2014/5/13
「藤」の花が美しい季節です。
「牛島藤花園」にある藤は、国の天然記念物にも指定されています。
弘法大師がお手植えしたとも伝えられ、樹齢は1200年を数えます。
京都府福知山市にある「才の神の藤」は樹齢2000年とも推定されて
いる自生の「ヤマフジ」です。
藤はつるが長く伸び、美しい花をつけ、また長生きだったこと
から繁栄の象徴とされてきました。
藤原氏の祖である中臣鎌足は、天智天皇からそれまでの功績をたた
えられ「藤」の字を含む藤原朝臣姓を賜りました。
以来、藤原氏は源氏・平氏・橘氏とともに「源平藤橘」(四姓)と
総称され、その筆頭名門氏族として栄華を極めました。
佐藤、伊藤、斎藤、加藤、後藤、近藤、遠藤、工藤、安藤、内藤、
須藤、武藤、進藤、新藤、神藤、春藤を「十六藤」と言い、藤原氏
を出自としてその流れを汲むとされています。
もちろん、江藤、衛藤、斉藤、首藤、権藤、尾藤など「十六藤」
以外にも藤原氏所縁の名字は多数存在しています。
藤のつるを絡ませ、花の房が垂れ下がるように作った棚を藤棚
と言います。
あしかがフラワーパークにある「大藤棚」は1000㎡にも拡がり、
美しく幻想的な様子は世界一とも言われています。
浅草花やしきのそばにある「初音小路」は、すべてを藤棚が覆って
います。
場外馬券売り場「ウインズ浅草」の目の前にあることもあり、
週末になると初音小路飲食店街には競馬ファンがたむろして、
昼間から煮込みを肴に酒盛りをしています。
どの飲食店からも競馬中継の音が漏れ聞こえ、ディープな雰囲気
を醸しているため、観光客はあまり通りません。
「藤娘」といえば、藤の絡んだ松の大木の前に藤の枝を手にした
藤の精が、意のままにならない男心を切々と嘆きつつ踊る演出が
有名です。
しかし、本来「藤娘」は遊女の踊りでした。
元禄時代には物見遊山に出る際に派手なファッションを競う風潮が
ありました。妍を競う遊女が、黒の塗り笠、片肌脱いで色っぽく
藤の枝を掲げたものです。
その姿を描いた「大津絵」が「藤娘」の原型なのです。
「いとしと書いて藤の花」。
これは判事絵です。「い」を縦に「十」個書いてその真ん中を
「し」でつらぬくと「藤」の絵になります。
藤の枝を掲げることで、「愛しい」という気持ちを表していたの
です。
藤の花言葉は
「あなたを歓迎します」「恋に酔う」「決して離れない」。
花も人も。貴も賎も。聖も俗も。
全てを包みこむ「藤」。
同音の「富士」が日本一の山ならば、「藤」は日本を代表する漢字
なのです。