観】は、未来に大きな【期待】を寄せて
いるのです。