パン屋の娘 | 店舗探し.comの過去コラム

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2013/5/15

ネガティブキャラで人気のモデル、栗原類さんが、ラファエロに
そっくりだと評判になっているので観てきました。

国立西洋美術館で開催中の『ラファエロ展』も後半に差し掛かり
ました。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロとともに、盛期ルネ
サンスの三大巨匠と言われるラファエロですが、日本で開催され
るのは初めてだそうです。

ラファエロには、パン屋の娘であるマルガリータ・ルティという
恋人がいました。

ダ・ヴィンチにとって「モナ・リザ」が理想の女性像だとすると、
マルガリータ・ルティをモデルに描かれた「ラ・ヴェラータ
(ヴェールを被る婦人の肖像)」こそラファエロの理想の女性だ
ったかもしません。

熱烈に愛し合った二人ですが、結婚には至りませんでした。
ラファエロを支持していた人々の中で、最も権威のある人物のひ
とり、ビビエーナ枢機卿から、姪のマリアとの結婚話を勧められ
ていたことで、パン屋の娘との結婚を断念したと言われています。
「ラ・ヴェラータ(ヴェールを被る婦人の肖像)」で、マルガリ
ータ・ルティが婚礼の衣装を纏っているのがなんともいじましく
思えます。

「ラ・フォルナリーナ」もマルガリータ・をモデルにしたものと
されています。

本作の右下部分には非販売を示す『E.I』のサインが直筆され
ています。ラファエロは当初、公開する気が無かったのでしょう。
こちらは胸元を露わにしています。
左腕には「ウルビーノのラファエロ」との署名が見えます。しか
も、左手の薬指には当初、婚約指輪が描かれてあり、後に上から
塗りつぶした跡があるそうです。

パン屋の娘と言えば、『モンソーのパン屋の娘』という短編映画
があります。
ヌーヴェルヴァーグの名匠エリック・ロメール監督の初期の作品
で、“六つの教訓話”シリーズの第一作です。

主人公の“私”が、街で見かけた美人シルヴィを見初め、お茶に
誘ったところ、今日は忙しいと断られてしまいます。
私はシルヴィとの次の機会を求めて歩き回り、毎日同じパン屋で
サブレを買います。
なかなかシルヴィが現れないのでやけになった私は、パン屋の売
り子ジュリエットをデートに誘います。
OKのサインを受けた私が店の外で待っていると、シルヴィが現れ
ます。

シルヴィはパン屋の向かいに住んでおり、足をねん挫して家から
出られなかったのです。
それを聞いて私は、シルヴィとデートをし、ジュリエットの方は
すっぽかしてしまいます。

半年後、シルヴィと結婚した私が例のパン屋に戻ってみると、売
り子は別の娘に代わっていました。

ヴァチカン宮のフレスコ画に、『アテネの学堂』というラファエロ
の作品があります。
この中に自分自身と恋人マルガリータ・ルティを描きこんである
そうです。
確かに右端の柱の横に栗原類らしき人物がこちらを見ています。
そして左に視線を動かしていくと、マルガリータらしき女性がこ
ちらを見ています。

マルガリータ・ルティとジュリエット。

二人ともパン屋の娘であり、想いを寄せる人とはお互いにハッピー
エンドとはいきませんでした。
しかし、なぜか、ジュリエットの行く末ばかりが気にかかるのは、
私だけでしょうか。